展示室全景
多くの車がズラリと並べられている。
ベンツ パテント モートルヴァーゲン *レプリカ(1886年・ドイツ)
世界初のガソリン自動車といわれているベンツの3輪車。が、登場当時の世間の評価は低かったという。
とはいえ、この自動車からガソリン自動車時代の幕が上がった。
モートルヴァーゲンのエンジン
エンジンの回転をベルトでギアに伝え、チェーンを介して後輪を駆動させる。
ベンツ ヴェロ (1894年・ドイツ)
ベンツ最初の4輪車「ヴィクトリア」を小型化したもの。史上初の量産型車で、フランスやアメリカにも輸出された。フライホイールを垂直にセットしたエンジン、プーリーとベルトによる2段変速ができ、時速21kmで走行した。
ド ディオン ブートン 1 3/4HP (1898年・フランス)
自転車を改造して小型エンジンを取り付けた3輪乗用車。安定性・乗員数が増やせない関係から3輪だったのは初期だけだったようで、直後に4輪車へと仕様を変更した。
パナール ルヴァッソール B2 (1901年・フランス)
馬車や自転車の延長で、まだ「馬なし馬車」の域であった当時の自動車の中で、フロントエンジン・リアドライブ(FR)方式を採用した初の自動車。数多くの自動車レースで活躍し、FR方式を普及させるきっかけとなった。
オールズモビル カーブドダッシュ (1902年・アメリカ)
アセンブリーライン(ライン生産)による大量生産を可能にした初の自動車。車体の前のボードが丸くカーブしていることが名前の由来になっている。
ベイカー エレクトリック (1902年・アメリカ)
ガソリン自動車が普及し始めても、アメリカではガソリン自動車をつくるためにロイヤリティを支払わなければならないことから、長い間電気自動車の開発が続いていた。しかし、静かで排ガスもなく、始動時にクランクを回す必要のないという電気自動車の利点は女性に人気であった。ベイカー
エレクトリックは、1馬力のモーターで時速40kmの走行が、1回の充電で80kmの走行が可能である。
イソッタ フラスキーニ ティーポT (1908年・イタリア)
イタリアの伝説的最高級車で、4輪ブレーキ・SOHC8気筒エンジンを搭載し、1908年のタルガフロリオレースで優勝するなど、モータースポーツで大活躍した。
スタンレー スチーマー モデルE2 (1909年・アメリカ)
1897年よりスタンレー社は蒸気自動車の開発を始め、改良を加えながら大成功を収めた。スタンレー
スチーマーは静かで振動も少なく、その上高速性もあった(当時の世界記録、時速205kmを出している)が、ガソリン自動車の台頭により衰退していった。
フォード モデルT (1909年・アメリカ)
ベルトコンベア式の大量生産によるコストダウンや運転を簡素化するメカニズムの搭載で、自動車の大衆化にこれ以上なく貢献した自動車史に欠かせない一台。19年間の総生産数は1500万台以上であり、世界中で空前の大ヒットとなった。
イスパノスイザ アルフォンソ]V (1912年・スペイン)
史上初の本格的スポーツカーといわれる車で、優れた性能と軽快な操作性を持つ。イスパノスイザはスペイ王室と深い結びつきがあり、この車もスペイン王アルフォンソ13世に王妃が贈り物としたことが由来となっている。
フォード モデルT シャシー (1917年頃)
フォードモデルTのシャシーは合理的で簡潔かつ軽量であり、約19年間、基本設計を変えずに使用され続けた。このシャシーは、1915(大正4)年頃に創設された日本初の自動車教習所「東京自動車学校」で教材として使われていたもの。
ロールスロイス 40/50HP シルバーゴースト (1910年・イギリス)
ロールスロイスの最大の傑作とされる高級車。テスト走行でグラスゴー〜ロンドンをノンストップで延べ15,000マイル走行し、ほとんどトラブルを発生させないまま走破。この時のボディの銀色の塗装と幽霊のごとく静かでスムーズな走行性から「シルバーゴースト」と呼ばれるようになった。
