第十七話 機をつかめぬ男達

  大学三年生の夏休み・・・。ちなみに、この話は第十三話「GSへ!!」に至る前の話である。まだ、原付に乗り初めて間もない時期だった。

きしくも友人がバイクの免許を取りたいといっていたので、私と友人は一緒に免許をとりにいくことにした。


 八月のはじめごろだったか。私は友人の家にいって二輪の教習を受けるべく動きだした。不精な私は全く教習所のリサーチをしていなかった。正直いえば最近原付に乗りだしたばかりなので、もう少し上手くなってから、慣れてから二輪の免許はとりにいこうと考えていたのだ。このころの私は口で免許をとりにいくといっているだけだったのだ・・・。


 しかし、友人は大学の学部が理系なので授業が忙しく、休みの間にしか取りにいけない、また、一人でいくのは心細いので、帰省している今、私と取りにいくという話になったのだ。一人で免許を取りに行くのが心細いのは私も同じなので、友人が帰省している今、取りに行っておいてもいいかなと思った。


 さすがに友人は、私よりも免許を取ろうという気が強いらしく、リサーチもしていた。最初に友人が提示したのは二輪免許専門の学校だった。私は二輪免許専門の学校があるとは知らなかったので驚いた。今、自動車学校は、ほとんどの人間が免許を持ってしまっているため、新たに十八歳になった人間・・・つまり免許を持っていない層をどう囲い込むかに存続できるかどうかが、かかっているという状況だ。ましてや二輪という趣味の領域の免許をどれほどの人間がとりにくるのか・・・。利益はでているのか・・・と余計な心配をしていた。さっそくパンフレットをみてみたが、場所が遠い。まだ、原付に乗りなれていない私は、その教習所までいくことが非常に不安だったのだ。


 ということで、もう少し近場をという話になる。私はリサーチこそしていなかったものの、かつて自動車免許をとった自動車学校に二輪免許コースがあるというのを覚えていたので、そこで取るつもりでいた。記憶が確かなら、自動車の免許を取りに行ったとき、二輪の教習をやっているのをみたことなかったから、教習生はほとんどおらず、自分と友人だけで教習できるのではという期待もあった。友人になら自分の醜態をみせてもどうも思わないから安心だ。


 さっそく友人が教習所に電話する・・・。友人が二輪の免許のことについて訪ねる・・・。


 が・・・しかし、今は丁度、四月に高校を卒業した人々が、大学・専門学校から夏休みということで帰省してきていて、自動車教習が大賑わいで、二輪教習に教官をさくことができないという・・・。よって、二輪の教習は学生が免許を取得する九月くらいにならないと開講しないということだ・・・。


「なんだよ・・・それ・・・。」


 二輪の教習をみたことがなかったのは、教習生がいなかったというわけではなく、単に自動車免許取得の繁忙期なのでやっていなかったということだった。二輪は利益にならないということだろうか・・・。


 ということで、最初に友人が提示した二輪専門学校にいくかどうかという話になる。正直、私は乗り気ではなかった。


「さて、どうする?」


 一応、我々は一緒に教習をうけて一緒に卒業というのを前提にしていた。友人のタイム・リミットは九月の八日くらいだった。それを過ぎたら大学に戻らねばならないらしい。


 実は私もタイム・リミットではないが九月の初めに中国旅行にいく予定があったので、中国にいっている間と帰ってきた翌日は教習にでられない。思い出せば、中国旅行の出費にくわえて二輪教習の出費もあるのかと、金銭面でも躊躇していたように思える。


 教習所への移動は友人が車をだすという話でまとまり、さっそく入校日をきめて、パンフレットの教習カレンダーをみて卒業日をわりだす。


 私も友人も自動車免許保持者なので二輪免許をとる際には、学科をうける必要がないので、実技を一日二時間(二時間以上は実技はうけれないのだ)やって何日に卒業できるかを割りだす・・・。


 と・・・その結果・・・卒業試験は九月の十何日となってしまった・・・。私の中国旅行のため日程が後ろにズレこんでしまったのだ・・・。それと、二輪の教習は今日、申し込んだら明日からできるというわけではなく、入校日が決まっており(毎週二回くらいある。働いている人のことも考え日曜日が入校日になっていた)、この入校日にやってきて、入校式に参加しなければならない。確かな記憶ではないのだが、友人が教習所に電話したところ、夏という二輪の免許をとるにはもってこいの季節ということもあり、今度の入校日(確か日曜日)はすでに一杯になっており、その次の入校日にならないとはいれないという状況だったような気がする。そのため卒業は、私の中国旅行中に友人が教習にいっても、学校にいく日に間にあわないという具合になっていたような気がする。


 結局、実家から大学にいっている私は、最悪、学校がはじまっても休みの日を利用して教習をうけれるし、免許を更新にもいける。だが、友人はそれができない・・・。


相談してはみたものの、入校を決める・・・具体的な事項を決めるのが遅すぎたために機を逃してしまったのだ。正直、私は話が流れて安堵していたのかもしれない・・・。


 まだ二輪の教習をうけるのは早すぎるという感があったからだ・・・。


棒