ジャズピアニスト、藤堂栄一は、吉野町中心部にある小さなライブハウスで2日に1回ほど、ピアノを弾きながら生計を立てていた。彼は、ここには3年ほど前、音楽仲間の友人に誘われて移住してきた。それまでは大都市の大きなホールで演奏をしてきたが、客との距離の遠さを残念に思い、悩んでいた。そこに
「吉野町への移住しないか。ジャズが盛んなあの町で、小さなライブハウスで是非演奏をして欲しい」
という提案は、まさに魅力的だった。そして、気のあう演奏仲間、そして気心の知れた町の常連さん、遠くから聴きに来る熱心なファン。栄一は、幸せな日々を送っていた。
ところが1ヶ月前。
演奏をよく聴きに来てくれていた町長が突然失踪。3日後、町の西を流れる殿茂川の下流で水死体となって発見された。そして、警察はこれを事故として即座に断定。町の人は不審に思い、特に町長の親族は強く抗議したが、捜査はあっさりと打ち切られてしまった。
そして2週間前。
今度は町長の妻が忽然と姿を消した。そして3日後、やはり殿茂川の下流で水死体となって発見された。
だが警察はこれも事故として断定。「夫の跡を追ったのだろう」の一点張りで、捜査は打ち切られた。
2人とも、栄一の音楽活動を長年支えてくれていた人物で、栄一の悲しみは計り知れないものがあった。本当に事故なのだろうか、殺人事件ではないのだろうか、と多くの人と同じく、彼も不審に思った。だが、特に思い当たるふしも無く、次の犠牲者が出ないことを望みながら、彼はピアノを弾き続けるしかなかった・・・。
だが、惨劇はまたも繰り返されようとしていた。
昨日、町長の長男が家に帰ってこないと警察に通報があった。長男失踪の話は瞬く間に町中に広がり、「前と同じなら・・・」と次々と町の人は殿茂川に集結。栄一も例外ではなく、連夜捜索が行われた。しかし今度は、3日たっても、4日たっても、1週間たっても何の手がかりも無く、そして死体も発見されなかった。
「幾らなんでも、これはおかしいのではないか」
連続殺人事件に、失踪事件。
警察は、失踪した町長の息子が何らかの事情を知っていると考え、ようやく本格的な捜査を開始。
そして栄一も、世話になった町長夫妻の死の真相を探るため、旅に出るのだった。
しかし、貯金が殆ど無いことに気がついた。
おまけに、どこに行けばいいのか思いつかなかった。
「まあ、いいや。警察に任せよう」
シリアスな展開をぶち壊す中、気がつけば吉野町では副町長が町長へ昇格。新体制で、新たなるスタートをきった。
だが、そんな小さな町に、大魔王ポトデン配下、藤原則道率いるバロン・井上軍団の影が迫っていた。
貯金が無いとバカなことを抜かしている暇は無いぞ栄一。今度こそ立ち上がる日は近いのだ。
おっちゃーん、とりあえず塩ラーメン1丁!
「うちは日本蕎麦屋だよ」
次回予告 |
誰かの役に立ちたい、そう思ったとき青年の力はついに目覚める。
逃げ惑う人々、目の前で倒れる友人。
唸(うな)れ、オレの金色の拳!! 必殺「ジャイアント・キック!!!」
次回「ハッスル軍団、和泉元○でございます」
この小説、次回も本当に書くんですか・・・。