クラシック音楽の基礎知識
今回は、ちょっとクラシック音楽を聴く上での基礎知識を載せておきたいと思います。この原稿は、11月に書いているのですが、年末年始を「今年はオーケストラのコンサートを始めて聴きに行くぞ!」「第九のシーズンだ!」なんて人も多いかと思います。一方、「聴きたいけど、クラシックは難しそうで・・・」という人も多いと思います。
そこで、今回はクラシック初心者のために、「これだけ知っておけば、ある程度楽しめる」というクラシック特有の専門用語や、チケットの買い方、コンサートホール内での聴き方などを御紹介しようと思う次第です。
クラシック、クラシックと言いますが、一応、クラシック=古いというのは、皆さんご存じかと思います。で、一般的にはヨーロッパの音楽を指します。別に古ければいいので、私は中国の古楽だとか、雅楽なんかもクラシック音楽に含んでも良いと思いますけどね。
んでもって、だいたい我々が耳にするのは、
バッハ(
1685〜1750年)ぐらいから、
モーツアルト、
ベートーヴェンを経て、
マーラー(1860〜1911年)ぐらいまで、すなわち17世紀から19世紀ぐらいまでの音楽をクラシック音楽として、それ以降の音楽は「現代音楽」として、おおざっぱに分類できます。更に細かく分類すると、バッハの時代は
バロック音楽、ベートーヴェンの時代は古典派などと分類されます。
ただし、街中のCDショップに行きますと、ヴァイオリンなどのクラシックの楽器やオーケストラを使用している音楽は、極端な話、2ヶ月前に作られた曲でも一緒にぶち込まれている例もありますし、日本の合唱曲や山田耕筰の「あかとんぼ」なんかも、クラシック>声楽としてクラシックコーナーで販売されている例もあります。まあ、明確な分類の基準はないわけです。
クラシック音楽は、長い歴史の中で人々に愛され、残ってきた曲ですから、クラシック音楽さえ聴けば文化的というわけではありませんが、やはり名曲として尊重に値する音楽です。また、ヨーロッパ発祥の音楽ですが、J−POPだろうが、ロックだろうが、元はクラシック音楽を音楽の基礎にしていますし、日本人も指揮者や演奏家で多くの人が活躍しています。ただのヨーロッパの音楽にとどまらず、世界的な音楽なので、敬遠しないで是非聴いて下さい。
CDショップに行くと、管弦楽曲、室内楽曲等と分類されており、またCDの表紙にも「ベートーヴェン 交響曲第9番『合唱』」なんて書いてあります。一体、これは何なのか。知っている人には当たり前の知識ですが、知らない人も沢山いると思うので、きちんと紹介します。
@管弦楽曲・・・オーケストラを使った曲。さらに、以下のように分類されています。
A.交響曲・・・管弦楽のために作曲されたもので、基本的に4つの楽章(曲)から成り立ちます。
楽章とは、「お話」のようなもので、作曲者によって曲の組み立て方は色々です。
B.交響詩・・・その名の通り、オーケストラに詩をイメージした演奏をさせます。1楽章から成り立ちます。
1つの曲の中に、例えば最初がドナウ川の氾濫をイメージし、
中間部で氾濫が終結し、人々に恵みをもたらし・・・って感じです。
C.協奏曲・・・ソロを付けます。例えばヴァイオリン協奏曲なら、
ヴァイオリンを弾くソリストに格好良い見せ場を作ってあげて、引き立てます。
D.組曲・・・交響曲と違って、「4つ」の楽章にとらわれず、作曲者が自由に曲数を分けて作ってあります。
管弦楽に限らず、ピアノ曲などでもあります。
E.その他
A室内楽曲・・・少人数で演奏する合奏の曲。今で言えば、バンドですね。例として弦楽四重奏(ヴァイオリン2本・ビオラ・チェロ)。
B独奏曲・・・一人で弾く曲です。例としてピアノ曲。
C吹奏楽・・・いわゆる
ブラスバンド。金管楽器(トランペットとか)、木管楽器(フルートとか)、打楽器などを使用。
簡単に言えば、オーケストラからヴァイオリン系統を除いたもの。
D声楽曲・・・
独唱と合唱に別れます。読んで字のごとくです。伴奏にピアノが付きます。
E宗教音楽・・・基本的には声楽曲ですが、キリストを称える歌はここに分類。ミサとも言います。
Fオペラ・・・総合芸術とも言われます。ミュージカルは、オペラを簡略化したもの(といったら怒られるかもしれませんが)。
すなわち、大規模な美術セットに、照明に、歌い手は色々な役になりきって、歌いながら演技します。
たいていの場合、伴奏はオーケストラです。
指揮者は、野球で言えば監督です。どんなによい選手が集まったチームでも、監督がトンチンカンな事を言ったら、選手が混乱して満足なプレーが出来なかったり、ダメ虎でも星野監督が活を入れて、大型補強をすることでリーグ優勝しましたし、監督と選手の間で意思疎通が上手く図れないと、成績は低迷します。
クラシックの指揮者も同じ事です。特に、いかに、そのオーケストラに「いい音」を出させるか、例えば透き通るような美しい音を出せるのか、やる気のない、つぶれたような音を出させるのか、もしくは、何の味も素っ気のない「ただ演奏してみました」というようにするのか・・・。
