運行期間:1964年〜2010年
最高速度:140km/h
運行会社:旧英国鉄、サウス・ウェスト・トレインズ、サザン鉄道、サウスイースタン鉄道
運行区間:主に南イギリス、ブライトン本線、ロンドン南部近郊など
イギリス南部の鉄道網は1930年代に電化され、それと同時に初代の電車が投入された。それらの車両を置き換えるために1960年代に導入された電車の一つがこのクラス421である。このタイプの電車は一車両につき手動の昇降扉が幾つも備わっており、発車間際にこのドアが閉まる音から「バッタンドア電車」(Slam-door
trains)とも呼ばれる。1963年から1972年の間に二回に分けられて製造され、ロンドンと南海岸の港町のブライトンやポーツマス間で運用された。
国鉄の元でクラス421はイギリス南部で広く使われていたが、1980年代にクラス455や313、442等の新型電車が導入されるにつれて数を減らしていった。1993年の民営化後は各鉄道会社に引き渡され、まだ結構な数が運用に入ったいたが、21世紀になりクラス377や450の近代の車両が導入されると同時に急速に本線から姿を消した。
基本編成は4両で、1M3Tとなっている。一等席はコンパートメント式になっていて、先頭車の半分が割り当てられている。二等車はボックス席となっていて、頻繁に昇降用の扉が座席の間に設置されている。二等車の中間車ではなく、ビュッフェカーを組み込んだクラス420も存在した。前面は併結時に編成間の行き来ができるように貫通扉が設置してある。419系のような中間車を改造したような顔つきだが新造時からこのような食パン型のデザインとなっている。
本線での最後の運用は2005年11月に行われ、それ以降は3両に組み替えられたものが2編成残された。両編成とも旧国鉄時代の塗装に塗り替えられ、これらはサウス・ウエスト・トレインズによってリミングトン支線で擬似保存鉄道のような感覚で運転されていた。しかし老朽化が原因で2010年5月に引退し、遂に長い歴史に幕を閉じた。現在は事業車と保存鉄道で数編成が残るだけである。
(解説・撮影:秩父路号)