“Quate motets pour le temps de Noel” pour quater voix mixtes a cappella
T.O magnum mysterium
無伴奏混声4部合唱のための「クリスマスのための4つのモテット」より
T.おお、偉大なる神秘よ
作曲:フランシス プーランク
music:Francis Poulenc

(曲解説:U-lineのA 2012年12月執筆)
○どんな曲?
 20世紀のフランスを代表する(超)有名クラシック作曲家、フランシス プーランク(1899〜1963)が1952年に作曲したモテット曲集の1曲目。ちなみにこの曲はプーランクの代表作の一つということで世界各国で歌われ、日本でも(合唱界では)知名度が高いとのこと。

 この「O magnum mysterium」の内容は、処女マリアからイエス・キリストが生まれたという奇跡の光景を描いています。
 曲はクリスマスの静かな夜にでも聴きたくなる神秘的な印象です。

 筆者は高校最後の夏をこの曲に懸けておりましたので、その点でも思い出深い一曲です。

○ O magnum mysterium おお、偉大なる神秘よ

 聴いていて心洗われる神秘的な一曲。眠くなっても仕方ないか♪

 こちらはアレンジで途中に転調を入れていますね。一応転調は自由ですが個人的には転調無しのほうが好きですね。

○曲の聞き所

 さて、そもそも「モテット」という形式は、ルネッサンス時代の多声教会音楽を指す形式で、大体ラテン語か英語、或いはフランス語やドイツ語です。この曲は全文ラテン語で書かれています。です。その為、この曲は全文ラテン語です。(曲サブタイトルはフランス語)

 曲のはじまりはAlto・Tenor・Bassにより冒頭の1文が読み上げられるように歌われます。なお、この曲は全曲通してf(フォルテ)以上にはならない、非常に静かな曲です。
 すると、Sopranoがなんとも素敵な旋律を歌い始めるではありませんか!
 なお、この部分は…

Sop.: O_ magnum mysterium____ et  admirabile___ sacramentum,...
Alto: Mys___te_____ ri_um_____ myste__ ri____um ma__gnum__...
Ten.: Mys___te_____ ri______um myste__ ri____um sacramentum,...
Bass: O_____ma____ gnum_____ myste__ ri____um ma__gnum__...
(主な一致する部分が赤色です)
 といった具合に、Sopranoが完全に独立して主旋律を歌い、他はその背景となる和音をつくるべく違う部分を歌うという形式。しかし、このあとやや語気を強めて歌われる「♪viderent」以降のフレーズは全パートの進行が一致します。この部分は語気を強めていったと思ったら「♪Dominum natum(主が横たわる)」でささやくようになり、再び強まるという部分がちょっと緊張感があって面白いところ。(あえて「主」に関わる部分が静かになるのは寝ているイエスを起こさないためかな?ww)

 この旋律・歌詞は2回くり返しますが、2回目は若干アレンジが変わっていますので、その辺も注意して聴きたいところ。

 そして次はマリアを賛美する部分。前半は美しいTenorとBassにより歌詞が歌われ、Altoはヴォカリーズ、後半はAltoが主旋律でSopranoと男声がヴォカリーズ。そして「♪Beata(幸福な)」「♪Virgo(乙女よ)」…と呼びかけ。なんとも神秘的!

 そして再び最初と同じ旋律(若干異なる部分はありますが)が表れ、後半語気を強めつつ「♪jacentem(横たわる)」を3回繰り返し、フェルマータ…。

 最後は静かに、「♪(in)praesepio.(馬小屋〔に〕)」と言って、終わりとなります。


○歌詞と訳

 歌詞は聖書の一節をベースとしたクリスマス頌歌からです。(ただし後半省略)キリストが生まれた際の周囲の様子を描き、マリアを賛美しています。

O magnum mysterium
おお、偉大なる神秘よ

O magnum mysterium,et admirabile sacramentum,
おお、偉大なる神秘よ、そして素晴らしい秘跡よ、
ut animalia viderent Dominum natum,jacentem in praesepio.
主が誕生なさり、馬小屋に横たわるのを動物達が見るとは。
Beata Virgo,cujus viscera meruerunt portare Dominum Christum.
幸福な乙女(処女マリア)よ、あなたの胎は主キリストを身ごもるのに値したのです。


○まとめ
 一見すると暗い曲のようにも思われがち(何も知らない知人は聴いて葬式の曲だと思ったとのこと…)ですが、実際の内容は本当に(キリスト教徒には)素晴らしいこと。クリスマスの夜にでもこれを聴いたらぴったりでしょうね…

 今まで曲紹介はなるべく「眠くならない曲を」と思って原稿を書いていましたが、これの曲集の4曲目「Hodie Christus natus est」(こちらは眠くならない曲)を紹介しようと思っていましたら、「どうせなら全曲を!」と意気込んでこうなりましたとさ。

 ま、このページを見てくださると言うことは余程の合唱好きか物好きでしょうから(笑)、眠らないだろうと思いますので、今後は眠くなる曲も名曲なら紹介していきたいところです。