第四話 炸裂!ライダーキック!

○サルベージはしたものの・・・

 父が原付をサルベージしたものの、私は全く乗っていなかった。

 自動車の運転も全然しておらず乗り物を操縦するということに興味はなかったのと、公道を走るのが恐かったので、原付に乗る気はおきなかった。


 免許をとって半年が過ぎたころだったか? 下宿先から友人が帰ってきて一緒に遊ぶことになったのだが、友人は原付に乗って遊びにいこうといってきた。


 友人も私も原付を持っている。自転車でいくのは大変だし、車は持っていないのでだせない(例え保険が無制限になっている親の車が家にあっても絶対に車でいこうとはいわないだろうが)。


 ことわる理由もないので、原付のカバーを何ヶ月ぶりかに外し、スターとボタンを押す・・・。


キュルルルル・・・


「!?」
 変な音がした・・・。エンジンがかかるような力強い音ではない・・・。

「バッテリーあがってるら・・・。」
 友人がポツリという。自動車でバッテリーがあがるといえば、エンジンをきってライトをつけっぱなしにしていたときにバッテリーがあがるというのをよく聞く。


 だが、原付の場合はしばらく乗っていないだけでもバッテリーがあがってしまうのだ(自動車も長期間、乗っていないとバッテリーがあがってしまうが、バッテリー容量の少ない原付は自動車よりも数倍早くあがってしまう。これは普通自動二輪車にもいえることで一ヶ月もエンジンをかけないで放置しておくとかかりが悪くなってしまう・・・現にそうであった)。半年近く放置されていてはいたしかたない。キュルルルと音がなるだけでもまだマシではあるが(本当にバッテリーがあがるとうんともすんともいわなくなってしまい、スタートボタンが何のボタンかわからなくなってしまうのだ・・・)。


「これじゃどうしようもないら・・・。」


 残念なふりをしていたが、半分私は嬉しかったのかもしれない。原付が動かなければ自転車でいくしかない。しかし・・・。


「キックで動かせるら」


 キック!? そういえば、原付教習のとき、エンジンを起動させる方法はスタートボタンによる起動とキックによる起動があることを習ったような・・・。


 キックとは原付のエンジンのところについている取っ手を起こして、その取っ手に足をかけ体重をかけて思いっきり踏みつけることで、エンジンを起動させる方法である。電気がやってくれる仕事を手動でするわけである。


 しかし、教習のときなかなか上手くかからなかった覚えが・・・。
 案の定、やってみると上手くできない。これもあとで知ったことだが、エンジンをかけていなかった期間が長ければ長いほどキックも熱心にやらなければならなくなるのだ。


 また、この時点ではキック初心者で体重のかけかたといったコツも全然つかめていなかった。何度か挑戦して・・・、最終的には友人にやってもらったような気もするが、エンジンがかかった。エンジンが体に悪そうな真っ黒い煙を噴く。そういえば母も原付の煙が車の排ガスに比べて黒いことを指摘していた。


 今から原付に乗るわけだが、やはりこの時点でも原付を嫌悪していたのだ・・・。できれば乗りたくない・・・。公道が恐い・・・。


棒