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棒

無敵艦隊フィリップ3世(異民族主義改め) 作:裏辺金好


○オープニングソング
 無敵の力だ フィリップ3世
 金が落ちるよ 有り難やアラー様
 素敵だわ 惚れ惚れしちゃう ウフン
 でも私泣かない だって、男の子だもん
 鼻毛が出ちゃう ごめんなさい
 でも オバタリアンの皆さん
 井戸端会議は そこまでにして
 私 まっすぐ竹槍を投げたんだ
 それは 刺さった審判に
 ゆけゆけ 我らがフトッタ
 マッチ棒からスペースシャトルまで
 はじける力だ 無敵艦隊フィリップ3世

第4章 密命
 長い沈黙の時間だった。もう30秒ほども経過している。一瞬だけど永遠の時間。それはこの雰囲気の中にあると言えよう。しかも生CMが入る。
「奥さん、新しい洗剤・エンジョイを使っていますか。」
「えーっ、名前は聞いたことがあるけど使ったことありませんわぁ」(しらじらしそうな顔で)
「そんな奥さんに朗報。このエンジョイを使えばこんな頑固な汚れもこのとおり!」
「まあ、すごいわ。汚れが一瞬でさらに付着したわ。これじゃあもう2度と落とせないわ。」
「なんとそれだけではありません。あなたの食器などの汚れをより強固に付着するフッ素バイキンコーティング効果がついているんです。水で洗おうがお湯で洗おうが、これで汚れが落ちてしまうことがありません。」
「これで安心して汚い皿でご飯が食べられるわ。」
「以上、この宣伝は”金にうるさく、人に恨まれる”吉田中田辺見方針田渕田畑山本田所長広野原地球速度胸囲工業株主会社がお届けしました。略して田中工業。田中工業はぜひ、遠くの小規模小売店でお買い求めください。」
「すいませーん、田中工業1つください。」
「毎度。1500円です。でも奥さん、あの会社は業績悪いよ」
「いえいえ旦那。心配いりません。いい手があるんです。」
「えっ。」
「徹底した合理化を進めるためには、カリスマのある人材が必要。そんなときはザ・東京ブルーレッドリボン軍人材派遣センター試験歌舞伎会社に頼むんです。」
「へえ。」
「今なら特別セール中。カルロス=ゴーンが時給800円で、小泉純一郎が時給790円で、そして何と石原慎太郎が時給900円で貴方の会社に奉仕してくれるんだって。しかも知ってます?ジャンク品セールとしてブッシュがを時給30円で奉仕してくれるんだって。」
「まあ、すごい。」
ここで別の男が登場。
「そうです。レッドリボン軍はウソを聴きません。いまならお得。さあ、レッドリボン軍のお店に急げ!」

しばらくして王が沈黙を破った。そしてにやにやした顔で言った。
「正解!!」
「やったー、てあれ?」
「君にはシロハタ王国に潜入してもらう。」
その言葉にフトッタの細い体がブルッとなった。これが武者ガンダム震いという奴であろう。
「はっ。シロハタ王国の情報を山ほど仕入れてきます。」
「うむ、しっかり値切って安く買ってきておくれ。そして部下としてそこにいるタニムとシーンとサレンダーを連れて行くがよい。」
1人で十分さあ、と自信過剰のフトッタは思ったが、ここは王に従っておくことにした。いざというときはこの3人に罪をなすりつけることもできる。
「はっ、お任せください。オードリー=ヘップバーン様。このフトッタ、必ずや朗報を持ち帰ります。」
「うみゅ、おみやげも頼む。」
こうして、フトッタは城を辞しシロハタ王国へ向かうのだった。

