20世紀のフランスを代表する(超)有名クラシック作曲家、フランシス プーランク(1899〜1963)が1952年に作曲したモテット曲集の4曲目。ちなみにこの曲はプーランクの代表作の一つということで世界各国で歌われ、日本でも(合唱界では)知名度が高いとのこと。
このモテット、「Hodie Christus natus est」の内容は、キリストの生誕を天使等が祝福する、という非常にクリスマスにふさわしい内容となっています。
曲も非常に聞いていて心地よい明るめの一曲です。
筆者は高校最後の夏をこの曲に懸けておりましたので、その点でも思い出深い一曲です。
○Hodie Christus natus est 今日キリストはお生まれになった |
いくら「キリストの誕生」とはいえ、聞いていてこんなに晴れやかな気分になる曲も珍しいような…
こちらは早めの演奏。個人的にはせわしない気もしますが、曲が軽快なのでこれもありですね。
さて、そもそも「モテット」という形式は、ルネッサンス時代の多声教会音楽を指す形式で、大体ラテン語か英語、或いはフランス語やドイツ語です。この曲は全文ラテン語で書かれています。(曲サブタイトルはフランス語)
…え、ラテン語、しかも宗教曲とか眠い退屈な曲はやめろって?
…いえいえ、この曲はそんな方にうってつけの楽しい聖歌なのです!
曲のはじまりはAltoがソロパートで
「♪Hodie Christus natus est」(今日、救世主が生まれたよ!)と、呼びかけると…SopranoとTenorが出現し復唱。そしてTenorに代わってBassが加わり喜びに満ちた雰囲気で言葉が歌われます!
この曲は基本的に歌っている歌詞は皆同じなのですが、例えばここではBassの旋律が女声とは異なっているなど、どこか1パートは違う旋律で歌っており、そこが面白いところですね。
そして、
「♪Hodie in terra…」からはささやくような部分と驚かすように音量を上げる部分が交互に現れます。そして、
「♪Hodie exsultant justi, dicentes」で急に音量が上がり、
「♪Gloria in excelsis Deo. Alleluia.」(いと高きところの神に栄光あれ!万歳!)を繰り返し最高の盛り上がりになります!(この部分は歌っていても気持ちよかったですね)
そして次はTenorソロパートで
「♪Hodie Christus natus est」!この部分「あれ?音程間違えてない?」と思われる方もいるかもしれませんが、譜面通り。このあとはささやくような部分と驚かせる部分が再出現しますが、先ほどとは異なったアレンジです。個人的にはこの部分のSopranoの
「♪laetantur Archangeli」が鳥の鳴き声のようで(天使の声?)聞いていていいな〜と(笑)
続いても以前に登場した部分のアレンジ形態で、
「♪Gloria in excelsis Deo. Alleluia. 」と言ったあとで、
「♪Aleluia. 」をはさみ・・・
「♪Hodie Christus natus est」をTenor以外全パートで呼びかけます!
そして再びささやくような部分と驚かせる部分が再出現しますが、後半部
「♪Hodie exsultant・・・」から先は異なったアレンジです。
勿論締めは
「♪Gloria in excelsis Deo. Alleluia. ですが、繰り返したあとで、全パートが
「♪Aleluia. 」を3回も繰り返し何とも喜ばしい雰囲気!
ここまで来ると曲は終盤。もう十分と言っていいほど喜ばしい雰囲気ですが、
「♪Gloria in excelsis Deo.」をダメ押しといってもいいぐらい繰り返しながら段々と盛り上げていき・・・
「♪Aleluia. 」を2回!
最後は強いエネルギーで
「♪Aleluia. 」と叫ぶように曲を終結させます!
歌詞は新約聖書「ルカの福音書」第2章をベースにした詩で、クリスマスの際に読まれるものです。キリストが生まれた日(クリスマス)の出来事を描いています。
Hodie Christus natus est
今日キリストはお生まれになった
Hodie Christus natus est:
今日キリストがお生まれになった。
Hodie Salvator apparuit:
今日救世主が出現なさった。
Hodie in terra canunt Angeli,laetantur Archangeli.
今日は地上には天使達が歌い、大天使達は喜んでいる。
Hodie exsultant justi, dicentes:
Gloria in excelsis Deo.
今日正しき人達は「いと高きところの神に栄光あれ!」と言いながら喜んでいる。
Alleluia.
アレルヤ。
ちなみにプーランクは熱心なカトリックだったそうで多くの宗教曲を作曲、つまりこれは彼の得意なジャンルの一つと言えます。
プーランクの作風の評価として、「聖職者とガキが同居」というものがあるそうですが、この曲を聴いてしまうと理由がちょっと分かったような。
私としては、厳粛にただただ神を崇めていてもつまらない…こんなに喜ばしい事なのだからいろんな感情が人々に溢れるはずだ!とでも考えて、それで上に書いたような、「ささやくような部分と驚かせる部分」やTenorソロパートでの「ふざけ(?)」が入ってくるのだろうと思います。そりゃ、こんなに喜ばしいことがあって正気で真面目でいられる人のほうが少ないですよね?
また、この曲単独で聴いても十分楽しめるものの、時間があれば曲集をT「O magnum mysterium」から順に聴いていくと、あまりにも神秘的すぎてどことなく重苦しい「イエスの誕生」から段々と雰囲気が変わり、この曲でとてつもなく明るく晴れやかな祝福となって終わるので、聴いていて本当に気分良くなるのではないかと?
これまで、なかなか外国作品、特に宗教曲を紹介できなかったような気がします。今後は面白い曲は積極的に紹介したいものです。