第1回 1945年〜54年(1):国際連合の成立
○今回の年表
1945年 | 3月 | 西アジア | アラブ連盟結成 |
5月 | ヨーロッパ | ドイツが降伏。第2次世界大戦のヨーロッパ戦線が終結。 | |
6月 | ヨーロッパ | ドイツが東西に分割占領。西側は英米仏、東側はソ連の占領下へ。 | |
8月 | 全体 | 日本が降伏し、太平洋戦争が終結。 | |
8月 | 東南アジア | インドネシア共和国、ベトナム民主共和国が独立宣言。朝鮮が南北で分割占領。 | |
8月 | 朝鮮半島 | 朝鮮が南北で分割占領。 | |
10月 | 全体 | 国際連合発足。 | |
11月 | 中国 | 国共内戦が始まる。 | |
12月 | 東南アジア | 第一次インドシナ戦争勃発。ベトナム民主共和国、ラオス王国、カンボジア王国の独立を巡りフランスと現地抵抗勢力が抗戦(1954年まで) | |
1946年 | ヨーロッパ | イタリアが共和国に移行。 | |
7月 | 東南アジア | フィリピンがアメリカから独立。 | |
1947年 | 3月 | アメリカ | トルーマン・ドクトリンを発表。 |
6月 | ヨーロッパなど | マーシャルプラン(ヨーロッパ経済復興援助計画)提唱。 | |
7月 | ヨーロッパなど | パリでヨーロッパ経済復興会議が開催。 | |
8月 | インド周辺 | インド連邦、パキスタンがイギリス自治領として独立。 | |
9月 | ヨーロッパなど | ソ連を中心としてコミンフォルムが結成。 | |
10月 | 全体 | 関税と貿易に関する一般協定(GATT)調印。 | |
1948年 | 3月 | ヨーロッパ | 西ヨーロッパ連合条約(ブリュッセル条約)が結ばれる。 |
6月 | ヨーロッパ | ベルリン封鎖。ソ連政府が西ベルリンに向かう全ての鉄路と道路を封鎖する。 | |
8月 | 朝鮮半島 | 大韓民国が成立(大統領:李承晩) | |
9月 | 朝鮮半島 | 朝鮮民主主義人民共和国が成立(首相:金日成) | |
1949年 | 東南アジア | インドネシア連邦共和国が成立。 | |
1949年 | 東南アジア | フランスがベトナム国を樹立(主席:バオ=ダイ)。 | |
1949年 | 9月 | ヨーロッパ | ドイツ連邦共和国(西ドイツ)が成立。 |
10月 | ヨーロッパ | ドイツ民主共和国(東ドイツ)が成立。 | |
10月 | 中国 | 中華人民共和国が誕生する。(主席:毛沢東、首相:周恩来) | |
1950年 | インド | インド共和国が成立(首相:ネルー)。 | |
6月 | ヨーロッパ | 朝鮮戦争勃発(〜1953年) | |
1951年 | 4月 | ヨーロッパ | ヨーロッパ石炭鉄鋼共同体(ECSC)条約調印。 |
9月 | 全体 | サンフランシスコ講和会議が開かれ、日本と各国が講和条約に調印。 | |
9月 | アメリカなど | 太平洋安全保障条約(ANZUS)が結ばれる。 | |
1952年 | 中東 | エジプト革命が起きる(翌年、エジプト共和国宣言)。 | |
1952年 | 11月 | アメリカなど | マーシャル諸島で水爆実験を実施。 |
1953年 | 3月 | ソ連 | スターリンが死去。フルシチョフが第一書記に就任。 |
7月 | 朝鮮半島 | 朝鮮休戦協定が成立。 | |
1954年 | 7月 | 全体 | ジュネーブ会議が開かれ、インドシナ休戦協定が締結。 |
10月 | アメリカなど | 西側9カ国会議(パリ協定調印、西ドイツの主権回復、NATO加盟を決定)。 | |
11月 | 中東 | アルジェリア独立戦争。 | |
11月 | 中東 | エジプト第2次革命。ナセルが実験を掌握。 |
○はじめに
このコーナーでは第2次世界大戦後の世界の歴史をまとめて取り扱っていきます。日本、アメリカ、ソ連については個別に現代史を執筆していますが、それ以外のエリアについては原則、この現代史コーナーにおいて御紹介します。各回、概ね10年単位ぐらいで見て行きますが、テーマによってはもう少し先まで見た方が良いもの、さらに全体の流れの中で一気に理解した方が良いものなど色々ありますので、時代の区切りは目安として考えていただければ幸いです。それでは、今回は第二次世界大戦後の出発点となる、国際連合の発足から見ていきましょう。
○国際連合前夜
第一次世界大戦後に発足した国際連盟は、主要国が加盟していなかったり、全会一致を原則とした意思手続きなどにより、集団安全保障体制の維持に失敗し、第2次世界大戦を阻止することが出来ませんでした。そのため、既に第二次世界大戦中から新たな国際組織の発足が目指されました。1941年8月、米英共同宣言(大西洋憲章)がアメリカのフランクリン・ルーズベルト大統領(1882〜1945年)と、イギリスのウィンストン・チャーチル首相(1874〜1965年)によって出され、この中で「いっそう広汎かつ恒久的な一般安全保障制度の確立」への言及がされます。さらに1942年1月に26カ国の署名による連合国共同宣言でも、これに触れられました。
ウインストン・チャーチル
