○はじめに |
ニュースで色々な政治用語が出てきますが、よく解らない事って多いですよね。特に外国の政治になるとさっぱりなことが多い。何故かといいますと、もちろんその政治用語の意味が解らないということではありますが、そもそも大前提となる政治システム、つまり内閣の仕組みだとか国会の仕組みだとかが解らないので、いくら単語単位で一時的に覚えたとしても直ぐに忘れてしまうんですね。そこで、ここでは世界各国の政治システムについて御紹介しようとも思います。
第2回目は、お隣の韓国こと、大韓民国です。
1.まずは図で御紹介 |
2.基本 |
1948年7月17日に大韓民国最初の憲法が制定されて以降、現在まで9回の憲法改正が行われ、今の政治システムは現憲法が1987年10月29日に施行されてからのものです。それまでに比べて大統領の権力が縮小され(非常措置権発動に制約)、より民主的な国家となるように改正されました。ちなみに憲法改正は日本と似ていまして、大統領または国会議員過半数の発議によって提案され、国会で総議員3分の2以上の賛成で議決され、国民投票で過半数が賛成することが要件となっています。
3.大統領 |
韓国は国家元首である大統領がいます。
大統領は国民の直接選挙で選ばれ、任期は5年。アメリカと違って再任することは禁止されています。また、憲法や法律違反で弾劾される以外は、議会から責任を問われることはありません。そして、
・重要な国家事項を国民投票にかける権利
・予算を議会に提出する権利
・外交を行う権利
・宣戦布告や講和をする権利
・国軍統帥権など広範囲にわたって権利を持っています。もちろん、栄典授与や恩赦も大統領の権利です。
また、大統領が病気や事散、死亡などで職務を遂行できない場合は、後述する国務総理もしくは法律で定められた国務委員(閣僚)の順番に、その権限を代行するようになっています。それから、アメリカのように党の推薦を受けて、行政府の高位公務員を任命します。日本ではあり得ないですね。
それから、国会に出席して発言し、または書簡により意見を表示することができます。ただし、議会を解散することは出来ません。
4.国務会議 |
韓国の行政は、大統領を議長とした国務会議が中心となっています。
大統領は、国務総理(首相)を議会の同意を得て任命し、さらに国務総理の提案によって15人〜30人の国務委員(大臣)を任命します。そして日本でいうところの閣議は、大統領を議長に、国務総理を副議長として行われますが、ここで決まったことは大統領を拘束するわけではありません(あまり露骨に無視していると、色々問題になるでしょうけどね)。
また、国務総理と国務委員は国会議員との兼職が許されている、つまり逆に言えば国会議員でなくてもよく、また国会から解任決議を受けても大統領はそれに拘束されるわけではありません。このように、あくまで大統領を補佐する諮問機関的な役割といえます。日本の内閣とは全然違いますね。この他大統領は、監査院、国家情報院、中央人事委員会といった組織も持っています。このうち中央人事委員会は1999年に発足した組織で、公正な公務員の人事を行うことを目的としています。
5.議会 |
韓国の議会は一院制で、任期は4年、解散はありません。
現在、議員数は200名以上と法律で定められており、現在273名となっています。国会議員選挙に立候補出来るのは25歳以上。
227議席は小選挙区制(地方区議員)、残り46議席は各党の得票率に応じて比例配分された全国区議員となっています。つまり日本の衆議院と同じく小選挙区比例代表並立制ですね。
議決の方法は、原則として在籍議員の過半数の出席&出席議員の過半数の賛成です(憲法および法律に特別な規定がある場合を除く)。可否同数の場合は、否決されたものと見なされます。大統領はこれに対し、不満があれば再審議を要求する権利を持っています。その場合、議会の在籍議員の過半数が出席し、出席議員の3分の2以上の賛成があれば再可決されます。
また、日本で通常国会、臨時国会(臨時会)と呼ばれているものは、韓国では定期会期(100日)と臨時会期(30日)となっています。
それから、大統領を弾劾することが出来ます。弾劾決議は、国会在籍議員の過半数の発議を経て、在籍議員の3分の2(181人)以上が賛成すれば可決。可決された場合、大統領の権限は停止され、首相が職務を代行します。そして弾劾の最終的な判断は、後述する憲法裁判所が行い、憲法裁判官9人中6人以上が賛成すれば弾劾が決まります。
なお先にも触れましたが、法的拘束力はありませんが国務委員を弾劾することも出来ます。この場合は大統領弾劾よりも要件は緩やかで、国会在籍議員の3分の1以上の発議によって票決にかけられ、出席議員の過半数が賛成すれば弾劾が決議されます。
<参考:各党の議席数>
ハンナラ党 147
民主党 61
ヨルリン・ウリ党 46 (=開かれたわが党の意。03年11月に民主党から離脱し、唯一の与党。)
自民連 10
その他 3 無所属 3 (2004年2月5日現在 最新データは随時、外務省HPの韓国の項目を参照してください)
5.裁判所 |
裁判所は、日本と同じ三審制。
日本でいう最高裁である大法院をトップに、この下に第2審である高等法院5つ(ソウル、大邱、光州、釜山、大田)、第一審機関として地方法院&家庭裁判所・行政裁判所があります。行政裁判所は現在の日本ではありませんが、行政に関する事件を専門に扱う裁判所です。
そして、大法院長(最高裁判所長官)は国会の同意と、大統領の任命で選ばれ(日本だったら内閣ですね)、その他の大法官(最高裁判所裁判官)は大法院長の要請で大統領が任命します。大法院長は任期6年、定年70歳で、再任は不可。その他の大法官は任期6年、定年65歳で再任可能です。
それから、大法院の下には憲法裁判所というものもあります。
法律が憲法に違反していないかを調べる裁判所で(日本でいうところの違憲立法審査権ですが、日本には特別の裁判所はありません)、国家機関問の権限争いに関する審判や政党解散に対する審判等を行います。大統領の弾劾の審査については前述の通り。そして、9人の裁判官で構成され、任期は6年。再任も可能です。
6.地方自治 |
ソウル特別市と、6つの広域市(釜山、大邱、大田、光州、仁川、蔚山)、そして9つの「道」を単位とする広域自治体が定められています。「道」の下には、市と郡が基礎自治体として存在しています。地方自治制度は1961年の軍事クーデターで廃止されて以降、90年代に入って再整備され、95年6月に完全復活のために地方選挙が行われています。
参考:関西国際文化院 http://www.kansaikorea.org/
外務省ホームページ http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/korea/data.html
LEC東京リーガルマインド 精選 講義編政治学
毎日新聞 2004年3月8日
マイクロソフト エンカルタ総合大百科2004
(写真:光化門/撮影:孟保世)