生命三十六億年(2) 冥王代&始生代〜誕生初期の地球〜

○地球の誕生

 生命36億年がテーマですが、そうは言っても地球誕生の話を無視するわけにはいけません。

 ですが、地球の最初期(冥王代)については、その当時の証拠に乏しいこともありよく解っていません。ただし、地球が出来たのは46億年前であると考えられています。これは、地球に出来た頃と同じぐらいの頃に出来た考えられている(地球の核と組成と似ている)隕石を放射性同位体による年代測定法によって測定した結果などに基づいています。

 地球が出来るまでは、まずいくつかの過程を経たと考えられています。
 (1)原始の太陽が出来る過程において、その周りを余ったちりやガスが渦巻いていた。
 (2)やがて、それらが重力により引き付け合い、大小さまざまな隕石となる。
 (3)隕石と隕石が引き付け合い衝突するうちに、どんどん大きくなり、重い元素は中心方向に沈んでコア(核)となり、原始の地球が誕生する。
 (4)隕石の衝突によってドロドロのマグマに覆われていた地表が、衝突が収まりだすと冷え始めて軽い物質がさらに分離し、マントルと地殻の違いが生じる。
 ・・・と、この4段階が考えられています。

○大気と海の誕生

 さて、こうして原始の地球が誕生しますが、そのときは火山がドンドン噴火し、軽い揮発性の気体と蒸気がマントルと地殻からもれでていました。気体は主に一酸化炭素、二酸化炭素と窒素で構成されており、その一部が地球の重力に引かれて、現在の大気の素を形成するようになります。

 さらに、地表が300度に冷えると水蒸気は凝縮して雲となり、雨が降り出します。何日も降り続いた雨は、始めのうちは蒸発していましたが、それが続くうちにマグマの海(マグマオーシャン)が広がっていた地球を冷やすほどの、洪水のような雨となり、その一部は地表の低いところに流れ、海が誕生します。そして薄くなった雲から太陽の姿が現れるのでした。

 こうして、少なくとも約38億年前に水の惑星が誕生するのでした。どうしてこれが解るのかというと、グリーンランドでは約38億年前の地層が見つかっており、そこから火山から噴出したマグマが海水によって冷やされて出来る枕状溶岩と、川によって運ばれた「礫(れき)」(簡単に言えば小石)が堆積して固まった、堆積岩の1種である「れき岩」が見つかっています。堆積する場としては海が必要ですから、海があった証拠の1つとなります。

 この辺りで原始生命が誕生したと考えられ、ここから光合成植物が出現する頃までを始生代と分類します。


れき岩 (生命の星・生命博物館にて)
グリーンランドで見つかった約38億年前の堆積岩の一種「れき岩」。

○生命とは何か?

 では、何をもって生命が誕生したというのでしょうか。そのためには、生命とは何かを定義する必要があります。
 簡単に言ってしまうと、代謝(たいしゃ)と自己複製が出来ることです。代謝とは、食事をしてエネルギーを得て、自らの体を作る営みのこと。また自己複製とは、自らのコピーを作るか、子供を作り子孫を作ることです。

 ちなみにウイルスは代謝を自分自身で行うことは出来ないので、生命ではありません。たとえば人に寄生して、人の細胞を利用して自分を複製するだけだからです。一方、混同されがちですが細菌は代謝と自己複製が出来る生命です。

○最初の生命

 始生代に誕生した最初の生命がどのようなものであったか、またどのように誕生したのかは諸説あってよく解っていませんが、RNAが起源だと考える説と、たんぱく質が起源であるという説の2つが有力です。いずれにせよ、RNAとたんぱく質の両方を膜で包み、代謝と自己複製を始めたのが初期の生命であると考えられています。さらに、遺伝物質としてDNAが誕生し、私たちにつながる現在の生命の祖先が誕生したと考えられています。

 ちなみに最初の生命は酸素を苦手(むしろ毒)として、これを利用できない原核生物でした。そもそも大気自体が、この当時は二酸化炭素に覆われていましたので、無理からぬことです。

 さて、最も古い生命の痕跡はどのように確認されているのでしょうか?

 グリーンランドで見つかった約38億年前の地層に、炭素の塊が発見されました。生物が炭素を取り込むとき、軽い炭素(C12)を多く取り込むことが知られていますので、この炭素の塊は、より多くのC12を濃縮していることから、生命の痕跡なのではないか?と考えられています(もちろん、違うと考える研究者もいます)。

 では、生息場所はどこだったのでしょう。
 深海の熱水噴出孔、波打ち際の塩溜まりような場所の2種類が主に考えられています。どちらも理由としては、化学反応が盛んに起こすことが出来る場所だということです。

○酸素の誕生

 私たちは酸素を取り込んで、エネルギーとしています。しかし先ほども書いたとおり、最初の生命は酸素を利用することが出来ませんでした。それどころか、大気に酸素もありませんでした。その酸素を大気中に始めて放出した生物がいます。それが、シアノバクテリアです。シアノバクテリアは、群体として成長し、層状の岩(ストロマトライト)を形成します。
 
 シアノバクテリアは豊富な二酸化炭素を利用して酸素を放出し続けましたが、初期のころは海中の鉄などと酸素が反応したため、大気中の酸素の量はそう増えなかったと考えられます。大気中の酸素が今のように増えるのは次の時代、原生代になってからのことです。なお、酸素と反応した鉄は現在、オーストラリアなど世界各地の鉱床となって私たちの文明を支える源となっています。


ストロマトライト (国立科学博物館にて)
ボリビア サンタルクス州で産出。


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