さらに1943年10月、アメリカ、イギリス、ソ連、中国がモスクワ宣言(一般安全保障に関する4カ国宣言)を採択し、第4の原則に「できるだけ早い時期に、すべての平和愛好国の主権平等の原則にもとづく普遍的国際機構の創設」を定めました。
続いて第2次世界大戦終了直前の1944年7月には、アメリカ合衆国のニューハンプシャー州ブレトン・ウッズで開かれた連合国通貨金融会議に44カ国が参加してブレトン・ウッズ協定が結ばれ、国際通貨基金(IMF)と、国際復興開発銀行(IBRD)を創設することが決定されます。
ここで決まったことは非常に重要なことです。
というのも、1930年代に世界恐慌が発生したとき、各国が輸出拡大を狙って通貨の切り下げ競争を始めたり、植民地間で貿易を囲い込むなどブロック経済圏を作って世界経済が混乱し、第二次世界大戦を招いた原因の1つとなりました。これを繰り返してはいけません。
そこで、IMFは為替(かわせ)相場の安定を目的とし、各国の為替規制の撤廃を促進し、必要に応じて短期的な資金の供給を行います。ちなみに当時は1ドル=360円に固定されるなど、固定相場制を採用していましたが、1973年からは市場に為替レートをゆだねています。え〜・・・、おかげさまで2012年1月31日現在で1ドル=76円なんですが・・・。
一方でIBRDは世界銀行とも呼ばれ、長期的な資金の供給を行います。当初は、加盟国全体の経済復興を促進する銀行でしたが、現在では発展途上国の経済開発を通じて、世界経済の安定と発展を目的としています。ちなみに、姉妹組織に国際開発協会、国際金融公社、多国間投資保証機関、国際投資紛争解決センターがあり、世界銀行グループと呼ばれています。
IMFもIRBDも本部はワシントンに置かれています。
○国際連合発足へ
そして1944年8月〜10日、アメリカのワシントン郊外にあるダンバーストン=オークスで、アメリカ、イギリス、ソ連、中華民国が会談を行い、国際連合憲章の草案を取りまとめます。1945年4月、サンフランシスコ会議が開かれ、50カ国が参加して国際連合憲章が採択。そして同年10月に国際連盟に代わって、国際連合(United Nations)が発足しました。
・・・国際、という言葉が入っているのは日本語訳ならでは。実際には、どこにもInternationalなんて単語はねえっす。
○国際連合の組織とは?
こうして発足した発足した国際連合は、目的を国際平和を維持し、経済、文化、教育の発展を助け、基本的人権を擁護し、紛争の原因を取り除くことが目的とし、常設の国際機関として活動を開始します。本部はニューヨークに置き、その意思決定は全加盟国で構成される総会の多数決で運営されます。なるほどなるほど、今度の国際組織は、何でもみんなの多数決で決めるのですね?
・・・いやいや、そう簡単な話ではありません。
アメリカ、イギリス、フランス、ソ連、中華民国は、重要事項には自分たちの意志が強く反映される組織を作りました。
それが、安全保障理事会。
国連は、前の国際連盟とは異なり、国際平和を脅かすような事態が発生したとき、時には武力行使をしてでも紛争を解決するのですが、こうした安全保障の問題を協議し、決定するのは総会ではなく、安全保障理事会に委ねられました。ここで決まったことは、全加盟国を拘束します。
この安全保障理事会は、アメリカ、イギリス、フランス、ソ連、中華民国に5大国による常任理事国と、総会で選ばれた6カ国(→1965年から10カ国)による非常任理事国(任期2年)で構成。常任理事国のみ拒否権が与えられ、一カ国でも反対すると、決議が出来なくなります。
ただし、この時期はアメリカとソ連の対立が激化した時期。拒否権合戦で、安全保障理事会が機能不全になることが想定されました。このため、1950年に開かれた総会で、安全保障理事会のいずれか9理事国の請求、または加盟国の過半数の請求で緊急特別総会を開催できることが決定されました。
また、世界的な活動を行う専門機関も整備。一部は国連発足前からあります。以下、その一例です。
・ILO(国際労働機関)・・・1919年から存在。労働条件の改善、雇用の確保、社会的進歩、生活水準の向上が目的。
・FAO(国連食糧農業機関)・・・栄養・生活水準を向上させ、世界の食糧と農産物の生産・流通の改善を目指す。
・UNESCO(国連教育科学文化機関)・・・教育の万民への普及、教育を通じた平和文化の確立、国家間の自由な情報交流と報道・出版の自由などを目的
・WHO(世界保健機関)・・・病気や衛生などについて、助言ないし技術援助を世界的に行う。
・IBRD(国際復興開発銀行)・・・これは先ほど紹介。
・IMF(国際通貨基金)・・・これも先ほど紹介。
・・・などなどなどなどなど・・・・。
これらは各々独立した組織ですが、国際連合憲章第63条の規定に基づいて、国際連合経済社会理事会との間で協定を締結し、国際連合と連携して活動を行います。
第2次世界大戦後は、戦前に増して国際的な機関が数多く整備され、国家間で様々な問題を討議したり、世界的な問題に対応できるよう、各国間の情報共有が迅速に行えるようになりました。また、これから紹介していきますが、地域間で経済的な協力組織が出来たり、また軍事面においても多国間での集団安全保障体制が構築されていきます。
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