バター&マーガリンの歴史と作り方
担当:裏辺金好
ご存じ、乳製品から出来る食品で、特にバターはパンに塗ったり(マーガリンの方が多いですけど)、ホットケーキに塗ったり、料理のお供に使われています。今回はそのバターとマーガリンについて色々なお話をしてみたいと思います。
牛乳の中の脂肪を集めることでつくられるバターは、基本的には牛乳を振り混ぜ成分を分離し、脂肪分を固めるだけで完成。ですから人間との関わり合いは古く、紀元前2000年ころのインドの教典にもバターづくりが書かれています(つまり、この頃から食用として食べられていたわけです)。 当時の製法は、主に山羊や馬からとった乳を入れた容器を揺り動かしたり、棒でかきまぜたりして成分を分離し、固めたものでした。そして、特に遊牧民がバターを好んでいたんですね。 そのため、紀元前5世紀にはイタリア半島のローマ共和国(後のローマ帝国)に伝わったのですが、「野蛮人の食べ物」として、あまり食用にはしませんでした。 ところが、食べはしませんが皮膚に塗ることを考えついたのです。特に赤ん坊、幼児の皮膚を軟らかくすると考えられ、お風呂にはいる時に塗ったみたいですね。さらに、ローマの博物学者プリニウスは「蜂蜜と一緒に歯茎につけると、歯痛にも効きます」と勧めているほど。おやおや、食べないけど口には入れるんですね。他にも、整髪料、灯油にもこのようにヨーロッパにおいて、バターは薬用などとしてスタートしました。 その後、ポルトガル地域では紀元前20年頃から、フランスでは6世紀、ベルギーでは12世紀、ノルウェーでは13世紀になって食用としてバターを使い始め、今のように料理に欠かせない材料となっていったのです。ただし、ローマ(イタリア)では相変わらず食用にならなかったのか、今でもイタリア料理にはバターを使ったものが少なく、オリーブオイルが多いですね。 ちなみに、日本でもバターは薬用として江戸時代にデビューしました。 幕府第八代将軍・徳川吉宗がインド産の白牛を輸入し、この牛の乳から「牛酪」(バター)が作られたと言われています。これが薬用として使われ、明治以降になってようやく食用となり、戦後になるとパン、それから洋食のお供として普及しております。 ちなみに乳製品それ自体は560年頃、朝鮮の百済から搾乳技術が伝えられ、また奈良時代には唐からも伝わり、平安時代には特に関東で「酥(そ)」と呼ばれる牛乳を煮詰めて凝縮したものを造り、これを平安貴族に納めていました(バターとは少し違いますが)。で、平安貴族は美味しい&健康によいとして、なめていたんですね。おお、意外とグルメじゃないか、君たち。乳製品で言えば他にも、酪(らく)、醍醐(だいご:醍醐味の語源)というのもあったとか。その後、一般に普及しなかったのは残念?
1.食塩を添加しているか ・加塩バター(食塩含量約2.0%) ・無塩バター 2.原料クリームを発酵させているか ・発酵バター(乳酸発酵したクリームを使用、独特の香りがあるが、保存性に難あり。古来のバターはみんなこれ) ・非発酵バター(非発酵バターは発酵していないクリームを使用、風味がよく保存性あり) に分類されます。日本では家庭用の場合、非発酵バターが大半を占めます。 しかしながら、古来からの味である発酵バターの魅力もコクがあって捨てがたく、小岩井農場では発酵バターを作っているそうです。また、ヨーロッパでは発酵バターの方が主流。非発酵バターはアメリカ、日本、オーストラリアで主流だとか。ちなみに、何で古来かというと、置いておくと勝手に発酵してしまったからですな。
1.まず、牛乳からクリームを分離します。つまり、脂肪分を抜き取るんですね。 機械で行う場合、「クリームセパレーター」という機械に牛乳を入れ、高速で回転させると「クリーム」と「脱脂乳(スキムミルク)」の2層に分けます。 2.クリームを殺菌します(森永乳業の場合、95℃で60秒間、熱をくわえ、ビタミンなどの栄養分をこわさずに、細菌やカビを殺菌。雪印乳業の場合は70〜80度に加熱)。 *発酵バターの場合は、ここで乳酸菌スターターを加える。 3.熟成させます(=エージング。クリームを低い温度(5〜9℃)で7時間以上ねかせること) 4.「チャーン」という機械でクリームをかきまわす。これによってクリームの脂肪の粒がくっつき、米粒ぐらいの大きさになるまで2〜3分かきまぜて、そのあとにバターの粒とバターミルクをわける。 5.バター粒を水で洗う。 6.加塩し練り込んでいく。 7.ワーキング(バターの粒をよく練り合わせ、なめらかにする)。 8.出来上がり。ただし、工場での製品の場合は、きちんと形を整え、検査し、箱に詰めることになります。 と、こんな感じで作られているわけで、現在のバターは意外と手間かかっていますね(笑)。
最初は忌み嫌われていたバターも、中世以降、すっかりヨーロッパに普及します。 そんな中、代用品も求められ、1869年、フランスでマーガリンが誕生しました(1869年と言えば、日本の首都が東京に遷都された年)。 何故代用品が求められたかというと、当時プロイセン(後のドイツ帝国)と戦争中だったフランスは、生活必需品であるバターが欠乏していたんですね。そこで皇帝ナポレオン3世(有名なナポレオン1世の甥)は、代用バターの発明を懸賞募集し、フランス人メージュ・ムーリエ・イポリットの考案を採用してmargarineと名付けたのが始まりです。 これは、ギリシャ語のmargarite(真珠)から来たことばで、真珠のように美しい油のかたまりという意味だとか。当時の文献は少なく、原料の詳細はよく解っていませんが牛脂軟質油 75% 、オリーブ油 5% 、牛乳 20% 、乳房からの抽出物 少量 だと考えられ、味は「まあ、まあ」だ、そうです。
日本には明治中期に輸入されて登場。日本に住む欧米人達のためです。 参考文献・ホームページ モノの世界史 宮崎正勝著 原書房 つい誰かに話したくなる雑学の本 マイクロソフト エンカルタ百科事典2004 森永乳業株式会社 バーチャル工場 http://www.morinagamilk.co.jp/product/menu0301.html 雪印乳業 http://www.snowbrand.co.jp/ マーガリン工業会 http://www.j-margarine.com/ 全国乳業協同組合 http://group.lin.go.jp/jf-milk/ 楽天市場 小岩井からの贈り物 http://www.rakuten.co.jp/makibaya/463934/ |