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第131回 税金論<1>税金の基礎知識

担当:林梅雪


○はじめに

 消費税を上げるべきだ、いや歳出削減が先だ! など、崩壊寸前の国家財政を立て直すために税金(租税)に対する議論が連日行われています。そこで裏辺研究所でも、税金って何だ?ということを考えてみようと、林梅雪所員に色々と書いてもらうことにしました。今回は、そもそも税金って何なのよ、ということを考えてみようと思います。総論って、どうしても抽象的になりがちなので面白くない!という人もいるかも知れませんが、基礎は必ず押さえておきましょう!

1.税金とは?
 @目的:行政活動に要する支出(公共サービス等)をまかなうため
 A徴収:強制的かつ一方的に徴収する
 B貨幣である
 の3点が特徴としてあげられます。


 @についての説明はいいと思います。

 
 Aの強制的かつ一方的というのは言い換えれば、強制性無償性です。
 強制性とは、文字通り問答無用で税金を徴収するということです。納税者がそれに応じない場合、国(地方自治体)は法的な対処をとることができます。

 無償性はちょっと難しいんですが、分かりやすく書きますと・・・。
 例えば貧窮している人で生活保護法の適用を受けている人がいるとしますね。その人は(消費税など一部を除けば)税金を払っていないわけですが、他の人から徴収した生活保護のためのサービスを受けることが出来るのです。つまり税金を払っていなくても公共サービスを受けられるわけで、これを無償性といいます。この話を理解する前提として納税者=国民ではないということを理解しておいてください。

 ちなみに価格は任意性かつ有償性です。
 商品・サービスは別に欲しくなければ買わなくていいわけですし、お金を払った以上、その恩恵を享受する権利が生まれます。


 Bについても分かりやすいと思います。徴収は基本的に貨幣で行われるんですね。

(所長注)
 ちなみに最初に税金(租税)と書きましたが、現在は貨幣で税を納めるのが一般的なので税金。
 しかしかつては、年貢を納める=米で税を納める、さらに古い時代では特産物を税として納めたり、と貨幣以外で税を納める方が一般的でしたので、租税と呼称します。ちなみに、租税の「租」とは、土地への税=地租という意味で、税という字は作物からの取り立てを意味しているそうですよ。

2.応能原則と応益原則

 税金は、応能原則、それから応益原則という原則があります。

 応能原則は、納税義務者の経済的能力に応じて課税するべきだと考える原則です。
 つまり金をいっぱい持っているなら、沢山税金を払え!!という、累進課税の根拠になる原則ですね。
 
 応益原則は国や地方自治体の提供する行政サービスの受益の大きさに応じて課税するべきだと考える原則です。つまり、例えば駅の近くに住んでいる人は駅から遠い人より便利なんだから、その分(固定資産税)等を沢山払えという原則です。また、同じ駅でも各駅停車しか停まらない駅と特急が停まる駅では、当然受益は変わってきますので、税金も変わって来ます。

3.3つの税金原則

 次に3つの税金原則についてお話しましょう。すなわち・・・ 
 @課税の中立性
 A課税の公平性
 B課税の簡素性


 @は市場経済における企業や個人の合理的活動を阻害しないことを意味します。
 例えば消費税が増税されたとします。するとある人は「出来るだけ買うものは抑制しよう」と考えるでしょう。また、株の運用から得る所得(所得税)が増税されたとします。するとある人は「株で儲けても税金で沢山持っていかれるから株を買うのはやめよう」と考えるでしょう。

 つまり税金を課することによって、企業や個人の活動が不当に変更されないようにすべきだというのが、課税の中立性です。
 ただ現実には、これは非常に難しい問題です。

 ちなみにサラリーマン増税という話がありますが、サラリーマンの給与所得に増税したところで「働くのや〜めた」という人はほとんどいないと思うので、サラリーマン増税は課税の中立性には反しません。だからといってそれをやっていいかというと、そういうわけではありません。


 Aの課税の公平性、公平については、水平的公平垂直的公平があります。
 水平的公平は、同じ所得の人は同じ課税にすることを言います。非常に当然のことですね。
 垂直的公平は、違う所得の人は違う課税にすることをいいます。
 年間1000万円の給与所得の人と、200万円の給与所得の人が同じ額の税金では明らかに不公平です。
 そこで、累進課税という話が出てきます。


 Bの課税の簡素性は、納税側からも徴収側からも出来るだけ簡素に納税或いは徴収ができることを意味します。ただ現実としては税金の計算は複雑さを極めます。というか課税が簡素に行われてしまったら、税理士の仕事がなくなってしまいますね…(そうしたら、梅雪の有力な就職先が消えてしまいますね:所長談)。

4.税金の体系はこうなっている

 これは、何となくイメージがつきますし、ご存じの人も多いでしょうから、完結に記しておきます。
(分類1)
 @所得課税:所得に対して課せられる税(所得税・法人税・個人住民税・法人住民税等)
 A消費課税:消費に対して課せられる税(消費税・酒税・タバコ税・石油税等)
 B資産課税:資産に対して課せられる税(相続税・固定資産税・印紙税等)


(分類2)
 @直接税:納税義務者=担税者
 A間接税:納税者義務者≠担税者→消費税は消費者が負担し、スーパーマーケット等の事業者が納める。


(分類3)
 @国税:消費税(4%)・所得税、法人税、相続税、関税、タバコ税、印紙税など
 A地方税:都道府県税=道府県民税、事業税、地方消費税、自動車税、不動産取得税、道府県タバコ税、ゴルフ場利用税など
       :市町村税=固定資産税、市町村民税、市町村タバコ税、軽自動車税など

(分類4 所長による追加)
 @普通税:特に税金の使い道が指定されていない税。一般財源。
 A目的税:特定の目的にのみ使える税金。例えば、道路財源となることが義務づけられている揮発油税(ガソリンにかけられている税)。
 B保険料:公的機関によって強制的に徴収される年金などの保険料。
        支払えば安い金額で介護サービスなどが受けられますが、支払わないと・・・。

5.納税方式の違いは?

 税金を納める方法は主に2つあります。
 @申告納税方式:自ら納めるべき税金を申告し納付する
 A賦課課税方式:役所等がその人の納めるべき税金を計算・決定し、納税者に通知する。


 @は法人税・所得税等に代表される方式です。
 前述のように算定方法に複雑さを極めるため、専門的な知識が必要です。また自ら申告するため、脱税などの問題が生じる場合があります。

 Aは固定資産税等に代表される方式です。例えば固定資産税であれば、固定資産評価員(又は固定資産評価補助員)の評価に基づき、決定された税額を納税者に通知します。しかし、適切な評価がされていない場合もありますので、その場合は市役所の資産税課に「こんなにうちの固定資産税が高いはずがない」と、伝えなければなりません。

 (所長注)
 例えば、固定資産税課の土地台帳には裏辺所長の土地が960mと記載されており、これを元に税金がかけられていたとします。
 しかし現在の測量技術で計り直すと、実は900mだったりすることも。その際に、周辺の土地や道路・水路との境界が全て決まっていれば、正しい面積を測ることが出来ます。ただし土地の境界を正式に決定するには、周りの地権者や、道路や水路だったら県や市町村にも立ち合ってもらわないといけないし、測量会社も雇わないといけないので、時間とお金がかかります。正しい土地面積を出すのは結構大変かもしれません。

 さあ、それでは次回からは各論に入っていきますので、宜しくお願いします。
 それでは。


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