第5章 荒野の戦い
「隊長!」
タニムはフトッタのことをこう呼ぶ。彼の人柄にすっかり浸水したようだ。いや、心酔というべきか。
「シロハタ王国までは後どれぐらいですかね。」
「そうだなあ。後1つ山を越えればシロハタ王国の関所である”トザンテツドウ”があるはずだ。」
トザンテツドウ・・・・。シロハタ王国が先月制服を着せた旧・アヘヤヘヤ帝国に造ったものだ。現在、ここがシロハタ王国とフトッタ達の住むヨバイ王国の境である。(ところでヨバイ帝国は昨日付けで帝国より王国に格下げ。大手格付け会社ムーティーズが決定した。不良債権処理が一向に進まないヨバイ王国に対し、今後、公国への格下げも検討しているらしい。なお、ナスダックの店頭株価指数、ニューヨーク株式市場での株価も大幅な下落が進行している。このままではヨバイ王国は経済問題で滅ぶ危険がある。王様はそのことを知っているのだろうか。)
「見えやしたぜ、ボス!」
そう言うのはシーン。そして、フトッタ達の目の前に巨大なプラスチック製の関所が現れた。そしてその関所の中には多くの武装した兵士達がいた。
「問題はボス! どうやって突破するでさぁ。」
「シーン、決まっているじゃないか。敵はプラスチックだ。」
「はあ・・。」
「全軍に次ぐ、これより我が軍はトザンテツドウに対し放火を開始する!」
『ヘモグロビンパワー、メイクアップだ野郎ども!』
こうして、プラスチックでできたトザンテツドウは、3日3晩にわたって燃え、陥落したのであった。だが、残念なことにサレンダーは台詞を一言も喋ることなく一酸化中毒で水死した。
 時にオリゴ糖歴191年9月1日のことであった。

第6章 巨星、墜つ。
 トザンテツドウ陥落の知らせは、すぐにシロハタ王国の首都バンチョーに伝わった。それまで連戦連勝だったシロハタ王国の動揺はすさまじく、ヨバイ王国に対し降伏しようと言う声まであがった。無論、そんなことが許されるはずがない。シロハタ国王アラマサンダー=ホモエレクトスは、降伏論者を王様陣地ゲームで処刑し、綱紀粛正を行った。ところで王様陣地ゲームって何だっけ?
「よいか、何者かがシロハタ王国に侵入してきた。この国においてアイスクリームを食べることは許されン。何としてもその、愚か者達をひっとらえよ。」
『ははっ』
こうして、フトッタ達に刺客が放たれることになった。

 それから3日後。フトッタ達を恐怖に陥れることがおこった。
事件はシロハタ王国本国にほど近い旧・ボーチョー連邦国の都市・ナメトンカコラで発生した。一体何が起こったのでしょうか? 現場の東海林さーーん?
「はい。事件はここ、ナメトンカコラの繁華街で起きました。この繁華街は普段から人通りが少なく、ひっそりと静まりかえっていることで有名で、以前からその危険性が心配されていましたが、ついに犯罪が起こってしまいました。」
「(ナレーター)昨夜10時半頃、ヨバイ王国系の外国人と見られる3人組が、スナック<ママァ>に入った。そのスナックで3人組はスナックのパパに抱きつき、彼がポケットに入れていた現金300万ペソを奪い、逃走した。スナックのパパは事情聴取前に心臓発作で死去。お伝えしたようにこの繁華街は人どおりが少ないため、犯人の特定が非常に難しくなっている。」
「東海林です。犯人は、ここスナック<ママァ>にアフロヘアーをして入りました。そして、パパがいつものように<いらっしゃい>と言ったところ、いきなりヘソから水鉄砲を出し、<金よこせ>と叫んだそうです。そしてパパがびっくりして心臓発作で倒れ死去したところ、ポケットの中に入っていた現金300万ペソを奪い逃走したのです。」
「東海林さーん。」
「はーい。」
「現場の目撃証言がないのにも関わらず、どうしてそんなに事件の様子がわかったのでしょうか。」
「はい。それにつきましては、おそらくこの事件のあらましは、作家志望の警察官が勝手に着色して描いたストーリーだというのが理由だと思われます。真相は依然、闇のママです。以上、現場から托鉢しました。」

