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第132回 これがドイツの政治システムだ!

担当:裏辺金好


○大統領制の国家だけど・・・?

 ゆっくりと更新されていく、この各国政治システムシリーズ。
 今回は女性首相が誕生したことでも注目されるドイツについて見ていきたいと思います。

 まずはドイツを理解する上で、ざっと歴史を見ていきましょう。
 ドイツという国家は歴史的に見て、数多くの小国家がゆるやかに連合しつつ(連合体を統治したのが神聖ローマ帝国など)、少しずつ統合していった国家で、私見ですが、現在のドイツはプロイセン王ヴィルヘルム1世と宰相のビスマルクを中心として成立させたドイツ帝国に起源を求めることが出来ます。

 このドイツ帝国はは4王国、6大公国、5公国、7侯国、3自由都市からなる連邦国家で、普通選挙で議員を選んだ帝国議会と、連邦各国の代表による連邦参議院がありましたが、実質的な権力は皇帝に集中していました。

 こうして船出したドイツ帝国ですが、第1次世界大戦に敗北し、皇帝ヴィルヘルム2世が退位し外国に亡命したことで、国家体制は大きな変革を求められることになります。

 そこで、当時としては最も民主的な憲法と称されたヴァイマル憲法を制定し、通称”ヴァイマル共和国”として、ドイツは共和政国家へと移行します。この時は、国民の直接投票によって大統領を選び、この大統領に強大な権力を与えていたのですが、ヒンデンブルク大統領が首相に任命したヒトラーによる独裁政権が確立。その後は第2次世界大戦へ突入、敗北となります。

 と、前置きが長くなりましたが、そこで現在のドイツの政治体制ですが・・・。
 やはり、大統領に強大な権力を与えていて、それをヒトラーが利用したのが問題の1つではないか、と考えられたため、現在も大統領が存在しているものの、あくまで儀礼的な存在であり、実質的な国家のトップは首相です。そんなわけで、まずは大統領から見ていきましょう。

○ドイツの大統領とは?

 先ほども書きました通り、あくまでも「お飾り」。政治的な権力は殆どありません。
 日本における天皇にやや似た役割を負います。つまり、国家の顔=政治権力者としない、ということですね。そのかわり、中立的な立場から様々な場面で調整者としての役割を担っていますし、連邦議会の解散権を持ちます。

 その選出方法ですが、大統領を選出するための連邦会議(下院議員と、これに同数の各州議会から選出された議員)によって行われます。この中から選ばれた人間が大統領となり、任期は5年、再任は1回のみ可能という仕組みになっています。なお、大統領になった人間は、政党から離党しないといけない、というのが慣例です。日本における衆議院議長、参議院議長を想像して頂いても良いかも知れません。


○ドイツの首相(連邦首相)とは?

 次に、ドイツ行政府の長である連邦首相について。
 国民が直接選ぶのかと思いきや、大統領が候補者を提案して、下院の過半数がそれを支持するか、もし過半数の支持が得られなかった場合、下院が別の候補者を提案し、過半数が同意すれば、その候補者が連邦首相になります。任期は4年。

 首相が選出されたら、内閣を組織しますが、これは日本とよく似たパターン。
 大臣を誰にするか、首相は関係各位と調整して考え、決まったら形式的に大統領に任命してもらいます。

○ドイツの連邦議会、連邦参議院とは?

 ドイツの議会は、連邦議会と、連邦参議院の二院制です。
 まずは連邦議会からですが、現在の議員数は603名、任期4年、満18歳以上の国民の投票によって選出、となっています(一定の条件を満たせば国外のドイツ人も投票可能です)。また立候補の資格は、少なくとも選挙の1年以上前からドイツ国籍を有し、選挙当日に満18歳に達していることが条件です。

 選挙方法は小選挙区比例代表並立制で、その人数比は半数ずつ。ただし比例代表の場合、全投票数の5%以上を獲得するか、小選挙区で3名以上の当選者がいないと、議席を獲得する権利はありません(3議席5%阻止条項)。これによって、あまりにも小さな政党が乱立する状態を防ぐようになっています(限定的多党制)。

 一方の連邦参議院は、各州政府によって任命された議員によって構成。
 議席数は州の人口に応じて3〜6名で、その総数は68名。任期は存在していません。

 2つの議会の関係ですが、基本的には連邦議会の権限の方が強い。例えば、法律は連邦議会の過半数さえとれば成立します(ただし、各州の利害に係わるものは連邦議会の承認が必要で、NO!と言われた時には、また連邦議会が可決すれば、法案成立、となります。

 ちなみに、政府や連邦参議院が提案した「重要法案」を連邦議会が否決した場合、政府が大統領を通じて「緊急状態」を宣言します。すると、上院の同意のみで法案が成立するとか。う〜ん、なんかややこしかね。

 それから、日本の憲法にあたるドイツ基本法を改正をする場合、連邦議会、連邦参議院それぞれで3分の2の賛成が必要です。
 殆ど憲法改正を許さない日本の厳しい憲法に対し、ドイツは「基本法」ということもあり、色々と手を加えています。

○反体制政党の禁止
 ナチス台頭を教訓に、ドイツは基本法(憲法)の中で、政党設立は自由だが、国民の政治的意思の形成に協力するとし、また自由な民主的基本秩序の侵害を目的とする政党は基本法(憲法)違反だ、としています。事実、連邦憲法裁判所は、ネオ・ナチ政党である社会主義者帝国者党、ドイツ共産党などに違憲判決を出して、両党は解散させられています。

 なお、現在ドイツ連邦議会に議席を持つ政党は以下のとおり。
 キリスト教民主同盟(CDU)、ドイツ社会民主党(SPD)、自由民主党(FDP)、キリスト教社会同盟(CSU)、同盟90/緑の党

 *キリスト教民主同盟(CDU)はバイエルン州に州支部を置いておらず、一方でキリスト教社会同盟(CSU)はバイエルン州だけが活動拠点の政党で、両党は連邦議会では統一会派を形成しているのが特徴。なお、現在のメルケル首相はCDUの党首です。

○行政区分

 連邦国家であるドイツは、16の州(ラント)に別れています。
 このラントは、それぞれ独自の州憲法や旗を持つなど、独自の政治権力を持っています。ドイツの連邦政府のみが権力を行使できるのは、基本的には、外交、職業紹介、税関、連邦国境警備隊と連邦軍の業務。他は、州がそれぞれ立法し、政策を実現しています(もっとも、実務上は民法、刑法、経済法、原子力法、労働法、農地法等の分野はドイツ全土で統一されていることが望ましいため、あまり州独自の法律にはなっていないそうです)。

 そして、先ほども見た通り、連邦参議院を通じ、州としてドイツ連邦の運営に一定の発言権や立法権を持っています。

 以上、ドイツの政治システムについてざっと眺めてみました。
 さらに詳しいことを知りたい!という方は、ドイツ外務省(日本語版)の「ドイツの実情」を参考にしてみてください。
 http://www.tatsachen-ueber-deutschland.de/2447.99.html

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