485系特急形電車


鉄道博物館へ先頭車+中間車の2両が保存された485系0番台。最盛期をイメージした雰囲気となっている。(撮影:裏辺金好)

●基本データ

デビュー年:1964(昭和39)年
元・保有会社:国鉄・JR東日本・JR西日本・JR九州
最高速度:140km/h(青函トンネル内のみ 通常は120km/h)
元・使用列車:いしかり、はつかり、白鳥、つがる、かもしか、つばさ、こまくさ、やまびこ、ひばり、たざわ、あいづ、ビバあいづ、あいづライナー、くびき野、いなほ、鳥海、やまばと、ひたち、日光、きぬがわ、能登、はくたか、北越、雷鳥、しらさぎ、つばめ、はと、北近畿、有明、かもめ、みどり、にちりん、ひゅうが、きりしまなど
運行区間:なし

●特急型電車の代名詞、北は旭川、南は鹿児島まで活躍

 特急の代名詞とも言える、国鉄の記念すべき車両。国鉄最多両数の特急電車グループであり、交直流電車として、函館から鹿児島まで、あらゆる場所に足跡を残し、ボンネット型から非貫通型まで各種の顔つきが存在することもあって、ファンが特に多い車両である。

 1964(昭和39)年、向日町運転所(現、吹田総合車両所京都支所)に41両が新製配置され、同年12月より特急「雷鳥」(大阪〜富山)、特急「しらさぎ」(名古屋〜富山)という2つの新たな北陸本線の特急に投入され、その歴史を開始した。最初に投入されたのは481系と呼ばれるグループで、先頭車は上写真と同様のボンネット型。151系、181系のイメージを引き継いだ先頭車が特徴だった。なお、481系のモーター車は60Hzのみの対応で、東日本地域では運転できない。

 そして翌年、今度は東北本線の特急「ひばり」(上野〜仙台)、特急「やまびこ」(上野〜盛岡)でも運転を開始。このとき投入されたのは、483系と呼ばれるグループで、先頭車や付随車の大幅な変更は無いものの、モーター車が50Hz(ヘルツ)にのみ対応したものに変更された。

 さらに1968(昭和43)年、50Hz,60Hzの双方に対応したモーター車が登場。ここから485系と呼ばれるグループが誕生し、いよいよ全国にその活躍を広げることになる。こうして、長年にわたり製造、運用されたため、485系は色々な顔が登場している。

 大きく分けると、以下のようになる。
 まず、最も人気の高いのが、181系のフォルムを受け継ぐボンネット型(写真上)。0番台と、そのマイナーチェンジ車両である100番台の2区分が存在。先頭車については現在、0番台がJR東日本で鉄道博物館での保存車両として1両、九州鉄道記念館で1両(*もとグリーン車のクロ481−5)の、計2両が残る他は、100番台は全て引退し、現存しない。また、中間車両から改造されたものや、九州では先頭車不足を補うため、181系から改造された車両も2両存在した。

 1972(昭和47)年に登場した200番台の先頭車は、ボンネットスタイルから脱却。分割、併合を視野に入れ、583系に似た前面貫通形となった。しかし、実際に先頭車の扉が営業で使われたのは少数例にとどまり、JR九州所属車に良く見られるように、腐食防止のために開閉部が溶接されてしまった車両も数多く存在する。

 さらに1974(昭和49)年からは、非貫通型の300番台と、同じデザインながら北海道での運用に備えた1500番台が登場。基本デザインは200番台と同様ながらも、貫通扉方式を廃止し、前面のトレインマークも一回り大きくなった。また、1976(昭和51)年には、300番台をベースに、山形などでの耐寒運用に備えた1000番台が登場した。この他にも多数の顔や番台区分があるが、細かい差異の解説については別ページで紹介する。

 さて、JR発足後は大量に国鉄から承継した485系の活用が課題となり、JR各社で様々な改造や塗装変更が実施され、多くのバリエーションが誕生した。特に、JR西日本の特急「スーパー雷鳥」用パノラマグリーン車、JR九州の赤い485系、さらに、JR東日本の特急「はつかり(→白鳥、つがる)」「北越・いなほ・はくたか」用3000番台やJR東日本のジョイフルトレイン改造車のように、一見したところ同じ車両と思えないようなものもある。