 こうして、フトッタ達の懐が暖まった。なお、この事件の真相は、たまたまフトッタ達の入ったスナックのパパが心臓発作で死去したため、金を奪ったということである。

 しかし、本当の事件は次の日起こった。
「見つけたぞ、ヨバイのカスども・・・。」
そう、フトッタ達は刺客に発見されてしまったのである。
「何やつ、名の名乗れ?」
「俺の名はシロハタ王国暗殺部実行隠密餡蜜課所属ウメキデメキン=アシクサーイ。月給は30万ペソ。家のローンは月5万8千ペソ。貴方の名前は?」
「私はヨバイ王国特殊工作部第174637小隊、隊長フトッタ。独身、彼女募集中。」
「同じく、食料調達係、シーン。彼女いない歴39年。」
「同じく、爪切り係、タニム。地球の平和は我らが守る。だが、妻には逃げられた。お会いできて嬉しい。」
「ああ、こちらこそお会いできて嬉しい。」
と、お互いに挨拶をし、握手をした。これが、古来より中華に伝わる武人同士の礼儀である。ただし、この人達は武人ではない。ただの変わり者である。ただし、アシクサーイ。腕はたしかだった。
「木様と戦えることを髪に恨んでやる。逝くぞ!!」
と、彼がが宣言した瞬間、シーンの体は真っ二つに割れていたのだった。
「よくもシーンを!!」
タニム、アシクサーイに向かって飛び出す。
「馬鹿、やめろタニムッ!」
「うおおおお、ごふっ!」
「タニムーーーーー!!」
タニム、あっさりとやられる。体を3等分に切られる。長く、はかない、爪切り係の運命であった。
「こ・・・これが連邦のモビルスーツ・・・。いや、シロハタの赤いキツネというべきか・・。」
さすがのフトッタも真っ青になった。冷や汗がタラタラ流れる。その量、およそ5リットル。バケツを用意したがすぐいっぱいになる。その行為が無駄なことにフトッタは気がついた。
「残る歯はおまえだけだ。シロハタ王国のため、死んでもらう。」
「そうはいくかな。」
「何・・・」
フトッタは精神安定剤を速攻で飲み、落ち着きを取り戻した。
「アレクサンダー。貴様の恥部はこのフトッタ。すべて知っている。」
「何だと? おもしれえ。言ってみろ」
アシクサーイはフトッタのペースにのった。アレクサンダー? 誰だそれは?
「1つ。貴様は小学5年生のころ、隣のクラスのアカネちゃんに告白し、見事玉砕して噂となり、天候を余儀なくされた。お日様ぴかりん。一滴マース。違うか?ジョージ君。」
「くっ・・。な・・。」
「2つ。貴様は中学生のころ、女子更衣室に誤って入り、女子の着替えを覗くという失態をしてセクハラで訴えられた。図星だろう、ペーター君。」
「ううう・・・。おおおん・・。」
アシクサーイが明らかに動揺する。肩がふるえている。そして目には・・・。
「3つ。貴様は高校2年の時、好きだったデイジーちゃんに告白したつもりが緊張のあまり誤って、若い女性担任のシルヴィア先生に告白の言葉を言ってしまった。違うか?合っているな。ゲオルグ君。」
「うああああああああ。びええええええーん。」
 フトッタの作戦は空き缶もびっくりだった。
 ちゅどーん、とアシクサーイは恥ずかしさのあまり自爆した。そして、フトッタはシーンとタニムの所に駆け寄った。
「隊長、しっかりしてください!」
「ボス、死なないでください!」
フトッタは瀕死の状態だった。そして部下に最後の言葉を言おうとした。だが、彼にはもはやそんな体力すら残っていなかった。
「シーン、タニム・・・。妻を・・・よろしく頼む・・・。私は・・・夫として何も妻にできなかった。だが・・・妻につらい生活だけはさせたくない。どうか・・・、妻の再就職先が・・・見つかるよう・・・取りはからって・・・く・・れ・・。」
フトッタは元気よく言った。
「隊長!」
「ボス!!」
「・・・・・・。」
何かがおかしい。3人は思った。一体誰が死ぬはずだったのだろうか。そして、フトッタに妻がいたのだろうか。
 しばし、冷たい風と時間が流れる。それは木の緑色が青々と茂る、真冬の出来事だった。
「帰ろう、我らの国へ・・・。」
「はい・・・。隊長。わかりました。これで任務を終えましょう。」
こうして、3人は帰路についた。3人にとってこの任務は、ほろ苦い初恋の味が残るものとなった。だが、そんな味もいつかは遠い若き日の思い出として心に残るのだろう。思い出は多い方がいい。思い出を多く作った人こそ、人生をよく使ったと言えるのではないだろうか。おそらくたった一度しかない人生。そして若い時間は一瞬で過ぎ去る。我々は、このことを心に刻み、毎日を充実させてすごしたいものである。