また、クラシックの指揮者は「楽譜の解釈」も行います。例えば、フォルテ(強く)と書かれている部分でも、指揮者によってどのぐらい強くするかは千差万別。また、ここの部分はヴァイオリンを強く出すか、フルートを強調するかとか、楽譜にはアレグロ(速く)と書かれているが、どのぐらい速く演奏するのかなど、指揮者によって解釈は様々です。
ちなみに、オルフェウス管弦楽団のように、指揮者はおかないというオーケストラも、少数ですが存在します。みんなの仲が良くて、解釈が一致していれば、そう言うことも可能なんですね。
宣伝で、『裏辺金好が弾く、ベートーヴェンのピアノ三大ソナタ「月光」「悲愴」「熱情」 in 裏辺研究所台所』
というのを、ご覧になった方も・・・いるわけはないですが、とにかく、そう言う感じの宣伝を見かける事ってありますよね? それから、学校で「ソナタ形式がどーたらこーたら」と習ったこともうっすら覚えている方もいると思います。
これはですね、1つの曲の中に「起承転結」、正しくは提示部(テーマを示す)、展開部(テーマのアレンジ)、再現部(最初のテーマに戻る)というソナタ形式で作られた複数の楽章で構成された曲のことを言います。こう言うのを念頭に置いて、きちんとベートーヴェンのピアノソナタを聴いてみると、なるほどな、と思いますよ。
指揮者とは別に、オーケストラには
コンサートマスターというリーダーがいます。通常は第一ヴァイオリンと呼ばれるグループのリーダーが務めます。選手会長みたいなものですね。役割は大きく、全体の音を指揮者とは別にチェックしたり、細かいタイミングを合わせたり、音合わせをしたりします。コンサートに行くと、指揮者が登場する前に、ヴァイオリン弾きの1人が「ラ〜」と音を出すと、他の楽器の人たちが一斉に「ピャー」と音を出しますが、こういう音合わせも、大抵はコンサートマスターの仕事です。これで、みんなの音のピッチを合わせます。
これは・・・音楽やっている人には当たり前の共通用語で、やっていない人には殆ど関係のない言葉ですが・・。
要は、
リハーサルのことです。本番さながらに、最初から全部通して演奏します。もちろん、下手くそすぎて話にならないと、指揮者激怒「もう一度そこ!」などと、普通の練習になってしまいますが・・・。なお、演奏会によっては、このゲネプロを公開しているところもあります。
ちなみに、このゲネプロに全精力を集中しすぎて、本番の方が下手な演奏になった・・・ということもしばしばあります。
これは、一概には何とも言えませんが、大人数で演奏するオーケストラは、当然高くなります。ただし、アマチュアの演奏会か、セミプロの演奏会か、プロの演奏会か、プロでも超一流のオーケストラか、などで、値段は全然異なります。入場無料からS席3万円とか、4万円まで・・・。
チケットの買い方ですが、最近ではインターネットで注文できることが多いので、それが一番便利でしょうか。
例えば、クラシックの演奏会だからといって、正装で行かないといけない、なんて決まりはありません。悪臭を放つような服装でなければ、もしくは軍服など、奇抜で場違いな格好でなければ、普段着でオッケーです。ただし、最低限のマナーとしまして、例えば
小さい子供を連れて行かない。
風邪引いているときは、マスクを付ける、
携帯電話の電源はオフにする・・・・。
当たり前のようなことですが、演奏会に行くと、マナー無視というのがよくいます。演奏途中で子供が泣き出すのにはビックリしましたよ・・・・。
何もクラシックの演奏会に限ったことではなく、ジャズだろうが、美術の展覧会だろうが、基本的なことはみんな一緒です。
9.クラシック音楽を初めて聴く場合、どんな曲から? |
一番最初は、ドヴォルザークの交響曲第9番「新世界」がオススメでしょうか。第4楽章の冒頭は、ジョーズのテーマとして転用されたことでも有名ですね。まあ、人によってどのような曲を好むかにもよるので、一概には言えませんが、個人的にはモーツアルトやハイドンの曲は初心者には眠くなるだけですので、ベートーヴェンの交響曲やショパンのピアノあたりから聴いては如何でしょうか。また、バッハの曲も、チェンバロというピアノの原型で、ギターのような音を出す楽器が、ガチャガチャ鳴って、ドラムのようにビートを打つ(?)ので、非常に聴いてて楽しいです。
年末になると、「第九」「第九」とどこのオーケストラも演奏を始めますが、これは何かと申しますと、
ベートーヴェンの交響曲第9番「合唱」という曲です。サブタイトルの「合唱」で解るとおり、この曲にはシラーという人の詩を歌った合唱が第4楽章につきます。喜びの歌、歓喜の歌ともいいます。
ちなみに、その歌詞が「平和と希望と人類愛を歌った」ため、新年を迎える前にはふさわしいというわけで、日本が独自に年末にやることになっています。もっとも、本当の理由は、人気があって、必ず集客が見込まれるので、オーケストラの懐を暖かくして新年を迎えるために、演奏する・・・ようです(笑)。噂によると、本場のドイツでも、「それは良い考えだ!」と、その企画を逆輸入をしているとか、していないとか。
と、まあ今回はこんな感じです。ぜひ、クラシック音楽を皆さんも聴いてみて下さい。