キャデラック モデルサーティ (1912年・アメリカ)
瞬間的に24Vのパワーでモーターを回すセルフスターティングモーターを装備し、女性でも作動しやすくなった。また、電気式ヘッドライトを標準装備したのも大きな特徴である。
ルノー タイプDJ (1913年・フランス)
無骨なラジエーターに代わって流線型のボンネットを採用し、前方視界を確保した。高級なリムジンボディを持ち、馬車時代の名残で運転室と客室が分離していた。
ブジョー ペペ (1913年・フランス)
エットーレ・ブガッティが設計した大衆向けの小型車。ユニークな機構やかなり小さなエンジンを搭載している。3年の間に3000台以上も生産された。
スタッツ ベアキャット シリーズF (1914年・アメリカ)
アメリカのスポーツカー史に欠かせない名車。ベアシャシーの上にバケットシートと枕型のガソリンタンク、スペアタイヤを装備しただけの簡素でワイルドなスタイルが人気だった。
シボレー シリーズ490 (1918年・アメリカ)
フォードモデルTに対抗してつくられた大衆車。モデルTよりも扱いやすい3段ギアボックスを採用し、整備性の高いOHVエンジンを搭載した。これらにより、1910年代後半にはモデルTを脅かすまでになった。
デイムラー タイプ45 (1920年・イギリス)
イギリス最古の自動車会社デイムラーの超豪華車で、豪華なボディと大排気量のスリーブ・バルブ・エンジンによる静かな走行性により、長い間イギリス王室や各国の上流階級が愛用していた。ちなみに、写真の車はインドのマハラジャが使用していたもの。
モーガン エアロ (1922年・イギリス)
単純で頑丈なバックボーンシャシーの先端にオートバイ用のVツインエンジンを取り付けた大衆向け3輪スポーツカー。後輪をチェーン駆動する方式・スライディングピラー式前輪独立懸架など極めて簡単で軽量な構造であるため、運動性・経済性に優れている。
シボレー スぺリア シリーズK (1925年・アメリカ)
シリーズ490よりもよりパワフルによりスムーズにするために改良を続けてきたもの。1927年にはモデルTの生産台数を追い抜く。
シトロエン 5CV タイプC3 (1925年・フランス)
「フランスのフォードでありたい」と語ったアンドレ・シエトロンのヒット作。大型車の機能・構造をそのままスケールダウンしており、フランス大衆車の源流となった。日本ではその個性的な形状から「セミ」と呼ばれた。
ミネルバ 30CV タイプAC (1925年・ベルギー)
世界中の王族・大富豪に愛用されたベルギーの名車。特にアメリカでは、上流階級やハリウッドスターにとってステータスとされていた。女神のマスコットと美しい曲面のラジエータシェルが印象的。
ブガッティ タイプ35B (1926年・フランス)
エットーレ・ブガッティの生み出した、世界中を驚嘆させ量産レーシングスポーツカーとして大成功を収めた傑作車。エットーレの独創的な芸術センスだけでなく、ホイールやシャシーといったメカニズムにおいても注目のできる一台。なおタイプ35Bは、スーパーチャージャー付きの高性能車。
ブガッティ タイプ35B (1926年・フランス)
側面の様子。
フォード モデルA (1928年・アメリカ)
モデルTのフルモデルチェンジ車で、主な変更点はギアシフト方式の3段トランスミッションや4輪ブレーキなどである。また、スタイルは上級車のリンカーンに似せており、これが人気となった。ちなみに、モデルAの登場は1927年の10大ニュースにランクインされるほどの大きな出来事であった。
イスパノスイザ 32CV H6b (1928年・フランス)
世界初のサーボ付き4輪ブレーキ・OHCヘッドを持つ軽合金エンジンなどの航空機技術が採り入れられた。しゃれたボディが取り付けられ、プレスティッジカーの頂点に立った。
デューセンバーグ モデルJ (1929年・アメリカ)
アメリカ最高のコーチビルダーが架装したボディとレーシングカー並みの性能が特徴。写真の車は有名なデュアルカウルスタイルのモデル。