 また、1991(平成3)年の七尾線電化開業にあわせて、特急「北近畿」(現「こうのとり」)として運用されていた福知山電車区の485系の交流機器を113系改造車へ供出するために、直流専用の183系700番台、800番台に改造された車両が登場。1996(平成8)年、2004(平成16)年にも追加投入され、山陰本線京都口の特急運用(特急「きのさき」「はしだて」「たんば」「まいづる」)などにも運用されていたが、2013(平成25)年3月30日、31日に団体臨時列車て「なつかしの北近畿」としての運転を最後に、全車が引退した。

 2011(平成23)年3月改正では、特急「雷鳥」運用と、JR九州内の全定期運用を終了。2015(平成27)年3月14日改正では特急「北越」、快速「くびき野」「あいづライナー」、2016(平成28)年3月26日改正で特急「白鳥」が廃止されたことから、ついに183系や485系3000番台への改造車も含めて、全ての定期特急運用から離脱した。

 2016(平成28)年6月18日・19日に仙台車両センター所属の485系A-1/A-2編成(国鉄色)がラストランを行い、2017(平成29)年3月4日改正で、最後の定期運用だった新潟〜糸魚川間の快速から3000番台が引退。残る485系は改造車であるジョイフルトレインのみとなっていたが、2022(令和4)年12月11日に「リゾートやまどり」が引退したのを最後に、すべての485系が運行を終了している。

▼カラーバリエーション


 2003年9月で消えたボンネット型(485系100番台)。JR西日本に所属した一部の車両は、このようにヘッドライトカバーが取り外され、さらにスカート部分が大きく欠きとられていた。
(写真:特急雷鳥 新大阪駅/撮影:裏辺金好)

485系200番台。ボンネット型の0番台、100番台に続くもので、先頭車は583系に似た貫通型と呼ばれるタイプ。上写真は、京都総合車両センターのA09に組み込まれる、クハ481−228。
(写真:特急雷鳥 山科駅/撮影:デューク)

485系300番台。200番台を基本のデザインとして、貫通扉をやめて非貫通型となったタイプの先頭車を持つ。このスタイルは耐寒設備を強化した1000番台も同様。
(写真:特急雷鳥 塚本駅 ※送り込み回送/撮影:裏辺金好)

300番台と同様のスタイルながらも、運転台上の2灯ライトが特徴的な1500番台。
(写真:特急みのり 牟礼駅/撮影:裏辺金好)

九州地区のボンネット型先頭車は、ヒゲがないのが特徴(上の方の写真と比較のこと)。151系、181系と同様の塗装であり、ある意味で正当派。なお、485系投入初期などでヒゲ付きの車両が運転されたことはある。
(写真:特急みどり・かもめ 博多駅/撮影:もこてん 禁転載)

JR九州に2両存在した181系からの改造先頭車(クハ481−501)。後ろに従える485系より屋根が低いことに注目!(写真:特急みどり 博多駅/撮影:もこてん ※禁転載)

特急「はつかり」(現在は特急「白鳥」「つがる」)の485系3000番台。大規模なリニューアルが実施され、前面がFRP製マスクを使用したものに交換され、印象が大幅に変わった。
(写真:特急白鳥 津軽今別駅/撮影:裏辺金好)

奥羽本線の特急「かもしか」で運用された秋田・青森地区の485系。
3両編成が基本だが、多客期には非貫通型同士で2編成を併結することもあった。
(写真:特急かもしか 新青森駅/撮影:裏辺金好)

1988年10月に登場した特急「北越」「いなほ」用の塗装。かつては特急「雷鳥」として大阪まで運用されていたこともあった。
(写真:特急いなほ 西袋〜余目/撮影:裏辺金好)

上沼垂運転区のボンネット車も塗装変更がされていた。現在は全車引退している。写真は、JR東日本で唯一所属していた100番台のボンネット車。
(写真:特急雷鳥 大阪駅/撮影:関西ライナー様 禁転載)

