住民投票とは何ぞや?
今回のテーマは『住民投票』。
この言葉を見た瞬間に、おそらく「あ、今回の原稿はいいや」という人がいると思いますが・・・・。
たまには、こういう政治学ネタもやったって良いじゃないですか。ついていける範囲で読んでくださいよ。うん。
特に意味はないけど、佐賀県庁。 |
民主主義といえば、一般に間接民主制、つまり選挙で議員や首長を選挙で選び、民意を反映させて政治を代行させる形態を指し、代議制とも言う。この制度は17世紀末からイギリス、フランス、北欧などで政党制や、選挙権をどれぐらいの人々に与えるかなど、少しずつ形を変えながら発展し、比較的最近になって世界各国に普及。現在の代表的な政治システムとなった。・・・と、真面目に決めたところで、ここからは、いつものノリで行きます。
ところが、アメリカが「正義」として疑わない間接民主制ではありますが、、
・議員の腐敗
・官僚制や圧力団体との関係、
・議員の政策能力の低さ、つまり馬鹿。などの問題が明るみに・・・。
そんなわけで国民の怒りは爆発・・・・したらそれはそれで良いんですけど、みんなもうどうせ何やったって変わらないとばかりに「無党派層」「政治的無関心」という引きこもり的生活をエンジョイするようになりましたとさ。別にこんな問題は、今に始まったことではないんですけどね。情報公開して政治の実態を、少しだけ暴露しちゃったら、とんでもない物であることが解ったんだよねえ。
そんな中近年、日本では地方レベルにおいては住民投票というものが多く行われるようになり・・・。
おや?議員さんを介さずに政治に参加できるじゃありませんか。これっていったいなんだ?
従来、住民が直接政治に関わる手段としては、一般の選挙で投票する他、議会の解散請求、長・役員の解職請求などが存在しています。が、選挙を除けば一定数の署名を集め、監査委員や選挙監理委員などに提出した上で、有権者が投票するという面倒な手続きがある(もちろん、一部の住民が勝手に権利を乱用しないよう、必要な制度ではあるが)。また、いずれも個別具体的な政策について住民が判断するものではありません。
つーか、一般の人たちには無縁な話。滋賀県の豊郷小改築問題なんて、珍しい例ですね。
ところが近年、1996年8月4日・新潟県巻町において原発を巡っての住民投票や、合併を巡って、各地での住民投票が行われるようになってきました。
簡単に言ってしまえば、個別具体的な問題に対して、住民の皆さんが投票するシステムですね。
とはいえ、その内容や結果は様々で、投票資格は従来の選挙権20歳以上にとらわれず、18歳以上、また永住外国人にも住民投票権を認めた秋田県岩城町の合併を巡る投票、さらに今年5月には長野県平谷村で中学1年にまで、授業と関連して実際に投票に参加させた合併に関する例があります。
また、せっかく住民投票が行われたものの、最初の例である新潟県巻町では民意が無視されてしまいました。別に住民投票は議員や首長を拘束するものではないんです。
また、この住民投票。
基本的には、問題が持ち上がったら、それに対して住民投票を行うという条例を作るんですけど、一過性のものとせず常設型の住民投票を条例で制定したり、年齢についてもあらかじめ投票資格を15歳以上とする条例が佐賀県三瀬村の例、などがあげられます。
で、国政選挙・地方選挙の低当票率が社会問題がする中、こうした選挙の投票率はおおむね好調。
これは決して人々が政治に無関心になったのではなく、身近な問題には引き続き関心が高いことを表しているといえるでしょう。
とはいえ、それでも面倒な人は投票に行かないんですねえ・・・・。こういう人たちには一度、地獄を味合わせて民主主義の大切さを・・・おっと失言でした。
現代の間接民主制には、完全に民意が反映されないという問題点がありました。
そこで、この住民投票は直接みんなの意見が反映されるので、超画期的〜、ですが、そうはいってもいろいろな意味で問題もあり、また批判も寄せられています。
例えば、まだ住民投票は条例で各地が定めるだけであり、国の法律では定められていないという点。
条例というのは、地方議会で作る法律のことです。あくまで、国の法律の下に存在するので、それに反する物を作っては駄目です。
ゆえに、この住民投票条例は、地方自治法に反しない程度というのを基準にしますが、住民投票の位置づけも各地で様々であり、その効力を認めるものもあれば、あくまでも参考程度、どころか形式的にしか受け取らないものもあります。さらに、住民投票をどこまで認めればよいのか、どれだけやればいいのかという問題。
例えば、広島市では秋葉市長が常設型の住民投票所を作ろうとしたことに対し、現在議会が猛反発している。いつでも住民投票が出来る→議員の必要性減少・・という事態に陥りますからね。しかも、秋葉市長と議会は元から仲悪いから、これは両者一歩も引けない。とまあ、この問題はさておき・・。
そこで、代議制と住民投票について考えてみましょう。
そもそも代議制が採用される理由の1つとしては、古代ギリシャの直接民主政が衆愚政治に陥ってしまった事への反省があります。にも関わらず、そもそも住民投票どころか、代表制の普通選挙ですらドイツのヒトラーやイタリアのムッソリーニを生み出してしまった(そのくせヒトラーは議会制民主主義を批判しているんだから・・・・)。さらに、現在はマス・メディアに大衆が影響されやすいのだ、という大衆=愚民的な考え方がぬぐい去れず、直接民主主義的な動きは、未だに敬遠される傾向にあります。
ですが、現在と古代ギリシャや第2次世界大戦期は環境も直接民主制的な要素を支えるための科学技術や教育も違います。まず、議会制を否定するわけではないですが、議員がほとんど役に立たないと言うことが明白になったこということ。あ、さすがに極論かな。でも、議員の大半は政治屋と化し、利益誘導が第一というのが鈴木宗男君が端的に示してくれています。
ここで議会制が敷かれたもう一つに理由を考えますに、おそらく高度な専門的知識を持った人たちが、国民を代表してよい政治を行うという理想があげられる。ところが、その専門的知識が賄賂の受け取り方や、金のなる木を探索する能力ばかりに長ける議員が多く、肝心の政策は官僚に任せることが多い。これでは何の意味もないですね。もちろん、理想に燃えた、立派な議員さんもいますよ。
また、ここが大事!