アルファロメオ 6C1750 グランスポルト (1930年・イタリア)
ヴィットリオ・ヤーノの傑作のひとつ。スーパーチャージャー付6気筒DOHC・1752立方cmの軽快なエンジンで数多くのレースで名を馳せた。特に、ミッレ・ミリアでは史上初の平均時速100km以上で走破し、見事優勝している。
ベントレー4 1/2リットル (1930年・イギリス)
高速・長距離走行のための耐久性・信頼性を重視し、大型ボディ・大排気量エンジンを装備。1920年代にル・マン24時間レースを4回も制覇し、世界にその名をとどろかせた。
シボレー コンフィデレイト シリーズBA (1932年・アメリカ)
フォードとの競争激化の中で、6気筒エンジンやキャデラック V16に似せた外観を施し、高級化させた。装備やインテリアも充実しており、大型高級車との違いは大きさだけ。「ベビーキャデラック」と呼ばれ親しまれた。
フォード モデル40 (1934年・アメリカ)
ライバルであるシボレーの6気筒に対抗して、V型8気筒エンジン(V8)を採用。V8の利点はパワフル・スムーズ・コンパクトであり、丸みのあるボディとハート形の傾斜したグリルを持ち、流線型の兆しを見ることができる。
シボレー マスター シリーズDA (1934年・アメリカ)
V型ラジエータグリル・クロムメッキ部品・流線型をイメージした低めのボディ・前輪駆動懸架を採用した画期的なモデル。直6型エンジンは性能が優れており、トヨダAA型にも影響を与えた。
メルセデス ベンツ 500K (1935年・ドイツ)
1927年登場し、数々のレースで活躍したSシリーズの後継モデル。スーパーチャージャー付き直列8気筒OHVエンジンと前輪独立懸架を持ち、またデザイン面でも洗練された、バランスの優れた超豪華ツアラー。
デ ソート エアロフロー シリーズSE (1936年・イタリア)
前車軸の真上にエンジンを置き重量配分を変えたことで拡大した室内、モノコック構造に近いボディ、そして流線型デザインなどあらゆる点で画期的なモデル。だが、あまりに先進的だったので結局は失敗に終わった。
フィアット500 【トッポリーノ】 (1936年・イタリア)
「トッポリーノ」の愛称で親しまれた500ccの小型車。小さいボディながら十分な居住スペースを確保し、フロント独立懸架や4輪油圧ブレーキなどの大型車と同等のメカニズムを搭載していた。
ランチア アストゥーラ ティーポ 233C (1936年・イタリア)
1931年に登場したアストゥーラは1933年にエンジンを大型化、1935年以降はピニン・ファリーナなどが魅力的なボディを装架し、高級スポーツカーとなった。
コード フロントドライブ モデル812 (1937年・アメリカ)
「変わった車は売れる」との持論を持つ実業家コードが開発したモデル。ラジエータをエンジンルームに収め、前輪駆動、リトラクタブル式ヘッドライト、負圧を利用したギアチェンジを採用した。
ロールスロイス 40/50HP ファンタムV (1937年・イギリス)
長い間蓄積させた航空機技術を応用したV12気筒エンジンを搭載。また、前輪独立懸架の採用、ラジエーターを前進させたことで乗り心地と室内スペースの広さを向上させた。
リンカーン ゼファ シリーズHB (1937年・アメリカ)
前開きのエンジンフード、ボディに埋め込まれたヘッドライトなど非常に洗練された流線型デザインを持ち、たちまち人気の的になった。そのスタイリングはフォルクスワーゲンにも影響を与えた。
モーリス エイト シリーズT (1937年・イギリス)
当時のイギリスでは経済的に乗ることが実用車の本質とされ、オーナーが自分でメンテナンスできることが重要視された。そのためか、他の欧州車と比べると単純なメカニズムで大きな進歩はなかった。このモーリス
エイトもそんな車のひとつである。
シトロエン 11B (1937年・フランス)
