作曲家、木下 牧子(1956〜)が、詩人、堀口 大學(1892〜1981)の詩に作曲した男声合唱曲集「恋のない日」の6曲目として収録される曲。内容を簡潔に話すと、「なりたい自分となれない現実」…上手く説明しづらいですがだいたいこんな感じです。
曲自体は複雑でテクニックが要求されそうですが、聴く分には文句なしに格好いい名曲です。
噴水と夕暮れと炎と恋とダメな自分。歌っている内容が案外共感出来そうです(笑)
ニコニコ動画会員の方はこちらの方が音質がよいのでこちらもぜひご覧下さい。
今回は楽譜を持ち合わせていないためざっくりと要点を解説。(誤記は指摘下さい)
冒頭、「♪夕暮れだ〜」とBassから重なって各パートが登場。続いて「♪水が燃え上がる」とわき出る泉のように各パートが吹き上がる噴水の様を歌い、軽やかなテンポで前半は進行。
が、TenorTの「♪けれども…」で、転調し、結局は炎とは成れない噴水の悲しみを歌い上げます。
再び「♪夕暮れだ〜」と、最初の旋律が復活。ここでは、噴水の様子が自分の姿に重ねられており、「♪哀れさびしく落ちて来るのは(中略)それとも彼女を恋する哀れな私の心であるか?」という歌詞はなんかグサッと来るものがあります…。ここは後半がTenor→Bassへとソロパートで受け渡されている点が哀愁を誘いますね。
そして全パ−トで「♪ああ」と叫ぶと再び情熱的な曲調となり、「♪だれか教へてやる人はないか?」とフォルティッシモで歌い上げ、終結します。
夕暮れ、恋に破れたある青年が公園の噴水の前にやってきた。
夕日を浴びて噴水はまるで炎のように噴き出していた。それは彼女に向けた彼の心そのものだった。
しかし噴水は炎とは異なり結局は落ちるしかない。所詮偽物、空気と結びついて本当に舞い上がることは出来ないのだ。彼も恋敵のBのようになろうと必死で努力した。しかし彼には到底及ばず彼女はBの元に…
ああ、Bのようには成れないと分かっているのに、どうして私はBのようになって彼女と結ばれようと努力するのか…!
以上、私の勝手な場面想像ですが、なんかこう、青春時代ってこういうことありますよね(笑)自分には到底及ばない領域の彼を追い越そうとしてみて、夢破れたり、ある女性に一心に心を寄せて、砕けたり…歌っているのが男声ですから余計に心に響きます。 個人的には、「噴水の愚かさ」というものは、男性全てに共通しているであろう、ほどよく馬鹿で純粋な情熱的心なのかなと。
詩の背景も哀愁誘う夕暮れと噴水、水と炎という相容れない存在…。いい材料使ってます。
最後に、この曲は青春を生きる(た)男であるならば(私自身も若干経験あるような内容…)共感せざるを得ないでしょう。女性であっても男心(?)を理解してくれるならば共感してくれるでしょうか…?