我々が議員を選ぶ際、その議員の考える政策全てを信頼しているわけではないですよね?
あくまで、例えば安全保障の考え方に共鳴したとして信任したとしても、その議員が考える科学技術の倫理的問題に関する見解には共鳴できなかったり、選挙時には考えられなかった問題が発生した場合も、その議員に一任して良いものだろうかという問題があるのはご承知のことと思います。
また、これまで住民投票みたいな直接民主制がとりづらかった背景には、いちいち個別問題を住民に問うていては、そのたびに票を集計するのが非常に予算も手間もかかったからす。しかし、今後はインターネットによる投票や、常設投票所で電子投票が行うことが可能になりますね。そしたら手間も費用も激減。必要なのは機械の導入費用だけです。まあ、それも結構高いんだけど・・・。
なにも全ての問題を住民投票で解決してしまおうというわけではないですね。
間接民主制を否定しようと言うのではなく、繰り返しになるが選挙時には考えられない問題が出た場合や、住民生活に大きく影響する事案(その線引きが難しいが)について、議会を解散して総選挙をするのではなく、積極的に住民投票制度を導入し、少しでも自分たちも問題は自分たちで検討・解決していくべき、間接民主制を補完することになります。ちなみに、それでも国民(住民)=愚民と考える人は「上手くいくはずがない」と、反対かもしれませんが、それで大失敗を犯してしまった場合には、自分たちで選んだ道であるから、自己責任で処理すればいいこと。
ただ、それでもまだ問題は残るのは事実。
例えば原発設置や産業廃棄物処理場設置の問題ですね。最近両方とも住民投票が多く、よく設置を否決する例が見られます。この2つが必要がどうかについては、ここでは関係ないので書きませんが、しかし住民投票を実施し、地域優先で物事を決めてしまった場合に、国全体から見る視点が欠けてしまう危険性は、さすがにあります。
一方、これに関連するシステムが住民アンケートです。最近、6月16日のことですが、川崎市の阿部孝夫市長が、今年度中の予定だった市営地下鉄「川崎縦貫高速鉄道」(新百合ケ丘―川崎間約21.6km 総事業費6205億円)について住民アンケートを1万人に実施。その結果、40%が延期を希望し、最多であったため、建設を5年程度延期することにしました。
この、議会で決定済みの公共事業がアンケートに基づき変更するという方式はドイツで実施されている制度。日本ではこの他、兵庫県北淡町が合併に関するアンケートを住民に実施しています。
あくまでもアンケートのため、住民投票に比べて議会や行政に対する拘束力は低いのが難点であり、ある意味で利点。だって、現在の住民投票でさえ議会は期待通りの結果が得られないと無視する例も多く、それならば、まずは住民アンケートという形で、全住民じゃなくて一部の無作為で選ばれた住民から意見を聴取、議員が活動の参考にする意味でも、またインターネット投票など、次世代民主主義を支えるシステムの確立までのつなぎとして実施する価値はあると思うし、なにより議会制の崩壊を危惧する議員の顔が立つというメリットがあります。散々住民投票について語ったくせに、ここに来て住民アンケートを是非推薦してみる・・・。
ここまで読んだ人いる?いたらほめてあげます。
さて、現代世界において、大半の民主主義は議会制に基づく間接民主制であり、またアメリカは積極的に他国に民主主義を広めるべく活動をしている。ただ、どうしても完璧な制度というものはなく、日本に限らず、アメリカでも投票率の低下が指摘され、また議員も大した能力のない、ただし組織票に頼った人物が当選するようになり、不祥事も頻発している。これは政治不信を招き、さらに投票率が低下し・・・・と悪循環が起こり、ひいては民主主義は崩壊する危険性もあります。だからこそ、間接民主制、代議制の問題点を補完しながら、少しでも一般市民・住民が直接政治に関わる事の出来るシステムを構築することが必要なのではないか、と思います。
参考文献
デモクラシーの重層化へ(グローバルデモクラシーの政治世界に収録) 杉田敦
神戸新聞 2002年11月13日 津名郡合併
東奥日報 2003年6月7日
長崎県小長井町ホームページ http://www.konagai.org/openpublic/framer04.html