リニア・鉄道館〜愛知県名古屋市港区〜


 「リニア・鉄道館」は、2011(平成23)年3月14日に愛知県名古屋市港区金城ふ頭に開館したJR東海直営の鉄道博物館。浜松市天竜区で同社が営業していた「佐久間レールパーク」の実質的な後継施設で、「高速鉄道技術の進歩の紹介」「鉄道が社会に与えた影響について学習する場を提供」「楽しく遊べるよう模型などを活用し、バリアフリーを徹底した設備」の3点をコンセプトとしており、39両の鉄道車両が展示されています。
 なお、先に開館したJR東日本の鉄道博物館や、後に開館したJR西日本の京都鉄道博物館と異なり、営業用線路とはつながっておらず、また最寄り駅はJR東海の路線ではなく、あおなみ線となっています。また、開館当初展示されていた300系新幹線(量産車)の先頭車(323-20)は、2013(平成25)年12月27日に公開を終了し、解体。翌年1月2日から700系新幹線の先頭車(723-9001)に展示が変更されています。
(撮影&解説:裏辺金好 ※特記を除く)

○地図



○シンボル展示室


2階から眺めたシンボル展示室
左からC62 17号機、955形新幹線試験電車(300X)、MLX01形。


C62形蒸気機関車 C62 17号機
 1948(昭和23)年、日立製作所製。1954(昭和29)年12月に東海道本線木曽川橋梁において、国内の狭軌蒸気機関車の最高速度記録である129km/hを達成。晩年は名古屋市の東山公園に保存されていました。


955形新幹線試験電車(300X) 955−6
 1995(平成7)年に次世代の新幹線車両を開発するために登場させた試験車両。博多方と東京方のそれぞれの先頭車で形状が異なっているのが特徴で、300Xの愛称が与えられています。1996(平成8)年に東海道新幹線米原〜京都間でリニアを除く日本最速記録である443.0km/hを達成。955−6はその際の先頭を務めた車両で、引退後はJR東海浜松工場に保存されていました。なお、反対側の先頭車である955−1は、滋賀県米原市の鉄道総研風洞技術センターで保存されています。


MLX01形リニア車両 MLX01−1
 1996(平成8)年に山梨実験線に導入されたリニアの試験車両第1編成。2003(平成15)年12月に世界最速の581km/hを達成。その後、2005(平成17)年の愛知万博(愛・地球博)においてJR東海のパビリオンで展示された後、名古屋市港区において腐食試験が行われていました。

〇車両展示室(新幹線)



全景
現在の姿と開館時点での陣容。(写真1枚目はネオン撮影)



0系新幹線電車 21−86/36−84
 言わずと知れた新幹線の代名詞、0系。リニア・鉄道館では車両展示室の中央に2両連結された状態で展示されているほか、車両展示室の奥にも中間車が2両保存されています。なお、全てJR東海の浜松工場に保存されていました。



0系新幹線電車 36−84(車内)
36−84は食堂車で、厨房を備えます。


0系新幹線電車 37−2523
1983(昭和58)年製。ビュッフェ車です。



922形新幹線電気・軌道総合試験車 922−26
 922形は「ドクターイエロー」の愛称でお馴染みの車両で、1999(平成11)年に0系が東海道新幹線から引退した後も、検測などで東海道新幹線を走行していた唯一の0系タイプの顔でした。展示されている先頭車はJR西日本に所属していたT3編成のもので、1979(昭和54)年製。2005(平成17)年に引退した後は同社の博多総合車両所で保存。「リニア・鉄道館」の開館に合わせてJR東海に譲渡されました。
 ちなみにJR東海が保有していたT2編成は、1974(昭和49)年製。T3編成と異なり、側窓が大きかったほか、連結器カバー(鼻の部分)が白く塗られていました。



100系新幹線電車 123−1
1985(昭和60)年に登場し2階建て車両を連結したことで有名な新幹線車両。リニア・鉄道館では先頭車と共に、2階建て車両も連結されて保存されている。




100系新幹線電車 168−9001
リニア・鉄道館では先頭車と共に、食堂車として使われた2階建て車両も連結されて保存されています。


300系新幹線電車 322−9001
 1990(平成2)年に登場した新幹線車両。新幹線の最高速度を270km/hに引き上げるために車体の高さを低くする、パンタグラフに大きなカバーを取り付けるなど騒音対策を行ったのが特徴。写真は量産先行試作車で、量産車とは車体形状などが異なっており、先頭の台車付近が膨らんでいる、運転台窓の形状が違う、前面ライトのガラスの形が角ばっているといった差異があります、。2001(平成13)年以降、N700系開発のための各種試験に使用され、2005(平成17)年に引退。その後はJR東海浜松工場に保存されていました。

300系新幹線電車 323−20
 300系新幹線の量産車。こちらの方が通常見慣れた300系で、開館当時は現役でしたが、急速な勢いで全車が引退。そして、展示されていたこの車両までもが、700系の展示保存に伴い、スペースを譲るために撤去され、解体されてしまいました。ちなみに、新幹線の清掃業務を行う関西新幹線サービックで清掃訓練車としてJ46編成が使われているとか。一般には見ることができませんが、唯一残る300系量産車です。

700系新幹線電車 723−9001
 1997(平成9)年製造。700系新幹線の量産先行試作車ですが、300系と異なり量産車との差異はノーズ部分が量産車の9.2mより約70cm短い8.5mであることなど。

〇車両展示室(機関車)


ケ90形蒸気機関車 ケ90
 1918(大正7)年大日本軌道鉄工部製。東濃鉄道(現在の太多線)が開業時に導入した軌間762mmの軽便鉄道規格の蒸気機関車。東濃鉄道時代はA形蒸気機関車1号機を名乗っていたが、国有化と同時にケ90に改番された。引退後はJR東海社員研修センターに保存されていました。一部がカットされた状態になっています。

C57形蒸気機関車 C57 139 【準鉄道記念物】
 1940(昭和15)年、三菱重工神戸造船所製。C57形は「貴婦人」の愛称で名高い蒸気機関車。戦後の名古屋機関区における、お召し列車牽引指定機であり、リニア・鉄道館においてもお召し装飾を施されて保存されています。以前は、JR東海社員研修センターで保存されていました。

ED11形直流電気機関車 ED11 2
 1923(大正12)年、アメリカのゼネラル・エレクトリック社製。東海道本線電化用に登場した機関車で、登場当初は1010形という形式名で、後に称号改正によってED11形となりました。引退後は浜松工場の入換用として活躍し保存。その後、佐久間レールパークに保存されていました。

ED18形直流電気機関車 ED18 2
 1924(大正14)年、イギリスのイングリッシュ・エレクトリック社製の輸入電機。当初は1040形を名乗っていましたが、称号改正によりED50形に、その後の度々の改造でED17形となった後、ED18形に落ち着き、飯田線を中心に活躍。引退後は浜松工場→佐久間レールパークと保存されるが、1991(平成4)年にトロッコファミリー号用の牽引機として復活。2005(平成17)年に再引退し、浜松工場で保管されていました。

EF58形直流電気機関車 EF58 157
 EF58 157は1958(昭和33)年、三菱重工製。東海道本線全線電化に伴う、輸送力増強のために投入された機関車で、ファンからは「イゴナナ」の愛称で親しまれており、晩年は「トロッコファミリー号」の牽引に充当されていた。引退後は浜松工場で保管。


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