第117回 なぜ銀行が消費者金融業界に参入?
担当:ムスタファ
「裏辺所長より」
ぜひ銀行関係に詳しいムスタファ様にお話を伺いたいのですが、少し前から東京三菱キャッシュワン(現・DCキャッシュワン)、UFJモビットのように大手金融機関が消費者金融業に乗り出したり、買収したりしていますが、何故、このように本来の業務ではないはずの消費者金融に、銀行が参入しているのでしょうか?ご教授お願いします。ちなみに個人的には、あまり好ましい状況とは思いません。
お答えします。
なぜ銀行が消費者金融に乗り出すか・・・はっきり言ってしまえば儲かるからです。今銀行が何が大変かというとお金を借りてくれる所がない、あっても危ない所か割に合わない低金利でしか貸せない。なら高金利でも借りてくれる消費者金融分野に乗り出そうという具合です。
但し今がんがんCM打っている「銀行系」消費者金融会社は
東京三菱キャッシュワン(現・DCキャッシュワン)はアコム
モビット(UFJグループ)がプロミス、
@ローン(三井住友銀行グループ)が三洋信販
と、いずれも消費者金融(以下紛らわしいのでサラ金と表記)系との合弁となっています。表には銀行系と言っておきながら裏に回ってみたらサラ金というのが実体です。但し金利は15%〜18%とサラ金系よりは抑えてあって、いわゆるグレーゾーンではありません。
銀行は本来なら自分のところでやるのが筋なんでしょうけど、まず信用情報網(いわゆるブラック情報)が銀行、クレジットカード、サラ金で別個なので(銀行系とクレジット系は相互乗り入れしていますが)極端な場合サラ金でブラックに載っていても銀行で借りることが可能になってしまう。また企業向け融資の片手間ではどうしても小口の資金は構っていられない、また取立と言っても銀行はせいぜい電話をかけて督促するくらいしか出来ず、(期日に払わなければ保証会社に代弁請求(=取立を丸投げ)かけるしかない等の理由から、本体で出来ることには限界があります。
一方のサラ金からみると成長は遂げたもののそろそろ市場は頭打ち。
そこで銀行の顧客ネットワークに食い入って新たな顧客拡大に励める、また銀行と関係を深めることで本体の資金調達も容易になる、面倒くさい小口の取立も本来の業務だから喜んでやるという双方の思惑がからんであの奇妙な「銀行系サラ金」は成り立っています。しかし都合よくちゃんと返す人が高い金利で借りてはくれないわけで、CMがんがん流しているほどにはうまくいっていないのが現状です。東京三菱キャッシュワンは特に業績が芳しくないので逆に提携相手先のアコムそのものを買収、サラ金業務を実質統合してしまったほどです。
私的には所長仰るとおり銀行がいわゆるサラ金をすることは、あまり賛成ではありません。
カーローンや教育ローンをもっと簡単に使いやすくするのは良いと思うのですが・・・。
さておまけです。
お金を貸すところと言えば、もう一つ、クレジットカードでお馴染みの信販会社というのがあります。
サラ金、消費者金融との違いを教えて欲しいと掲示板に書き込みがありましたが、私も特によその業態のことはよくは分からないのですが、元々信販系は割賦販売をベースとしているので、ものを買うときその代金信販会社が立て替えて、それを割賦で返してもらうというのが本来の姿です。
あくまで買う「モノ」が基本としてある。
一方消費者金融は「おカネ」そのものを貸す。(故に借りた金で借りたカネを返すという自転車操業になりやすい。)
会社の由来と基本スタンスに違いがあるのですが、今ではあまりモノを買うときに割賦で買う習慣自体が廃れてきたのと(それでも○○全集2000円の11回払いなんて言うのもありますけど)金融ビッグバンで業界の垣根がはずされてきました。例えば、それまではリボ払いなどは銀行系カードは出来なかったのですが、可能になっています。よって、あまり他の業態との差がなくなり、信販しかやらなかった事業に他の銀行なども参入し、さらに一方信販もキャッシングなどおカネそのものの融資に進出するようになっています。
そのため、存在意義が失われてしまいました。(事実ライフなどは破綻。)
金消(金銭消費貸借契約証書)の書き方も恐らく信販会社には割賦販売時代の名残があるのでしょう。銀行の場合も金消には借入金額と金利、期間だけですね。支払総額まで金消に明記してしまうと金利が上がったときに対応できないし。だから今では差は気にする必要はないと思いますよ。金利に違いがあったり、中には柄の悪さとか取立の厳しいところもあるようですが。