第六十九話 プリズム(原付ライダー外伝 二種免許伝6)

 第六十七話にて、二種免許を取る際に必要な物を立体的にみる能力、「深視力」が全くないということが判明し たカリウスであったが・・・。同 メガネ屋にて。


 このままでは、二種免許の試験をうける資格もないとは・・・、焦るカリウスこと私。


「うーん、では、こうしてみましょう。」

 そういとメガネ屋さんは私のメガネの上にかぶせた矯正用メガネにレンズをさしこむ。

「これで、もう一度やってみましょう。」

 カタカタカタ・・・。深視力測定機の取手をメガネ屋さんがまわしだす。

「ん・・・?」

 ハッ キリではないが、中央の線が動いているのが分かるっ!

「揃いました!」

「うーーん、ちょっとズレてますね。もう一度。」

 カタカタカタ・・・・。

「揃いました!」

「まだちょっとズレてますね。でも、さっきよりは近くなってますよ。」

 そういうと、メガネ屋さんは矯正用メガネのレンズを入れ替える。

 ん? なんか周囲が立体的に見えるようになった気がするが・・・。

 メガネ屋さんが再び装置を動かし出す。カタカタカタ・・・。

「!! 揃いました!」

「だいたい揃ってますねえ。では、もう一度。」

 カタカタカタ・・・・。

「揃いました。」

「揃ってます。」

 見えるっ!! 私にも線の動きが見えるっ!! シャアがニュータイプ能力に目覚めた瞬間のような喜びが眼前に広がった! やはり錯覚ではな く世界がいつもと違って立体的に見えている!


 急に線が見えるようになった私を上司は興味深げに見ている。それを見たメガネ屋さんは私と上司に、

「実はこちらのレンズにはプリズムという深視力を補正する素材が入っているんですよ。普通の視力測定では深視力の測定までやらないので、視力を補正するといっても深視力の補正まではほとんどしないんです。」

 なるほど。

「プリズムの入った深視力用のメガネをおつくりいただければ、深視力検査もクリアできると思いますよ。」

 というメガネ屋さんの言葉を受けて上司が、

「うーーん、そうですねえ。でも、そこまでして二種はとってもらわなくてもいいかなぁとも思うんですよ。 ちょっと戻って相談しますんで、今日は一端失礼します。」

と 返答。メガネ屋さんの

「わかりました。」

という〆言葉を受け、取りあえずメガネ屋を去り、教習所へ戻る。


 車中の中で、

「視力検査でひっかかるなんてなぁ・・・。」

 上司は私を責めるでもなく腑に落ちない顔をしていた。教習所に到着し、上司が教官に状況を説明し、最後に

「ただ、七十歳くらいのタクシーの運転手さんも深視力検査を通過しているわけ
じゃないですか。それを思えば、 通過できないってことはないと思うんですよね。」


 さっき、上司がメガネ屋さんに「そこまでして二種は・・・」といったのは、上司はわざわざ専用のメガネを買わなくても通過できるだろうと思っ ていたので、場をやり過ごすために方便を使ったのだ。上司の言葉を受けて教官は、

「じゃあ、まず免許センターに行って視力検査だけしてきましょう。免許センターで通ればいいわけだから。もし 通らなかったら勉強しても意味ないからね。」


 え? 免許センターにもう行くの? 私は免許センターは全ての教習が終わってから行く場所だと思っていたので、教習を受ける前に行くというこ とに面食らった。そして教官は私に、

「目の検査だけを受けに行くことはできないから、学科試験の申請をしておきます。目の検査が終ったら体調悪 いって言って帰ってこればいいよ。」


 体調悪いからって・・・、そんな事言っていいのか? サラッと言うところをみると割とあるケースなのか? さらに教官は続けて、

「学科試験受けてきてもいいけど、そうすると俺の仕事なくなっちゃうしなぁ。」

 いっそ、学科試験、受けてこようか、普通免許の学科試験とたいしてかわらない問題だろうし・・・と思ったが、受からないと何で受けてきたん だって言われるだろうから、学科試験は受けないでおこう。


 ということで、来週の月曜日に視力検査にいくことになったカリウスであった。




棒