2010年の第77回NHK学校音楽コンクール(Nコン)高等学校の部の課題曲として、NHKが人気小説家(作詞家でもある)石田 衣良(1960〜)と、作曲家、大島 ミチル(1961〜)に依頼して作曲されたピアノ伴奏付き合唱曲。Nコン高等学校の部の慣例により混声4部・女声3部・男声4部が作曲されています。
この年の課題曲テーマは「ジャンプ!」だったのですが、内容は自己を見失いそうになり迷いつつも前に進もうとする青年の心情(?)が描かれています。
この年私は色々あって(半ば無理矢理)臨時合唱部をやっていた中学生でしたが、たまたま聴いた(全国大会のTV中継だったか?)この曲はちょっと衝撃だったというか…。現在の自分にちょっぴり影響を与えたような気もしないでもありません。
ちょっと歌詞と作曲に癖がありますが、いい歌だと思います。
この演奏はどちらかというと切なさや不安の要素が前面に出た感じです。
女声3部・男性4部版は適当な動画がありませんでしたが、NHKのNコン公式ページより過去の課題曲を試聴可能です。お手数ですが上のリンクを開き、第76回(平成21年度)分から視聴下さい。
どちらもそれぞれの声部構成の特色が出ており、美しいです。個人的には男声4部版の演奏はジャジーに楽しさを前面に押し出しており、非常に好感が持てます。
※解説は混声4部基準です。
正直なところこの曲は合唱曲というよりもポップスの要素を多分に含んでおりまして、直感で大体歌詞が言わんとしていることが分かります。そこで今回は主な聞き所をご紹介。
曲の導入部分では女声のしっとりとしたユニゾン、と男声の豊かな「U」や「A」のヴォカリーズでスタート。この部分は幼い日の回想シーン(?)のような歌詞でこれが主題へと導入していきます。
つづいての場面では男声の「♪安全な道って何?」「♪間違いのない生き方って何?」と疑問をぶつける部分。何か衝撃的な歌詞だなぁ…
そのあとに表れる早いパッセージも青年期の心の叫びや葛藤とかを描いているようで心に響きます。
と、ここで一気に雰囲気を変え「♪JUNP UP!」と「♪JUNP DOWN!」など英語の詞が表れ、いわゆる「サビ」的な部分に。後半女声と男声の間で「♪僕たちが」「♪僕たちが」「♪目を閉じて」「♪飛ぶのは…」と受け渡して合体する部分は格好いいです。
この後「♪JUNP UP!」を叫んでちょっと格好いい(けど難しそうな)間奏が入り、再びサビ的部分となります。ここの歌詞なんですが…「♪お父さんさようならもう行くね」とか「♪お母さんありがとう忘れない」と、両親からの巣立ちを語りますが…この歌詞もう少し何とかならなかったのかな?(苦笑)ちょっとインパクトありすぎる言葉ですが、かえって生々しい青年の感情が描かれているような気もします。
そして先ほどのような受け渡しを経てサビ的部分は終了です。
そして再び「♪JUNP UP!」を叫んでからは段々と感情が高まっていき、(途中で「♪Yeah!」とか入ってますし…)、ついにはスキャット&手拍子となります!
この部分は譜面はあるものの演奏団体によってアレンジ可となっており、それぞれに自由な表現が出来るのが面白いところ。クラス合唱などでやった際には見せ場になりそうです。
そのあとはサビの部分で使われた歌詞が形を変えて再登場。先ほどの親(?)との決別を意識した力強いサビとは異なり、穏やかな旋律と和音で構成され、ちょっぴり悲しさを誘います。
最後は各パートが「♪JUNP UP! JUNP UP!…」と掛け合いで高めていき、「JUNP UP!」と叫んで締めくくられます。
Nコンは中高生を意識して課題曲を作曲しますので、特に純粋な詩人ではない人に作詞された年については何となくポップスの要素があるんですよね。特にこの曲は途中にスキャットを取り入れるなど合唱曲としては異質に思う方も多いのではないでしょうか。
実際の所この曲については賛否両論あるようで、実際に歌っている私の先輩は「あの年のNコンは無茶苦茶な曲でねぇ…」などと言っていましたが、私としては「若者向け」としては歌詞が共感しやすく(?)、ポップス的要素と相まって、一般受けはしやすいのかな?と思います。
NHKとしても参加校を増やすべく(特に中学校の部において)有名歌手やバンドに作曲してもらっていますが、やはり課題曲であっても歌いたいと思える曲を歌いたい(=参加したい)ですしね。
また、私はこの曲を聴くと何となく気分が吹っ切れて前向きになれるんですよね。歌詞自体は何となく切ない感じもしますが、「Yeah!」とか言っちゃってるあたり、一歩前に踏み出す楽しさ・ワクワク感の要素もあるのかなと。
曲のほうはそれなりに難しい印象ですが、中高生のクラス合唱としては十分使える?と思います。私としては、折角歌うなら歌いたいものをやるべきと思いますので、歌詞に共感出来る人が多いなら(ちょっと共感しかねる部分もありますが)挑戦してみるのもいいかと。個人的なことで恐縮ですが、この曲はやりたいと思ったことがあったものの諸事情により諦めざるを得なかったという事情がありますので、これから歌う方には最高の演奏をしてもらいたいと思います。