ペットボトルって何だ?
○解説
飲料水を飲む際に欠かせない存在がペットボトル。今回は、その歴史や製法、リサイクルなどについてご紹介します。○ペットボトルの歴史
ペットボトルは1967年頃にデュポン社(アメリカ)が基礎技術を確立し、1973年にアメリカの化学者であるナサニエル・ワイエスがPETボトル特許を取得したのが始まり。1974年からアメリカで炭酸飲料水用として使用を開始されますが、日本では1977年に「醤油」容器として使用を開始。お国柄の違いがよく出ている感じです。なお日本では、1982年に食品衛生法が改正されて清涼飲料用にPETボトル使用が認められ、これ以後ペットボトルは我々の生活に欠かせない物へ爆発的に普及していくのでした。
○ペットボトルのペットとは?
ペットボトルの原料は、石油からつくられるポリエチレンテレフタレートという樹脂を成型したものです。英語でPolyethylene Terephthalate と書くため、頭文字をとってPET(ペット)と呼んでいます。ただ、英語圏ではプラスチック・ボトルと呼ぶことが多いようです。ちなみに、ポリエチレンテレフタレートはプラスチックの一種で、ポリエステルの仲間。原油を精製して製造するナフサを加熱・分解して取り出された低分子化合物のうち、テレフタル酸とエチレングリコールを高温・高真空下で化学反応させ、化学的に結合させて樹脂として精製します。なお、溶かして糸にしたものを繊維、フィルムにしたものを食品包装フィルム、そして膨らませたものをペットボトルとして使用します。
○製造方法
では、溶かして膨らませるとは具体的にどのような工程なのでしょうか。まず、PETを270度で水あめ状に溶かし、射出成型機で圧力を加えながら樹脂を金型に流し込みます。金型は冷えているため、すぐに固まり始めるので、ペットボトルの原型(プリフォーム)が誕生します。
続いてプリフォームを100度に加熱し、柔らかくなったところで延伸ブロー成型機内の金型に投入。棒(ストレッジロッド)を使って縦方向に細長く伸ばし、さらに高圧の空気で横方向に膨らませ、金型を外すと完成です。
図解解説は http://www.petbottle-rec.gr.jp/basic/made.html をご参照ください。
また、ペットボトルを造る機械を紹介する動画もありました。
○ペットボトルのリサイクル
▲PETボトルの識別表示マーク。なお、飲料、酒類、特定調味料用(醤油、めんつゆ、ノンオイルドレッシングなど)といったPETボトルのリサイクルに適した製品(指定表示製品)に限定され、それ以外(食用油、シャンプー、化粧品)などはプラスチック製容器包装として扱われます。
PETボトルリサイクル推進協議会によると、2018年度の指定PETボトル販売量(総重量)は626千トン。一方で529千トンがリサイクルされており、84.6%がリサイクルされています。ちなみに、2017年度のデータだと、アメリカでは20.9%、ヨーロッパでは41.8%が販売量に対してリサイクルされているとのことで、日本とは大きな差があります。(ただ、日本のデータについては実態と異なるなどの批判もあります。)
さて、自治体などで回収されたペットボトルは、@圧縮してブロック状にまとめて容積を減らす(ベール品)。Aベール品をリサイクル工場へ運び、ばらす。B金属探知機などで異物を除去。C粉砕機で5cm程度にバラバラにして、風を送って飛ぶか飛ばないかでペットボトルとラベルを分離。D再度粉砕し、機械で洗浄、脱水、乾燥させて比重分離などで異物を取り除く。という流れで、フレークが出来上がります。
フレークは、そのまま、または溶かして小さな粒にしたペレット状の状態で再利用され、卵パックやプランター、洗剤容器、洋服といった、食品にじかに触れないものに加工されます。
一方、化学分解して純度99.99%まで精製し、ナフサ由来のPETと変わらない品質にまで合成したものは、再びペットボトルに再加工されます(ボトルtoボトル)。資源循環を考えると、より多くのペットボトルがそのままペットボトルに再生できるといいですね。
世界的にも環境意識の高まりから、様々な動きが始まっているようです。日本では2018年11月に、一般社団法人全国清涼飲料連合会が「清涼飲料業界のプラスチック資源循環宣言」を発表し、2030年度までにPETボトルの100%有効利用を目指すことを目指しています。また、リサイクル技術の進歩によって、より高品質な繊維が作られつつあり、これまで作業着などがメインだったリサイクルも、より高品質な衣服へ拡大していきそうです。
【参考文献・サイト】
モノができる仕組み事典 成美堂出版
PETボトルリサイクル推進協議会 http://www.petbottle-rec.gr.jp/
ユニクロ×東レが挑むペットボトル・古着再生服:日経ビジネス電子版 https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00002/091800690/