リンゴに関する様々なお話
担当:裏辺金好
最近、いくら何でもちょっと堅すぎるネタばかり届けていたので、雑学万歳の原点に立ち戻り身の回りの物についてみていきましょう。と言うわけで、今回は「リンゴ」。食品についての雑学は久しぶりですね。
意外かもしれませんが、リンゴはバラ科の植物。定義としては、バラ科リンゴ属の落葉樹木と果実の総称となります。基本的には世界の温帯地域に生育し、果実の外観は種によって、例えば皮の色は緑色、黄色、赤、黒ずんだ赤色など。果実の形は球形、ひらたい形、細長い形が存在。さらに大きさも、サクランボ程度のものから、中型のグレープフルーツくらいまで存在し、一口にリンゴと言っても世界には実に多様な種類があるのです。
リンゴの原産地は中国の中国・天山山脈。または、カスピ海や黒海のあたりとする説もあり、よく解りません。
前者の説によると、コーカサス地方からヨーロッパに伝わっていくことになります。そしてなんと、既に新石器時代の今から8000年前の炭化したりんごがトルコで発掘されているのです。さらに、紀元前1300年頃のナイル川デルタ地帯における果樹園、古代ギリシャではリンゴの野生種・栽培種の区別と接ぎ木による繁殖法を書いた書物、古代ローマでリンゴの品種を書いた書物があったことが確認されており、リンゴ栽培と私たち人間の歴史は非常に古いものです。
その後、ヨーロッパ人達はアメリカに移民すると故郷のリンゴを持っていったため、アメリカでもリンゴの栽培が始まります。日本で今栽培されているのは、このアメリカで栽培されたリンゴなのです。
リンゴという名前それ自体は、平安時代中頃の『和名類聚抄』という書物(著:源順による百科事典)に「利宇古宇(りうこう)」として記録があります。中国
から渡来した「和りんご」とか「地りんご」と呼ばれる粒の小さな野生種であったと言われ、今、我々がよく見かけるリンゴとは違います。そしてコレがなまって、「りんごう」「りんご」となったと考えられています。ちなみに、鎌倉時代ぐらいから日本でも栽培されています。
今見かけるセイヨウリンゴは、まず幕末の文久時代(1861〜63年)に江戸巣鴨の屋敷に植えられたのが最初で、明治維新を迎えると1872(明治5)年に北海道開拓使によって75品種を輸入され、内務省勧業寮試験場の主導で全国で栽培をスタート。その結果、信州や東北地方で栽培に適することが判明し、今のようにリンゴの産地となっていきました。ちなみに、最終的には600種類が導入されたそうですが、今は10種類程度栽培されるにとどまっているとか。
そして、セイヨウタンポポと同様、初めは「西洋リンゴ」と呼んで従来のリンゴと区別していたのですが、結局西洋リンゴの方が一般的になり、こちらが「リンゴ」と呼ばれるようになります。なお、リンゴの栽培に適した気候ですが少なくとも2カ月間、平均気温が氷点近く、氷点以下になる地域とのことです。−40℃ぐらいまでは耐えるとか。そんなわけで、寒い地域には食料として貴重なものになります。
さて、リンゴのおいしさの秘密は何と言っても「蜜」にあります。
この蜜が出来るまでですが、まず光合成によって葉でつくられたデンプンが急激に糖に変化し、果実に運ばれるようになります。大量にはこばれた糖(ソルビトール)が、果実の水や栄養の流れる通路(維管束)からあふれて、細胞と細胞の隙間に入り込み、リンゴの断面を見ると透き通った感じになっています。当然、熟度が高いほど蜜の量は多くなります。ただし、「北斗」「ふじ」は沢山の蜜がはいりますが、「王林」「つがる」は殆ど入らないそうです。でも、糖それ自体の量は変わらないとか。
その「おいしさ」。どうやって見分けるのか。
まず、香りがよい、身のよくしまったもの、形がよい物(中くらい)、重い。
それから、リンゴからでているツルが太いと、沢山栄養を吸収したと言うことなので美味しいとか。また、ツルがみずみずしい物がよく、しなびているのはダメ。また、ツルの周囲のくぼみが深いものが良いそうです。
そして色ですが、基本的には赤くて濃い色が美味しいのですが、虫除けのために袋に入れて栽培した物の場合、綺麗な色になる反面、思ったほど美味しくないこともあるので、あまり色に頼りすぎてはダメだとか。袋に入っていない物は色が薄くても美味しいそうで、袋に入れないで栽培したリンゴは「サンつがる」「サンふじ」などと表示されていることとが多いそうです。多い、ということなので、必ずしもそうであることはありません。
