生命三十六億年(14) 白亜紀

○今回ご紹介する時代(赤色部分)

累代
開始年代
顕生代 中生代 白亜紀 後期    9960万年前〜
    前期  1億4550万年前〜
    ジュラ紀 後期  1億6120万年前〜
      中期  1億7560万年前〜
      前期  1億9960万年前〜
    三畳紀 後期  2億2870万年前〜
      中期  2億4590万年前〜
      前期  2億5100万年前〜

○白亜紀とは

 白亜紀の名前の由来は、白亜という言葉の意味が白い石灰岩質(チョーク)であることに由来します。ドーバー海峡にのぞむ断崖の地層に良く見られることから、この時代の区分として名前が採用されました。

 この時代は、全体的には非常に温暖かつ湿度が高く、地球史上でも他に例が無いほど海水面が高くなっていました(もちろん、長い時代の中で低い気温の頃もあります)。この海水面が高い理由としては、大陸が現在の形へ分裂させる新しい海嶺が、海底から大きく隆起したのも原因の1つと考えられています。ちなみに、白亜紀の後期には、現在の陸地面積の3分の1以上が海に没しています。

 なお、白亜紀の後期には有名な恐竜の大絶滅が起こります。この大絶滅は多くの研究がなされており、一般的には徐々に恐竜や翼竜の種数が減り、最終的には絶滅したとされています。とどめの一撃として、ユカタン半島の隕石の衝突を重視する説が有力でありますが、白亜紀の後期に活発になった火山活動をはじめとした、地球内部の変動や気候変動が要因だとする研究もあります。

○白亜紀の陸上動物


ティラノサウルス (国立科学博物館「恐竜博2011」にて)

 白亜紀は恐竜の多様化が一気に進んだ時代です。この時代になると、鳥脚類の中でもトサカに特徴のあるパラサウロロフスなどや、三本角のトリケラトプス、石頭恐竜として知られるパキケファロサウルスなどが現れます。獣脚類では、ヴェロキラプトルなど鳥に似た恐竜(たとえば羽毛恐竜)が多数登場します。有名なティラノサウルス類が大型化したのはこの時代です。



トリケラトプス (国立科学博物館「恐竜博2011」にて)

 これらの動物について、分裂した大陸ごとに特徴がはっきりと分かれているのもこの時代の特徴です。特に南米大陸と北米大陸の動物の関係は面白い部分です。はじめ、海で隔てらていた南米大陸は、北米大陸のようなトリケラトプス、ハドロサウルスのような鳥脚類ではなく、ティタノサウルス類の竜脚類が主に繁栄していました。
 
  ティタノサウルス類は、尾椎の前が膨らんでいて、尾椎の後ろがお椀状なのが特徴で、こうして尾椎と尾椎がつながるときに、ちょうど「はまる」ようになっています。下写真のシンヘノサウルスのように、アジアでも生き残っています。また、白亜紀後期には南米から北米へ、さらに他の地域へ再び広がったと考えています。


シンヘサウルス (幕張メッセ「恐竜2009砂漠の奇跡」にて)
アジアのティタノサウルス類としては最大級の全長24m。骨の構造から原始的なティタノサウルス類と考えられています。

 また、恐竜以外の動物についても多様な種類が生まれています。明らかに鳥類が多様化しているのが、この時代の特徴でしょう。化石等の状況から、このころに現在の鳥類の祖先が出揃ったものと推測されていますが、これについては今後の更なる研究が待たれます。一方で、エナンチオルニス類のように白亜紀に絶滅したものも多くいます。



ケツァルコアトロス (日本科学未来館「世界最大の翼竜展」にて)

 翼竜類は、大型のものが発展します。ジュラ紀で繁栄したランフォリンクス類ではなく、プテロダクティルス類の翼竜が中心です。プテロダクティルス類は首が長く、尻尾が短いので直ぐにわかると思いますが、他にも頭にトサカを持つことが特徴です。この中には有名なプテラノドンのほか、史上最大の翼竜である、ケツァルコアトロスが白亜紀の後期に登場しています。



レペノマムス (幕張メッセ「世界最大の恐竜博2006」にて)

 哺乳類は細かく見ると区分が複雑なので、敢えて単純化して書きます。

 まず、コアラの祖先である有袋類が、この時代に登場。子供をお母さんの腹の中(子宮)で妊娠してから出産し、お腹の袋で子育てを行います。そしてここから、有胎盤類が登場します。これは我々自身を想像して頂ければわかりやすいのですが、子宮である程度大きくなるまで、お母さんから胎盤を通じて栄養をもらってから出産するものです。

