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第124回 忘れ去られたドラえもん

担当:林梅雪

○現在放映のドラえもんは第二作目

 2003年は、ドラえもんのアニメ放映開始から25周年、2004年で映画作品は25本目になりました。このように長く愛され、輝かしい歴史をもつドラえもんですが、実は今やっているのは第二作目。ほとんどの人が知らない第一作目があったのです。


 第一作目のドラえもんは、1973年4月1日(日)の夜7時に放映開始。人気が上がらず同年9月30日(日)に放映終了しました。放映時間は日曜夜7:00から30分。通算26回放映で全52話でした(一回につき2話放映、スペシャルなし)。


○一作目の特徴

 まず、ドラえもんの声を担当する声優さんが二作目とは違いました。二作目は、原作者の藤子・F・不二雄(1933〜1996)氏が「ドラえもんってこういう声だったんですね」と感心した大山のぶ代さんでしたが、一作目は富田耕生(平成天才バカボンでバカボンのパパ役)さんが担当。


 しかし、ドラえもん役は途中で富田さんから野沢雅子(ドラゴンボールで孫悟空役)さんに変更します。理由は@富田さんが事故にあった。Aドラえもんの声が不評だった。との2つの説がありますが、いづれの理由か、或いは両方の理由なのかは分かりません。ちなみに富田さん野沢さんともども、第二作目のドラえもん映画に出演。富田さんは「南海大冒険」のドクタークロン役、野沢さんは「ロボット王国」のクルリンパ役で登場しています。


 のび太役は大田淑子(二作目ドラえもんでセワシ役)さん

 ジャイアン役は肝付兼太(二作目ドラえもんでスネ夫役)さん

 スネ夫役は八代駿(主に仮面ライダー作品で活躍、2003年逝去)さん

 しずか役は恵比寿まさ子(昭和40年代に活躍)さん

 のび太のママ役は小原乃梨子(二作目ドラえもんでのび太役)さん

 のび太のパパ役は村越伊知郎(サザエさんでノリスケ役)さん

 スネ夫のママ役は高橋和枝(サザエさんでカツオ役、1999年逝去)さん

 ガチャ子役は堀絢子(チンプイでチンプイ役)さん…ガチャ子って誰? と読者の皆さんは思いましたか? 実はこのガチャ子というのは原作にも二作目にも登場しない一作目独特の登場人物です。ドラえもんに張り合うライバルで、後にレギュラー化します。

 ジャイアンのママ役は青木和代さん 青木さんは二作目でもジャイアンのママ役を担当しますが、一作目ではジャイアンのママは故人であるという設定だったので、実際に登場したかは不明です。

 
 さて物語の展開は原作をもとに作られたのが主ですが、最終回は、ジャイアンとスネ夫に追い回されながらも、厳しい現実に立ち向かうのび太をドラえもんが涙ながらに見送って幕を閉じます。私はこの作品を見ていないのですが、ドジなロボットとドジな人間とがお互い助け合いながら真摯に現実に立ち向かっていくという、二作目とは違った輝くものを持っていたそうです。


 一作目のドラえもんアニメが元にした原作作品は、1〜10巻なのですが、確かに初期の原作作品では、のび太がドラえもんの道具を悪用して悪戯するという話はあまりなかったので、一作目ではドジ同士が手を取り合う共感が、よりはっきりと反映されていたのではないかと思います。


○忘れ去られたドラえもん

 さて一作目作品フィルムはその後、製作会社が解散した折に散逸。現在再放送はおろか、入手も困難だとか。
 わずか半年で燃え尽きてしまったドラえもんの哀愁を、さらに強調するような出来事だと思います。


 二作目ドラえもんに慣れた子ども達は、一作目ドラえもんを見て非常な違和感を感じるでしょう。また、一作目は半年で終了、二作目は放映25周年を達成という事実で、人々はその優劣をつけたがるかもしれません。しかし私は、それを間違ったことだと考えています。


 ドラえもん人気、放映25周年突破、映画25本目、というドラえもんの華々しい歴史の裏で、あるドラえもんが忘れ去られ、歴史の流れの中に風化してしまった事実を悲しく思うのは、私だけでしょうか。


棒