初の前輪駆動方式(FF方式)採用の量産車。FF方式により低重心ボディの設計が可能になり、他にもワイドトレッド、モノコックボディ、前輪駆動懸架などの革新的メカニズムも採用。これらによる安定性や乗り心地はとても優れていた。
フォルクスワーゲン 38 プロトタイプ *レプリカ (1938年・ドイツ)
ヒトラーの掲げた「国民車構想」にポルシェ博士の企画が採用されて登場。流線型ボディ、4輪独立懸架、空冷水平対向4気筒エンジン、リアエンジン方式は当時のドイツでは画期的な設計だった。販売は一定額を積み立てていく貯蓄販売方式が採られたが、第2次世界大戦の影響により終戦まで国民にはほとんど渡らなかった。
キャデラック シリーズ60スペシャル (1938年・アメリカ)
実用性を考慮して流線型を応用した最初のモデル。トランクルームを採用し、現代の3ボックスセダンの基本になった。また、コラムシフト方式を採用したことでも有名である。
パッカード トゥレルヴ 【ルーズベルト専用車】 (1939年・アメリカ)
信頼性と静粛性の高い12気筒のエンジンと格式高いロールソンが装架した優雅なボディを持つアメリカの名車。第32代アメリカ大統領ルーズベルトの専用車であり、装甲車並みのボディ、防弾ガラスを装備している。
ドラージュ タイプD8−120 (1939年・フランス)
ドラージュはレースで活躍した後に高級ツーリングカーや豪華サルーンをつくるようになった。D8−120は一番後期に属する最も美しいモデルで、超一流のコーチビルダー、フィゴーニとファラッシの作品。
フォード モデルGPW 【ジープ】 (1943年・アメリカ)
軍用偵察や連絡を目的に開発された小型4輪駆動車。実用車本来の姿と言える合理的・経済的な車体構造は戦後の自動車づくりの基本となった。
キャデラック シリーズ60 スペシャル (1948年・アメリカ)
キャデラック初の戦後型のモデル。フロントガラスに曲面ガラスを世界で初採用している。後部のテールフィンは双胴戦闘機の尾翼をヒントにしたもので、後に大流行することになる。
タッカー ’48 (1948年・アメリカ)
斬新なデザインと安全対策などの先進的技術で前評判が高かった自動車だったが、開発資金難や訴訟問題などでわずか51台が生産されただけで会社は倒産してしまった。
ポルシェ 356クーペ (1951年・ドイツ)
ポルシェ博士の息子、フェリー・ポルシェが開発した高性能・実用的なスポーツカー。フォルクスワーゲンのエンジン・サスペンションをベースにしている。
メルセデスベンツ 300SLクーペ (1955年・ドイツ)
レーシングカーを市販車化したもので、スペースフレーム構造とガルウィングドアが特徴。また、燃料噴射を初採用した。SLは、軽量スポーツカーを意味するドイツ語からきている。
フォード サンダーバード (1955年・アメリカ)
V8エンジンも搭載できるスポーティで高級なスペシャリティカーとして登場。取り外し可能なファイバーグラス製のハードトップを標準装備している。
オースチン ヒーレースプライト (1958年・イギリス)
バイク小屋に置けるくらい廉価で、オースチン7の後継車としての性能を持ったスポーツカー。
オースチン ヒーレースプライト (1958年・イギリス)
動物の顔のような機器配置をしており、イギリスでは「カエル目」、日本では「カニ目」という愛称で親しまれた。
キャデラック エルドラドビアリッツ (1959年・アメリカ)
6m近い巨大なテールフィン、 デュアルヘッドランプ、多くのクロームメッキ部品、V8
6.4リッター345馬力エンジン、エアサスペンションを搭載。豪華さと快適さを極めた、1950年代末のアメリカを象徴する自動車。
キャデラック エルドラドビアリッツ (1959年・アメリカ)
テールフィンの様子。
ジャガー Eタイプ (1965年・イギリス)
高性能、洗練されたスタイル、割安な価格で、15年間で7万台以上が生産された。ロングノーズ、ショートデッキは後のスポーツカーに大きく影響した。