1918(大正7)年8月12日開業。人口170万の都市を走る路面電車である。
西4丁目〜すすきの の8.5kmの袋状の路線で、終点どうし近い距離にあるにもかかわらず、微妙に隣接していない。かつては札幌市のかなりの部分を運行していたが、地下鉄開通に伴い大半の路線が廃止(現在、最盛期の3分の1)。国鉄(→JR)札幌駅への運転ももなくなってしまった。
なお、厳密には1条線、山鼻線、山鼻西線から成り立つ。車両は全車、緑色をベースにした塗装に身をまとい、大変良いイメージ。
一部には新型車両も投入されているものの、大半は製造後約40年の車両で老朽化が著しい状況。さらに、一時期以外は必要はないとはいえ全車非冷房。また、厳寒地である以上、どうしても停留所で電車を待つのは苦しい。もう少し、雪風が入らないような停留所を作る必要性がある。
さらに、路線は殆どが住宅地を走り繁華街も終点で少しだけ接する程度。最低限、環状線化、出来ることならかつてのように札幌駅への直通に期待したい。なお、路線の存続は正式に決定され、札幌駅前乗り入れを含めた延伸について本格的な検討に入っている。
1913(大正2)年6月29日開業。
湯の川〜函館どっく前、湯の川〜谷地頭の2路線、10.9kmを持つ(最盛期は8路線17.9km)。函館市は人口30万弱と少ないが、写真を見ても解るように観光資源にも恵まれ(五稜郭などにも行ける)、路面電車は繁華街も経由し、さらに湯の川には字から解るように温泉もあり、沿線の条件には比較的恵まれている。
また、函館ハイカラ号とよばれる古い路面電車も復元運行。
均一運賃ではなく、距離によって運賃が変わるため、観光客には不便。同時に、運賃支払いに時間がかかるため、必然的に各停留所での停車時間が長くなり、スピードダウンに繋がっている。
なお、湯の川から2km先が函館空港であり、本来であれば路線の延伸に期待したいところだが、函館空港自体にそれほど活気がないのが残念なところ。
(撮影:大黒屋介左衛門様)
1913(大正2)年9月1日開業。
富山県内で営業する私鉄・富山地方鉄道による路面電車。自社鉄道線の駅である南富山駅前から大学前までの6.4kmで、運転間隔は約4〜5分と短く、全車冷房でサービスも良い。また北陸新幹線建設に伴う富山駅高架後は、後述する富山ライトレールとの接続がほぼ決定であり、さらに環状線化に向けて工事に着手。
なお、路線は正確には本線、支線、安野屋線、呉羽線に分類されるが、今ではあまり意味はなくなっている。
富山駅、南富山駅と隣接するなど、比較的環境に恵まれてはいるが、6.4kmの路線はやや短い。また、駅と直結しているわけではないため、雨が降っている日などの移動は面倒(ただし、富山ライトレールと接続すれば、この問題はほぼ解決出来ると思われる)。
富山市は圧倒的な車社会でありながら、公共交通の活性化に積極に取り組んでおり、路面電車の路線延長、さらには富山大橋以遠の複線化まで進行中。各地で路線の延長計画などが実質的に立ち消えになる中、既に具体的に着手していることから、今後に大きく期待したい。
2006(平成18)年に開業した、新しい路面電車。
JR富山港線を転用し、一部は新設の道路併用軌道となった。日本で初めて、全車両が超低床車両(LRV)となった路線で、新鮮な雰囲気を与えるのは間違いない(なお、一部報道では日本初のLRTとされているが、LRT=LRVではなく、先進の事例として広島電鉄があるため、この表現は適切ではない)。北陸新幹線建設に伴う富山駅高架化後は、富山地方鉄道市内線との直通を予定している。
また、終点の岩瀬浜ではバスとホーム上で接続している(写真右下)。
注目される取り組みとしては、平成19年3月31日までの間
(1)平日の「富山駅北又は岩瀬浜駅発時刻が9:00から16:31」の電車
(2)土・日・祝日の電車
の普通旅客運賃を半額とし、大人運賃は100円となっていたこと。これで多くの人に富山ライトレールを利用する、という選択肢を認識させることに成功した。ちなみに、ICカードである「passca(パスカ)」を利用すれば運賃2割引。65歳以上の富山市民を対象とした「シルバーパスカ」は、日中100円で乗車可能。
早期に富山地方鉄道との直通運転による、市街地乗り入れを期待したい。幸い、開業景気が過ぎ去った後も利便性が評価されて乗客が多い状態には変化なし。実に頼もしい。
(撮影:武蔵野通信局)
1915(大正4)年7月21日開業。
ただし、2002(平成14)年より加越能鉄道から、第三セクター・万葉線株式会社へ運営が引き継がれた。これに伴い、超低床車両の導入、運賃を50円単位に解りやすくするなどの施策で、乗客数の減少にようやく歯止めをかけた。
実質的に1路線ではあるが、高岡軌道線・高岡駅前〜六渡寺7.9km、新湊線・六渡寺〜越ノ潟4.9kmの2路線、合計12.8kmで、正確には前者が路面電車であり、後者は、ほぼ鉄道線同様の専用軌道を走る。
急速に改善が進み出した万葉線。これまで全車非冷房だったものが、超低床車両(愛称:アイトラム)の導入に伴い、当然冷房車が増加。しかし、全体的に運転本数がやや少なく、しかも路盤が悪いため、よく揺れるので改良が求められると同時に、停留所に屋根をつけるなどの改善が求められる。その際にデザインにもこだわって欲しい。ともあれ、第三セクター「万葉線」という形で官民で路面電車の再生に取り組む姿は感動的でさえある。
なお、北陸新幹線は高岡駅のはるか南に新高岡駅を設置する予定。既存の高岡駅前の中心市街地が空洞化する危険性があり、その際に万葉線は再び存続の危機になるのではないか。最終的にはJR城端線、JR氷見線も含めた総合交通ネットワーク体制の確立が求められるだろう。
1924(大正13)年2月22日開業。
福武線(ふくぶせん)21.4kmで、うち3.3kmが路面を走る。従来、車両の殆どが(数十年前から使われた)鉄道用の大型車両だったが、2005(平成17)年より廃止になった岐阜の路面電車の車両を導入し、急速に路面電車化を進めた。ミニ広島電鉄といった雰囲気へ脱皮しつつあり、現在は大型車両は僅かな車両を残すのみ(ちなみに旧塗装復活など、鉄道ファン泣かせの施策も・・・)。鯖江市、越前市と結ぶ都市圏交通として、今後の再生に期待したい。
この原稿を初掲載した時点で、大型車両で路面の乗降は苦しく、LRT化が求められると書いたが、まさか岐阜から路面電車用車両をまとめて導入するとは想像できなかった。写真左上の超低床車両を始め、車両はいずれも新しい。これまでの車両から大幅な若返りが図られた。
鉄道線では県営駐車場によるパークアンドライドも実施されており、環境改善へ着実に布石を打っている。この後は、やはり朝ラッシュ時を除けば1時間に2本か3本しかないダイヤを改善し、せめて毎時15分間隔、可能であれば10分間隔にし、待たずに乗られる体制を構築して欲しい。