新潟車両センターの485系のうち、3000番台化された車両。青森車両センターのものと同様、大幅なリニューアルが行われている。
(写真:特急いなほ 金塚〜中条/撮影:リン)

2005年夏に運用された、新宿始発の特急「あいづ」用車両。運用終了後は、東武鉄道直通用の車両に再改造されている。(写真:特急あいづ 会津若松駅/撮影:デューク)

485系の運用縮小が続く中で、なんと新宿始発の定期特急として登場した「日光」「きぬがわ」用の車両。東武鉄道へ直通する。2011年6月3日で運用を終了。
(写真:特急きぬがわ 新宿駅/撮影:裏辺金好)

「日光・きぬがわ」離脱後、2012年2月より快速「あいづライナー」用に舞い戻ってきた。塗装はそのままに、「あかべぇ」などのイラストを添付。(写真:快速あいづライナー 会津若松駅/撮影:裏辺金好)

2002年12月改正で消えた特急「ビバあいづ」用の車両。山形新幹線400系にあわせ、シルバーメタリックを基調とした塗装だった。(写真:特急ビバあいづ 郡山駅/撮影:裏辺金好)

ビバあいづ運用から引退後、4両編成に短縮されてビバあいづに関するロゴが一部省略されて首都圏で活躍を開始した。
(写真:中央本線 国立駅/撮影:裏辺金好)

 上野始発としては2006年以降、毎年夏に運用されていた特急「あいづ」用の「あかべぇ」塗装。通常は快速「あいづライナー」として会津地区で活躍しているが、2011年6月に国鉄色に戻され、塗装は消滅。(写真:特急あいづ 黒磯駅/撮影:裏辺金好)

 2004年に登場した、勝田車両センターの波動用(臨時・団体列車用)485系新塗装。側面にはイルカのイラストと485EXPRESSの文字が。
(写真:ぶらり鎌倉号 北鎌倉駅/撮影:裏辺金好)

特急「ひたち」運用末期はオリジナル塗装が施された。ボンネット型先頭車の場合、特急シンボルマークを撤去したものも一部存在。(写真:特急ひたち/撮影:Amarube13様 禁転載)

特急「ひたち」オリジナル塗装。(写真:特急ひたち 柏駅/撮影:Amarube13様 禁転載)

JR西日本の特急「かがやき」「きらめき」用塗装(現存せず)。
(写真:特急かがやき 長岡駅/撮影:daikiti)

JR西日本が「はくたか」用に用意した485系は、山陰本線の183系に似た新塗装が採用されていた。現在では見られない。
(写真:特急はくたか 富山駅/撮影:Amarube13様 禁転載)

特急「スーパー雷鳥」用としてJR西日本が登場させたパノラマグリーン車の先頭車両。後に「しらさぎ」、さらに「雷鳥」へ転用され、その都度塗装変更が行われている。
(写真:特急スーパー雷鳥 新大阪駅/撮影:裏辺金好)

特急「スーパー雷鳥」から特急「しらさぎ」に転用されたパノラマグリーン車。転用にあわせ塗装変更が実施された。しかし、活躍は短く683系が投入され、今度は「雷鳥」へ戻ることになり、国鉄色に変更されている。
(写真:特急しらさぎ 名古屋駅/撮影:裏辺金好)

元「スーパー雷鳥」「しらさぎ」パノラマグリーン車は、後に国鉄特急色となって特急「雷鳥」として活躍していた。(写真:特急雷鳥 新大阪駅/撮影:裏辺金好)

特急「スーパー雷鳥」塗装。
(写真:特急スーパー雷鳥 京都駅)

しらさぎ色の非パノラマ車の顔。
(写真:特急しらさぎ 米原駅/撮影:裏辺金好)

貫通扉が簡易改造となった先頭車による特急「スーパー雷鳥」塗装。
(写真:特急スーパー雷鳥 新大阪駅/撮影:裏辺金好)

上写真の車両は、後に国鉄色に戻されている。
(写真:特急雷鳥 比叡山坂本駅/撮影:ひょん君)

