1994年にフィンランド人作曲家、ヤーコ マンテュヤルヴィ(1963〜)が発表した曲で、混声版、女声版(Lite)、男声版(NT)があります。
「偽ヨイク」?と、タイトル見ただけでは何の曲かさっぱりですので、解説。
まず、「ヨイク」とは、スカンジナビアなどに住む少数民族サーミ人の無伴奏の即興歌のことだそうですが、「偽」とあるとおり、この曲は「ヨイクっぽい」だけの「ヨイク」とは全く関係のない曲です(笑)
U-lineのAは以前とある団体の演奏を初めて聴き、思わず「すげえ」と思い、聴いたあとしばらく放心状態になった、激烈に格好いい一曲です。
「作曲者がフィンランド人だから、どうせ外国語なんでしょ。意味の分からん曲聴いて何処が楽しいんだ!」
…そこのあなた、ちょっと待ってください!
実はこの曲、意味のない言葉の羅列で構成されているため、曲の歌詞自体にこれといった意味がありません(笑) ですので、歌詞については解説しようがありません。
曲については、何かを喋っているパートの裏で長音を担当するパートが音を持続している形態が基本です。が、叫びのような部分があったり、低音が響いたり、高声の穏やかな部分があったり、「ん!」という掛け声のあとで最後は叫んでいたり…と変化に富みます。
ちなみに「本物の(笑)」ヨイクについてWikipediaで調べてみますと、シャーマンの精霊との交信や人間同士のコミュニケーションに歌われたものだそうで、こちらも口語ではなく、極度の省略形や象徴化したイメージ群による構成のため、サーミ人以外が理解するのは不可能なようです…。
※この動画の前半には別の曲が入っています。偽ヨイクNTは4:20あたりからです。
曲名にくっつく「NT」とは「No Trebles(高声じゃない=女声が無い=男声のみ)」のこと。
男声4部による力強い低音とトップTenorのファルセットがなんとも魅力的な演奏で、おすすめのバージョンです。
初めて聴いた方は意味不明な言葉の重層的なハモリに圧倒されてしまうのでは?
ちなみにいずれの版でも最大8声部が重なっています。(この場合各パートを2つに分けて担当します)
この動画は台湾の男子高校生(新竹高中男声合唱団)による演奏ですが、何と演奏者が曲に合わせ足踏み、手拍子、その他不思議な動きをつけており、一層おもしろさを引き立てています。
(後述しますが、足踏み手拍子は楽譜に記載あり)
やっぱり何処の国でも男子高校生ってこういう意味不明な面白いもの好きなんですかね?(笑)
また、この演奏は最後の曲終結時の和音が若干アレンジされていますが皆さんはどちらが好みでしょうかね?(通常版は他の版で確認を)
曲名に何もついていない混声版。U-lineのAが初めて聴いたのはこのバージョンでした。
混声版は声域が広くなるため、音の厚みも増しています。
女声が入ったことで、どことなく柔らかく、それでいて時々Sopranoの高音やAltoの中音が効いていて、こちらもオススメです。
こちらの混声版はテンポが速い!(若干男声が弱いのが残念ですが・・・)また、途中の掛け声を足踏みに置き換えたバージョンです。(楽譜には裁量で色々と置き換え可能と書いてあるとのこと)
歌詞が意味を持たない分、かえって自由な解釈で演奏できるため、このような鋭い演奏から、柔らかい演奏まで色々とアレンジできます。
女声版は曲名に「Lite」とあるとおり、迫力では男声の低音がないため他に劣る気がしますが、こちらの方が神秘的な印象は強いかもしれません。
この演奏はゆっくり目のため特にそんな感じがします。
何度も書いているとおり、歌詞には特別意味のない曲ですが、重層的なハモリや言葉のおもしろさが楽しいですね。こういう曲や意味不明な外国語曲に出会った際は、リズムやハモリ、言葉の雰囲気で楽しんでみるのも一つの手だと思います。