第十五話 甦る闘志!!

 「さてと、バイトにでもいくか。」

 夕闇がさしてきたころ、バイトへいくため、外にでる。原付のシートをあけてヘルメットをとりだし、頭にかぶる。
 「さてと・・・。」
 原付にキーをさしこむ・・・
 「!!」
 燃料計に目をやると、針がエンプティー(空)をさしているではないか!!


 おかしい・・・、昨日乗ったときには、エンプティまで針はきていなかったハズ・・・。夏の暑さで燃料が蒸発したのか!? 確かにガソリンは揮発性ではあるが、一日でこんなになくなるハズがない・・・。いや、そもそも燃料タンク内にあるのに蒸発してなくなるわけがない・・・。私は燃料タンクの蓋に手をやったがしっかりしまっている・・・。


 バイトに行く前に燃料をいれていけばいいだけだろといわれるかもしれないが、以前も述べたように私はいつもギリギリにバイトにいくので、すでにこの時点で給油していく時間はなかった。それ以前にガソリンスタンドまでもつのか!? という不安もあった。実はエンプティまできていても、結構走れるのだが、燃料が空になるギリギリまで原付に乗ったことがなかった私は、非常に不安になった。


 まあいい・・・。途中で止まれば、原付の燃料がつきましたので遅刻しますとでもいえばいいや・・・。私は原付のキーをまわし、エンジンをかける。スタンドをはずして発進させる・・・。


 と、どうだ・・・。燃料計の針・・・先ほどまでエンプティをさしていたはずなのに、じょじょに動き出し、燃料残り五分の一くらいの場所でとまった・・・。
 「!!」
 そういえば・・・昨日はこれくらい残っていたよな・・・。どうやら燃料は結構残っているようだ・・・。


 バイトがおわり、先輩たちとこのことについて話をした。
「怖いら」
 といわれた・・・。確かに燃料がなくなったと思っていたら、突然、針が動き出して燃料が復活するというのは怖い・・・。だが、私が期待していたのはこんな答えではなかった。


 私はバイト中、この燃料が復活するということについて考えていた。
 そして、ひとつの結論に至った。


 燃料の残量をチェックする装置は、燃料タンクの中にある・・・。走行中、原付は水平の状態なので、燃料タンク内の燃料の水面は燃料タンクの底面に対して平行である。しかし、スタンドにかけると原付の後方が高い位置になってしまう。すると、燃料タンクも後方が高くなってしまうので、燃料が燃料タンク前方に偏ってしまう。


 恐らく、燃料のチェックする装置は燃料タンクの後方についているのだろう。よって、スタンドをかけて燃料が前方に偏っていると、実際よりも少ない量を表示してしまうというわけだ。


 冷や冷やさせる場所にチェックポイントをつけるなよ、前のほうにつけてくれよと思ったが、よく考えるとスタンドをかけると燃料が前方に偏って実際より、多く燃料を表示してしまう・・・。するとまだ余裕があるなと思って給油を怠り・・・という事態になってしまう。燃料タンクの横についているとどうか・・・。でもこれだと、スタンドをかけると燃料の水面がタンクの側面に対して斜めになるので、測定できないのか?


 てっきり、先輩もすぐに理由が分かるだろう(もしくは知っている)と思っていたが、どうも分からなかったようだ。まあ、自動車はスタンドをかけたりしない(車体が地面に対して斜めにならない)から、燃料計の表示が一瞬で変わるなんてことはないわけだ。それに燃料タンクが大きいから坂道とかに停車させておいても針が動くほど影響はでないのだろう。よっぽど急な坂なら別だろうけど・・・。


 今、自動車に乗るようになってわかったのだが、車の燃料計も坂道をはしったりすると変化するようだ。針が動くなんてことはないのだが、燃料補給サイン(ついているモノとついていないモノがあるのだが)が、ついたり消えたりするのだ。燃料計がついたと思ったら、坂道を脱出すると消える・・・。今度、燃料補給サインが点灯したのは先ほどの坂道をぬけて10キロほどしてからだった。


 さて、今回、燃料計の仕組みを理解し、必要以上に燃料計に対して神経質にならなくなったのだが、後にこれが災いを呼ぶことになる・・・。まあ、ここまで言えばどんなことか想像はついてしまうでしょうが・・・。



棒