第三話 原付は二度死ぬ

○教習所にて

  免許をとった。

 親の車の保険の契約を変更してもらって車に乗れるようになったものの、家の前の道が車一台がなんとか通れるくらいの広さしかしかなったので、車に乗る事はまずなかった。


 また友人が車を買った際に、原付に乗らなくなるからくれてやるといってきたが、別に欲しくもなかったので断った。


 余談だが、学校の友人にも夏休みに免許を取りに行った者がいて、話を聞くと、原付教習でうまく原付にのれない人がいたという。運転が上手くないというのではなく、上手く乗れない、つまり、バランスがうなくとれないのだ。彼がいうにはその人は自転車に乗れないらしい。


 原付は自転車に比べると速度もでて重量もあるぶん、バランスがとりやすい。だから、自転車に乗ることができるのならば、原付に乗ることは難しくはない。しかし、自転車に乗れないと原付が自転車よりもバランスがとり易いとはいえ、バランスをとらないと乗れないわけだから、上手くのれないというのも合点がいく。


 自転車に乗れてよかったな・・・と思った。


 免許をとった夏の終わりごろだったか、父がどこからともなく原付スクーター・ヤマハのジョグをもってきた。シートはところどころ破れており、機体自体もいたんでいた。


 父に話を訊くと「呑み会のおり、知り合いの家に今はもう使わなくなった原付が放置してある」という話を聞いたため、いらないのなら譲ってくれと言ったそうだ。相手も置いてあっても使うことはない(処分しようと思っていたくらい)のでタダでくれたそうだ。


 だが、外に放置されていたので機体は全体的にいたみ、さらにエンジンがかからなかった。そこで父はバッテリーに電気をおくりこみ、バッテリーを復活させた。バッテリーに電気が充電され、スタートボタンを押すと原付は起動した。


 走行距離は9500キロをまわっていたが、バッテリー以外に特に問題はないようだった。


 原付の任意保険料は車の任意保険とセットにでき、任意保険料を余分にとられることがない(ファミリーバイク保障という枠がある保険だった)ということもあり、私の日常の足として使えるように、持ってきて修理したそうだ。


 だが、依然として原付に興味のない私が乗るはずもなかった。


 結局、原付を持ってきたはいいが、ほとんど乗らなかった(最初に父に言われて乗ったくらいか?)。のざらしにさせとくのもなんなんでということで、父はバイクカバーを買ってきて、被せておいてくれていたが、バイクカバーを外して原付にのることはなかったのだ・・・。


 そして月日は流れる・・・。



棒