第十九話 バスに乗り遅れるな!(原付ライダー列伝1−バンカー伝2)

 バンカーという友人・・・。二輪免許はとるだけ無駄という、考え方の男がいた。

 だが、二輪免許取得の話をして二、三週間すぎた頃だろうか、突然
 「俺も二輪免許とりたい。」
 と言ってきたのだ。私は戸惑いを覚えた。突然、なぜに? そもそも、自分は車が欲しいから二輪免許など・・・という思考だったのではないのか・・・。

「どうして、また突然・・・。」
 と私が問いかけると、どうやら自動車には将来的にはどうしても乗らないといけなくなってしまう(地方で就職するには自動車免許は必須。資格うんぬんの話もあるが、勤務先に電車やバスでいくのが困難な場合が多いので自動車通勤は基本なのだ。高校卒業後、就職する者は、入社する四月までに自動車免許をとりにいき、マイカーを用意する。地方は工場に就職するというパターンが多く、工場というのはおうおうにして僻地につくられるものであるからだ)。


 だから、バイクに乗れるのは学生時代の今しかない・・・。


 だが、直接的な動機は、もう随分前の話になるのだが、日曜日の九時からやっていたドラマ「ビューティフル・ライフ」で、主人公を演じた木村拓哉がオートバイに乗っていたことに起因しているようだ(なんていうバイクかは覚えていないが)。世情に疎い私は、随分前のドラマをひきあいに出してくるバンカーに対して
「今更何を・・・」
 という感をうけたが、自分の親にきくと、どうも木村氏の乗っていたバイクの人気は衰えておらず結構、町でもみかけるとのこと。そればかりか、バンカーとコンビにいったときに知ったのだが、未だに若者向けの雑誌にも紹介されているようだ。


 私と友人の文遠はこのバンカーの心変わりとその動機について話をした・・・。どうも、バンカーというのは自分の道というか考えというかスタイルというのが弱く、世の情勢や友人の考えに乗じているような・・・。


 いわゆるミーハー。


 バンカーの心変わりを、「ただの気まぐれ」として捕らえていた。多分、彼の行動パターンからして、実際に、こちらが一緒に免許を取りに行こうといっても、躊躇して取りに行かないだろうし、まず、自発的にとりにいくというのも考えられない。しばらくすれば、また心変わりするだろう。


 免許とりたいといいだしたのも、雑誌に触発されてというよりも、私と文遠が取るといっていたから、自分だけ流れに乗り遅れたくないというのが、根底にあって、そういえば雑誌でこんな特集をしていた・・・やはり、世の若者の流れは二輪免許取得? と思ったのではないか。


 もしくは、雑誌を読んでも、別にバイクに乗る気はなかったのだが、こいつらが取るなら俺もとろうくらいの軽い気持ちだろう。とりあえず、私と文遠はバンカーがバイクに乗りたいというのは、パフォーマンスだと判断した。しかし、偉そうなことを言っても自分も(文遠も?)所詮はこの段階では、彼と同じく免許をとるとさえずっているだけの虚しいパフォーマーだったのだが・・・。



棒