恐竜・翼竜ガイド(5)恐竜の骨格
○部位だけの骨
幕張メッセで開催された「恐竜博2012」、非常に見ごたえのある展示でした。世界最大のフアシアオサウルスの重そうな図体には、度肝をぬかされましたね。しかし、フアシアオサウルスや羽毛恐竜のほかに、印象的だったのがこれでもかと展示されていてズケンゴサウルス。後半の展示スペースの半分を占めていたのではないかと思ってしまうほどです。その中には、肋骨などそれぞれの部位の骨格も存在していました。普段、ふーん程度で見送ってしまう展示ですが、今回に限らず毎年なんらかの化石の部分骨格が展示されています。今回はこれら部分骨格を楽しむために、魅力を徹底解説いたします。
(なお、書籍や論文等によって骨の名前は若干異なることがあります。)
1.こういう骨こそ本物
全体がわからない、大きく見えない、まあ触れるからよしと思い勝ちな部分骨格ですが、こういうものこそ、本物の化石です。よくあるでっかい全身骨格は、ない部分を推定で埋めた復元モデルでもあります。全身丸々みつかるなんて珍しいもの。本物は部分骨格なんです。2.部位に着目してみよう
恐竜の頭骨。ティラノサウルスなどは隙間だらけ。かむときに骨にかかる力をクッションのように和らげているという説もあります。すべて紹介してもきりがないですので、ざっと紹介します。
歯が生えている上顎骨の他に、頭骨は沢山の種類の骨や部位から構成されています。
上顎骨(じょうがくこつ)・・・歯のついている部分
外鼻孔(がいびこう)・・・鼻の穴。ディプロドクスなどは、頭の上にあります。
前眼窩窓(ぜんがんかそう)・・・眼窩の前にある穴。恐竜とワニなどを含む主竜類の特徴。
眼窩(がんか)・・・・・目の穴。
外側頭窓(がいそくとうそう)・・・目の後ろの穴で、顎の筋肉のつくスペースを確保。恐竜とワニなどを含む主竜類の特徴。
歯骨(しこつ)・・・下顎で歯の突いている部分。
代表的な部位はこの程度ですが、もっと細かく紹介すると、以下のような分類があります。
ちなみに今回はティラノサウルスを例にしましたが、恐竜によって若干の差異があります。
頚椎(けいつい)・・・首の脊椎(せきつい)。上に盛り上がる突起は棘突起(きょくとっき)。下で紹介する脊椎全てにも、存在します。
頚肋骨(けいろっこつ)・・・頚椎から突き出た骨
頚椎のうち、1つを例にとりますと、穴が開いている部分を脊髄が通ります。椎孔(ついこう)といいます。下の丸い部分で前の骨と連結します。
胴椎(どうつい)・・・胴の脊椎
肩甲骨(けんこうこつ)・・・肩の骨。腕を動かす筋肉がつくので、発達しています。
烏口骨(うこうこつ)・・・人間では失われている肩の骨。
上腕骨(じょうわんこつ)・・・二の腕の骨
写っている2つの骨のうち、上の骨が肩甲骨(けんこうこつ)。これはズケンゴサウルスのものですが、恐竜によって太さや大きさは実に様々です。
腕から手の先にかけて拡大してみました。細かく分類すると、このようになります。
上腕骨から橈骨と尺骨までが腕の骨、中手骨から末節骨までが手の骨です。なお、橈骨は「とうこつ」、尺骨は「しゃっこつ」と読みます。
なお、あまり復元されることがないのですが、本来はこのように、腹肋骨(ふくろっこつ)があります。
さあ、続いて腰の部分を見ていきましょう。
仙椎(せんつい)・・・腰の脊椎。写真では腸骨の背後に隠れていますが・・・。
腸骨(ちょうこつ)・・・腰の骨
恥骨(ちこつ)・・・こちらも腰の骨で、前を向いていると竜盤類、後ろを向いていると鳥盤類です。
坐骨(ざこつ)・・・こちらも腰の骨。
大腿骨(だいたいこつ)・・・太ももの骨
先ほどの写真だと、恥骨の形が全て写っていないので、改めて。
こちらはズケンゴサウルスの腸骨(ちょうこつ)。
ズケンゴサウルスの大腿骨(だいたいこつ)。大きな溝がありますね。生きていたときは、ここに筋肉が通ることになります。
脛骨(けいこつ)・腓骨(ひこつ)・・・脛(すね)の骨。
距骨(きょこつ)・踵骨(しょうこつ)・・・合わせて足根骨といいます。
中足骨(ちゅうそっこつ)・・・足の骨
趾骨(しこつ)・末節骨(まっせつこつ)・・・指の骨
こちらはズケンゴサウルスの腓骨(ひこつ)。
尾椎(びつい)・・・尾の脊椎で、横から突起が出ています。
血道弓(けつどうきゅう)・・・尾椎から出ている骨。
こちらはズケンゴサウルスの尾椎(びつい)。
以上、ティラノサウルスとズケンゴサウルスの骨格を中心に骨の各部位を観察していきました。皆さんもぜひ、恐竜関連の展示を見学する際には、以上を念頭に骨の1つ1つにも注目していただければ、さらに面白く感じられると思います。