豚肉の部位と豚の話
担当:裏辺金好
前回の牛肉に引き続き、今回は「豚」です。このノリの雑学もどんどん投入していきたいですね。なお、今回は2部構成となっており、部位の話の他、「豚」本体に関する情報も加えています。
豚の部位を絵で表すと、こんな感じになります。 これは、農水省の食肉小売品質基準で定められています。詳しくは最後で紹介しています。
では、どの部位がどんな肉なのか、ご説明しましょう。
肩の肉は運動するところなので筋肉質で脂肪が少なく、堅い肉です。薄切りや角切りにして、長時間煮込み、シチューなどの煮込み料理に使用します。
赤身の中に脂肪が粗い網状に混ざり、きめはやや粗くかため。しかし、コクのある濃厚な味するため、カレーや焼き豚、しょうが焼きなどに使用します。
赤身と脂肪の境にあるすじを切ってから調理します。
キメが細かく、風味があり、肉も柔らかくヒレと共に高級な部分。外縁の脂肪にうまみがあり、脂肪を取りすぎないように。
豚カツ、すき焼き、ローストポーク、焼き豚、ロースハムなどに使用されます。ちなみに、ロースハムは日本オリジナル。本場ドイツではハムと言えば「モモのハム」だそうです。
最上級の部位。ビタミンB1を多く含み、最もきめが細かく、脂肪は少なめで、柔らかい。豚カツなどの油料理に使用します。ただし、加熱しすぎるとパサつくそうです。
濃厚な味が特徴の部位。骨付きの肉はスペアリブと呼ばれます。シチューや角煮として使用されます。
ロースとポークや、ボンレスハムとして使用される部位。キメが細かく、ヒレの次にビタミンB1を含んでいます。
どんな料理にもオールマイティーに使用出来ます。ただ、色の濃い部分は薄切りにした方がいいとか。
牛肉同様、豚も様々な内臓を食べることがあります(主に煮込み料理で)。基本的には牛肉と同じですが、その他豚では「トンソク」があります。読んで字のごとく足です。コラーゲン、エラスチン等のタンパク質が多く含まれ長時間煮ると、ゼラチン質に変化し、やわらかくなります。通常は茹でた状態で売られているそうです。あえ物などにオススメらしいですけど・・・・。
豚とは何でしょうか?・・・・なんと、イノシシの仲間なのです。イノシシが家畜化された姿が豚なのですが、ヨーロッパイノシシ、インドイノシシ、アジアイノシシの3種類が家畜化され、食用豚として飼育されていると言われています。約1万年年前に中国、それから遅れて中央アジア、ヨーロッパで家畜化されたそうです。といっても、当然の事ながらハッキリいつからと言うことはできません。長い年月をかけて、様々な地域で少しずつ家畜化への取り組みがされたことでしょうから。
現在もっとも古く見つかった遺跡での豚の骨は中国南部、桂林郊外の甑皮岩洞穴から見つかったもの。その他、人類最古の農耕文化遺跡とされるトルクメニスタン南部のアナウ遺跡(紀元前4000年)、ヨーロッパではスイスの湖生民族が飼っていた泥炭豚(紀元前2800年頃)がもっとも古いとされています。この間、様々な野生動物を家畜にしようと悪戦苦闘したのでしょうが、面白いことに世界中で豚を家畜にすることになったんですね。
それでは、何で豚(イノシシ)を家畜にしなければいけなかったか。それは、農業と同様、人口増加に伴い食糧増産が必要になったからです。そして、イノシシは多産で、雑食で、小さい頃から飼育すれば人になつく。さらに、群れを作るから管理も簡単。こういう理由だったんですね。
ちなみに、豚と言っても、東南アジアにいるようなイノシシとほとんど変わらないようなものから、我々が親しんでいるピンク色の豚や、鹿児島産で有名な黒豚など様々。400種類ほどいると言われます。ただ、多くの家畜化されたイノシシは長年人間に飼われているうちに、あのような姿になったみたいです。天敵がいるかいないかで、やはり色々退化するみたいですね。ちなみにイノシシと豚の大きな違いですが、「豚の鼻はイノシシのものより短い」だそうです。
ちなみに余談。農業を人間がするようになったのは、安定して食料を手に入れることが出来るから、と言う人がいますが、あれはウソです。家畜はともかく、農業は天候に大きく左右され、不作の年も多く出てきます。しかし、そのリスクを冒してでも食糧を増産しなくてはいけなくなったため、やむを得ず長い年月をかけて、麦や稲を植えるようになったのです。
現在、豚は3億8000万頭ほどを中国で、7300万頭ほどを旧ソ連地域、6000万頭をアメリカで飼育。これにドイツ、ポーランド、スペイン、メキシコ、オランダ、ベトナム、フランス、ルーマニア、日本(1010万頭)のと続きます。そして、世界全体では8億6900万頭以上といわれています。さすが中国。豚の頭数も世界一ですね。
さて、豚と言えばハム・ベーコン・ソーセージの3種が加工食肉の代表です。
当然、加工の工程や、また材料も違うので紹介しましょう。
ハムは豚肉を塩漬けしたのち、燻煙(くんえん=スモーク)、湯煮(ゆに=スチーム)したものでです。上でも述べましたが、本場ヨーロッパでは「モモ」の肉を使ったものがハム。ロースを使った日本のハムは、あくまで日本固有のものです。1872(明治5)年に長崎でハムの製造がはじめられています。ただ、当時はモモのハム。それが、今のロースになったのは昭和の初め。中華街では高級品であるバラやショルダーのみ使用されたため、ロースが余ってしまった。そこで、これをハムにしてしまおう、と言うのが始まりだそうです。同時に、モモのハムは高級品でしたが、ロースを使用することにより、ハムは安価な品物として出回るようになります。
ソーセージは豚だけでなく、牛・ヒツジなどの肉を塩漬け後、ひき肉にして調味し、腸などの袋につめて湯煮や燻煙、乾燥などの処理をしたものです。ちなみに、フランク、ウィンナーというのがありますが、これら3つは太さで区別。JAS規定では、ウインナーは、太さ20mm以下、フランクは、38mm以下、それ以上の太さが、ソーセージとされています。
ベーコンは、ハムと途中までは同じ過程で製造。しかし、最後のスチームが、ベーコンでは「乾燥」という工程になります。
では、今回はここまで。さらに詳しく知りたい方は
サイボクぶた博物館http://www.saiboku.co.jp/museum/をお勧めします。今回の参考の1つにもさせて頂きました。
また、その他の参考文献はいつもながらMicrosoft Encarta Encyclopedia 2001を使用しています。
最後に、なぜロースとかもモモか、そういう統一基準が完成したかを紹介しておきます。
従来は小売店によって食肉の部位別の名称がまちまちだったが、昭和52年に食肉小売品質基準が定められ、これに基づいて牛肉および豚肉の部位表示が統一された。この基準では特に定める場合を除き、(社)日本食肉格付協会の「牛部分肉取引規格」および「豚部分肉取引規格」に定める名称を使用する。
牛肉については、かた、かたロース、リブロース、サーロイン、ヒレ、ばら、もも、そともも、らんぷの9部位、豚肉については、かた、かたロース、ロース、ばら、もも、そともも、ヒレの7部位が定められている。牛、豚ともに、こま切れ(切り落とし)、ひき肉については部位表示をしなくてもよいとされている。
鶏肉は食鶏小売規格によって解体品小売品目30品目について形態や名称を定めている。
財団法人 日本食肉消費総合センターhttp://www.jmi.or.jp/より