 ちなみに特徴的な哺乳類としては、恐竜を食べる体長1mの哺乳類であるレペノマムスが挙げられます。




ハチ類 (国立科学博物館にて)

 それから昆虫類では、ミツバチやアリなどの社会性のある昆虫の祖先が見つかっています。この理由としては、この時代の植物に花が咲くようになったことが大きな要因でしょう。また、上写真のようにゴキブリもいます。まあ、これは3億年の歴史を持っておりまして、なんと石炭紀から棲息しているのですが・・・。

○白亜紀の海洋動物


モササウルス (ロンドン自然史博物館にて)

 それから海洋動物では、既に三畳紀から見られる傾向ではありますが、陸から海に戻って進化を始めた動物が出てきました。白亜紀で代表的なのは、肉食海棲爬虫類の1つであるモササウルス。白亜紀中ごろに、陸で生活するオオトカゲ類の一種が、ヨーロッパで海で生活するようになり、大型化したものです。同じ頃に絶滅してしまった魚竜類に変わり、当時の海の捕食者となりました。

 
 首長竜においては、首が伸びに伸びて体長の半分以上を占めるようになったエラスモサウルスが登場します。また、頭の大きなプリオサウルス類も栄えていました。



マウソニア (北九州市立 いのちの たび博物館にて)
ブラジル セアラ州アラリベから発掘。シーラカンスの仲間では最大で、3mになるものも。
ちなみに、全身標本はこれが世界唯一。いのちのたび博物館の大きな見所です。

 魚類では、上写真のような肉鰭類(にくきるい)が棲息していたほか、現世魚類に非常に近い真骨魚類が多様化。さらにアンモナイト類も多様化し、いわゆる異常巻きのアンモナイトが出現します。

○ジュラ紀の植物

 白亜紀には被子植物が登場し、後期になると多様化していきます。針葉樹もマツ類などが多くなり、いよいよ、現代のような植物相へ発展していきます。また、被子植物の登場により、花が本格的に登場。最初は1mm〜2mmという実に小さな花でしたが、白亜紀後期には現在のような構造で、美しい姿の大きな花となっていきます。ちなみに最初期の花はモクレンのようなものであったようです。

 これらは、花粉を媒介するようになった昆虫と一緒に進化したものと考えられています。



グレイケニーテス (国立科学博物館にて)
ロシアで発掘されたこの時代のシダ類。

○白亜紀の大陸


 白亜紀は、いよいよ現在見られる形の大陸の原型が出来上がっていきます。それでも、オーストラリアは南極大陸とほぼくっついていたほか、インドがマダガスカルとくっついた形でアフリカ南東部にいます。また、海面が高いために北アメリカは真ん中部分が海となっており、現在のメキシコから北極海にかけて大きな海路がありました。
 

○白亜紀末の大量絶滅

 白亜紀の最後(6550万年前)には、もっとも有名な大絶滅が起こります。いわゆる恐竜の絶滅です。白亜紀(Cretaceous)と第三紀(Tertiary)の境で起こったことから、K-T境界の大絶滅とよく呼ばれます。なぜC−T境界の大絶滅といわないのかというと、Cで始まる地質年代は多いため間際らしいからです。そのため、ドイツ語でいう白亜紀、Kreideの頭文字を使っているのです。

 もっとも、現在では、第三紀という区分はなくなっています。それらは、古第三紀(Paleogene)と新第三紀(Neogene)に分けられてしまいました。このため近年の展覧会などでは、K-P境界の大絶滅などと違う表現を使うようになっています。
 
 この絶滅では恐竜のほかにも、翼竜、首長竜、モササウルス類、アンモナイトなどが絶滅しています。現在、生き残っているグループでも鳥類や有袋類は全体の75%の種類が絶滅するなど、かなりの打撃を受けています。一方で、魚類や他の爬虫類は比較的被害は少なく、たとえば魚類は全体の15%の絶滅でとどまっています。
 
 この絶滅の原因として、有力とされているのが隕石の衝突による核の冬です。この時期、隕石が衝突したのは確実です。現在のメキシコ、ユカタン半島から当時のチュチュルブクレーターが発見されているからです。また、K-P境界の地層にはイリジウムが多数存在します。これは、地表にあまり存在しておらず、隕石由来、もしくは火山由来と考えられています。

 この隕石は世界中に粉塵をばら撒き、太陽光がさえぎられたと考えられています。また、北米には直接衝撃波を受けてしまった地域もあったようです。これに始まる環境変動から、恐竜が絶滅したと考えられています。他に恐竜絶滅に関連していると考えられているのは、インドのデカン高原を作った活発な火山活動などです。また、長期的な環境変動自体がこの大量絶滅に影響しているという学者もいます。 


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