はじめに・東南アジアの初期国家概論
ここで扱う東南アジアという地域は「ベトナム、ラオス、カンボジア、フィリピン、カンボジア、タイ、ミャンマー(ビルマ)、ブルネイ、タイ、マレーシア、シンガポール」です。今のASEANと同じ区分です。
この東南アジアという地域は、今では単純に一括りされますが、歴史的、文化的に見ればヴェトナムなど東方を中心とする
中国文化の影響圏と、ミャンマーなど西部を中心とする、
インド文化の影響圏に別れ、さらに宗教から見ると大陸部の仏教圏、インドネシア周辺島々の
イスラム圏(元々は仏教圏。またフィリピンでは後にカトリック圏になる)に分類することが出来ます。そして、東南アジアを構成する民族。歴史的、言語的観点からは、大きく次の3つにわけられます。
1つが、東南アジアに最も古くから住んでいる民族、
モン・クメール語族です。
これは、今のヴェトナムやカンボジアの原住民、モン族が代表です。
2つめが、紀元前2000年頃より中国の華南地域より船に乗って南下して来た人達がいます。これが、
マライ・ポリネシア語族で今のマレーシア、インドネシア、フィリピンの原住民、それからチャム人です。チャム人は今では少数民族ですが、かつてはチャンパーという大きな国を建てています。これはあとで見ましょう。
3つめが、それらよりかなり遅れて9〜13世紀頃に、今の中国雲南省・貴州省より南下してきた人達、
シナ・チベット語族です。この民族は今のタイ人、ミャンマー(ビルマ)人を形成しています。
さて、東南アジアの歴史を見ていく前にもう一つ注意しておかなければらならないことは、この地域の歴史を探る参考となる手がかりが、
中国や、この地を訪れた人が書いた歴史書と
各地域に遺された碑文・遺跡を検討しながら研究しなければならないことです。そのため、例えば同じ国でも、文献で出てくる国名の呼称が違ったり、そもそも同じなのか違うのか、そういった点を考えなければならないことです。
ですから、東南アジアの歴史について研究するのは非常に難しいのです。以下に述べるのも、あくまで今のところ考えられていることであり、今後、また大きく塗り替えられる。そういうことは十分に予想されます。