色について言えば、あともう一つ。
りんごのお尻の地色です。緑(青)が少なく、黄色がかっているりんごが食べ頃で、しかしながら長持ちしないので早く食べた方が良いそうです。
リンゴに含まれる糖は、ブドウ糖や果糖。
このうち果糖にはα型とβ型があり、β型はα型の3倍も甘いのですが、このα型は温度が下がるとβ型に変化します。そのため冷やしますと、さらに甘くなる、ということだそうですそんなわけで、買ったリンゴはちゃんと冷蔵庫で冷やしましょう。
ちなみに冷蔵庫と言えば、例えば半分に切って余ったリンゴ。
放っておくと、切り口が褐色に変色するため、まずそうに見えます。そこで、薄い食塩水にりんごをつけて保存するのがベストだとか。こうすることで、リンゴのポリフェノール類を褐色に変化させる酸化酵素の働きを抑えるのだそうです。ただし、長く漬けすぎるとリンゴの栄養などが溶け出すので注意。
スーパーに行くとそれはもう「ぴかぴか」に輝くリンゴを見かけることがあります。
これは、「つがる」や「ジョナゴールド」によく見られるもので、人工的にワックスを塗っているわけではなく、熟度が進んだことにより、果皮に不飽和脂肪酸であるリノール酸、オレイン酸が分泌されて果皮の「ろう物質」(メリシン酸、ノナコサン)を溶かすことにより生じる現象で、果実が自然に果皮の保護をしている状態であるそうです。ですから、危険なものではありません。むしろリノール酸はビタミンFとして栄養価が高く、成人病の予防のため注目されているぐらいだとか。
ただ、アメリカ産のリンゴはどうなんでしょうね?
これは、青森りんご流通振興協会(株)http://www.jomon.ne.jp/~arrsk/ にある「リンゴの品種」を参照した方が早いですね。
1日1個のリンゴは医者を遠ざけると言われ、近年、リンゴが体に良いことが具体的に判明してきていますが、どう体に良いのでしょうか。
まず、リンゴの重要な成分である
ペクチン。これは食物繊維の一種で、整腸作用があり
下痢と便秘に効果的、さらに
大腸ガンの防止にも効果があります。そして、コレステロールを減少させ、
動脈硬化、糖尿病の予防にも効果的だとか。ちなみに、このペクチンを分解して出来るのが
オリゴ糖。このオリゴ糖が、大腸内のビフィズス菌を増やす働きを持つそうです。
そして、もしかするとこっちの方が重要かもしれない成分が
亜鉛。
亜鉛不足は問題で、子供の場合は体が大きくならなかったり、大人の男性の場合は生殖機能にも問題が出るとか。この亜鉛は、果皮と果肉の間に多く含まれるそうです。そうなると気になるのが、残留農薬なのですが、現在、厚生労働省の定めた基準の10分の1以下だとか。殆ど気にすることはないみたいです。
寒いところでもよく育つリンゴですが、何と言っても病気、害虫、台風は天敵。
病気としてはモリニア病、赤星病、黒星病、リンゴ腐敗病、うどんこ病、腐乱病。害虫としてはガ類、アブラムシ類、ヨコバイ、ダニ類、カイガラムシ類があげられます。これの対策のために、農家はリンゴ1つ1つに袋をかけたり、「かや」で覆ったり、大変な労力を要します。そんな手塩にかけたリンゴも、台風の「風」によって収穫前に大量落下し、農家に大打撃を与えることがあります。本当にお疲れ様です。
日本にいながらにして、世界のリンゴを見たい。そんな人にお勧めなのが、山形県西村山郡朝日町にある世界のりんご園。詳しくは、http://www12.ocn.ne.jp/~a-ecom/satellite/ringo.htm 面白そうな施設ですね。
さあ、早速スーパーに行ってリンゴを買いましょう〜。
【参考文献・ホームページ】
科学・178の大疑問 (Quark&高橋素子 著 講談社ブルーバックス)
マイクロソフトエンカルタ総合大百科2004
本居宣長記念館 http://www.norinagakinenkan.com/
三水アップルミュージアム
http://www.apple-museum.gr.jp/museum/rekisi.html
木村りんご園
http://www.jomon.ne.jp/~kimura/index.html
りんごやさんのほーむぺーじ 〜信州松本・大上果樹園〜
http://www2u.biglobe.ne.jp/~oue/
リンゴ画像:NOM's FOODS iLLUSTRATED