スーパー雷鳥分割編成用に改造されたクモハ485形200番台。
(写真:特急スーパー雷鳥 金沢駅/撮影:国鉄車両好 禁転載)

クモハ485形200番台は後に「しらさぎ」へ転用され国鉄色に。
(写真:特急しらさぎ 富山駅/撮影:amarube13様 禁転載)

クモハ485形200番台も、「しらさぎ」運用末期には塗装変更された。
(写真:特急しらさぎ 米原駅/撮影:裏辺金好)

JRになってようやく、クハ481形200番台も貫通構造を活かした使い方に。相方は先頭車改造されたクモハ485形200番台。こちらはスーパー雷鳥塗装として登場した当時の姿。写真の運用は色々あって「加越」に入ってますが・・・。
(写真:特急加越 金沢駅/撮影:CH様 禁転載)

スーパー雷鳥運用離脱後、やはり「しらさぎ」に投入。後に塗装も「しらさぎ」色に変更された。「しらさぎ」撤退後、これらは183系となって、特急「まいづる」「はしだて」で2011年3月まで活躍した。
(写真:特急しらさぎ 米原駅/撮影:裏辺金好)

485系から改造であるJR西日本の183系800番台。最初に特急「北近畿」用に改造されたグループの塗装は、国鉄特急色に側面窓下へ細い赤いラインを一本追加した。
(写真:特急きのさき 鍼灸大学前〜胡麻/撮影:裏辺金好)

山陰本線京都口電化に併せて追加で誕生した、485系から改造された183系800番台用の塗装。いずれも山陰本線の特急「北近畿」「まいづる」「きのさき」「文殊」「たんば」で運用されていたが、2011年3月改正で引退。
(写真:特急たんば、文殊 福知山駅/撮影:裏辺金好)

こちらは非貫通型の先頭車。
(写真:特急文殊 天橋立駅/撮影:裏辺金好)

JR九州の485系で、一般的なレッドエクスプレス色。 赤一色に、様々なレタリングが施される。主に、特急「にちりん」「きりしま」で運用されていたが、2011年3月改正で引退。
(写真:特急にちりん 別府駅/撮影:デューク)

JR九州の赤い485系塗装のうちの1つ。特急「みどり」用のMIDORI EXPRESS塗装。
(写真:特急みどり 博多駅/撮影:裏辺金好)

 「ハウステンボス」色を3両編成用にアレンジした「きりしま・ひゅうが」色。両列車のほか、特急「にちりん」でも運用されていた。
2011年3月改正で引退。(写真:特急きりしま 宮崎〜南宮崎/撮影/裏辺金好)

「きりしま&ひゅうが」色のうち、みやざきフラワーフェスタPRのステッカーが貼られた車両。写真は2002年当時のもの。(写真:特急にちりん 宮崎空港駅/撮影:投稿写真 ※禁転載)

 「きりしま&ひゅうが」色のうち、みやざきフラワーフェスタPRのステッカーが貼られた車両。写真は2006年当時のもの。(写真:特急きりしま 霧島神宮駅/撮影/裏辺金好)

 一時消えていたが、九州新幹線開業に併せて復活した特急「きりしま」専用塗装。基本的に赤が大好きなJR九州の中で、なんと緑一色が異彩を放っている。2010年に国鉄色に戻されて消滅。
(写真:特急きりしま 鹿児島駅/撮影:裏辺金好)

2000年にJR九州で復活した国鉄色塗装。しかし、目(?)の部分までは復元されなかったため、異彩を放っている。
(写真:特急みどり 佐世保駅/撮影/裏辺金好)


特急「かもめ」のカモメエクスプレス色は、JR九州で最初に登場した赤色塗装で、窓枠の黒も特徴だった。RED EXPRESS色に統一され、最初に消滅した塗装である。
(写真:特急かもめ 撮影場所不明/撮影:デューク)


特急「ハウステンボス」運用から「きりしま」「ひゅうが」運用に転用された車両は、当初はハウステンボスロゴを消した状態で運用されていた。
(写真:特急きりしま 西鹿児島駅*当時/撮影:武蔵野通信局  禁転載)

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