第7章 警察庁捜査費流用疑惑
 3人はヨバイ王国に着いたとき、目を疑った。国土は荒れ、城や街は崩れ、わずかな人とブタしかいなくなっていた。
「こ、これは? まさか、シロハタ王国にやられたのか?」
そして、フトッタは城の方向にひざまつき、慟哭した。と、そこへ老婆がやってきた。
「おや、珍しい・・・旅のヒト科ね・・・・。」
「何やつ?」
シ−ンは剣を抜き、身構えた。
「おやおや・・こんな餓死しかかっている老婆に戦いを挑むとは・・・全力でお応えしよう!」
「なにいっ!」
老婆は飛び上がった!
「そりゃそりゃそりゃ!!!」
そして老婆は飛行形態となり、服の袖からバババババ、と、短剣をトランプのカードのごとく乱射する。
「ほれほれほれ・・痛かろう、痛かろう!!!」
「こ、こいつが物語の最終ボスとは?」
タニムは攻撃を必死によける。だが、1本、そしてまた1本と短剣が体に突き刺さった。「ぐわわわわっ。」
そしてフトッタとシーンは魔法を唱える。
「ハマチ!!」
「トロ!!」
だが、それは老婆のリフレク・マホカンタに跳ね返され、2人はすしネタになった。
「根性なしめ、もっと、もっとあたしを楽しませておくれえ・・・きええええっ!」
老婆、今度はホバー走行しながら、すしネタとなった2人に襲いかかる。フトッタ達、絶体絶命のピンチ。すしネタの姿で必死のバケツリレーを試みた2人だが、手足がないためその夢は叶わず、老婆に食べられた。
「隊長! シーン! ・・・くっ。みんな、オラに、オラにもっと元気をわけてくれ・・。」
「元気玉を使おうというのかい。ハエがごちゃごちゃうるさいねえ。そんな古い技、才色兼備のこの私にはきかないよ。さあ、暗黒の世界へと帰りな!」
老婆、タニムに向けてロケット弾を乱射。
「くっそー、この、この、動けぇ。俺の体よ。動いてくれえ。ちくしょお・・・!覚えていろ、忠犬ハチ公! おまえなんか、ただの状況変化にうまく対応できなかった馬鹿イヌだーぁああああぁあ。」
ボオオオオン。爆音だ。あたり一面が吹っ飛んだ。そして爆発には老婆も巻き込まれ、みな空の上へと散ったのだった。

 こうして、3人の冒険は数々の謎を残して終わった。だが、神々の足跡はすべてが消えたというわけではない。いつか、きっとまた新たなるフトッタ達が謎に挑み、そして新しい老婆の前に散っていくのだろう。そう、散ることを恐れては何も始まらない。「痛みを伴う改革」を前にして、我我はどういった行動をとればいいか。この物語から1つでも感じ取ってくれれば幸いである。また会おう、吉田松陰。フィリピン国民よ。私は帰ってくる。
<寒>

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