第三十話 悲劇は繰り返されるのか・・・

 二輪教習所の入所式をおえて、私はバイトへいった。

 バイトが終わり帰りがけに店長と給料の査定の話をした。いうまでもないが、突然、明日休むとかいうのはマイナス査定となる。実はこの日、私は今度の初乗り教習日(実技教習は基本的には自分の都合のいい日、いい時間にやるのだが、初めての実技教習だけは、「初乗り教習」といって、指定された日時にやらなければならないのだ。

 もっとも初乗り教習日は何日かあるので選択の幅があるのだが、どの日もバイトの予定がはいっており、バイトの開始時間を遅れさせてもらわないといけないのだ)に初乗り教習の予定を組みたかった。バイトは先月のうちに休日を申請しておけば、問題なく休みがもらえるのだが、来月まで待っている余裕などない。早速店長にバイト遅刻の許可をもらうために懇願する。


「そういうのも本当はマイナスだよ・・・。」
 といわれつつも許可をいただいた。非常に間が悪い・・・、いや、そもそも査定の話を振ったのは自分だった気もする・・・。


 そして初乗り教習当日・・・。


 教習は四時くらいからだったので私はそれまでウダウダしていた。この日、父に郵便局にいって振り込みをしてきてほしいと頼まれていたが、教習所にいくときに一緒にいけばいいやと思っていた。入所式の日に時間がなーーい!! と焦ったのにまったく反省していない・・・。いやむしろ、時間がないと思っていたが、実際は思ったより早くついてしまったため、まだ大丈夫だろうという慢心が生まれてしまってさえいた。それでも郵便局の件もあるので、気持ち早め(むしろそれでも遅いのだが)に家をでた。


 そして郵便局・・・ちょっと混んでる・・・。


 私は郵便局の用事を侮りすぎていた。郵便局にいったら即座に処理がなされる(切手を買うが如く・・・)と思っており、郵便局の用に費やす時間は、郵便局への移動時間プラス五分しか考慮していなかったのである。確かこの日の用は振込みだったため振込用紙に必要事項を記入し、窓口に提出。処理が終わるまで待たなければならなかった。しかも、少し混みあっていたので、私の処理が開始されるまで時間がかかった。余裕があれば郵便局にある各種パンフレットに目をやっているところだが、そんな余裕はまったくない・・・。窓口のすぐ傍に立って、奥で私の出した振込み伝票の処理をしているのを、じーーと見つめ。頻繁に時計に目をやる・・・。


 十分・・・いや、本当はもっと短かったかもしれないが、一分でも時間が惜しい私にとって、処理の時間は非常に長く感じられた。


 原付の最高速度(法定速度ではない)は六十キロ。一時間で六十だから一分で一キロ。五分あれば五キロはいける・・・。そう思うと一分でも惜しい・・・。一分遅れて教習におくれたら、教習がうけれないだけでなく、「勝手に休んだ」という扱いになってしまい、教習代金は返ってこないのだ・・・。ちなみに初乗り教習は二時間連続の教習になるので、二時間分の教習代金がとんでしまう・・・。一時間につき約四千円なので、二時間で・・・。グハッツ!!


 さらに家を出発するときに、もう一つのピンチが発覚していた・・・。


 原付の燃料がねえ・・・。


 そう、ガソリンスタンドにもよらないといけないのだ・・・。
 私は郵便局の用をすますと、すぐさま原付にまたがりガソリンスタンドへむかった。


 ガソリンスタンドもちょっと混んでいて、私が給油レーンにはいっても、すぐにスタンドの人が来てくれなかった・・・。私は少しでも時間を・・・と思い、普段はスタンドの人にあけてもらうガソリンの給油口を自らあけて待機していた。


(早くしてくれ・・・)


 焦る私。そんな私の苦悩など知る由もなく、スタンドの人は、しばらくしてから、ことらへやってきて給油をはじめる。


 どうでもいいことだが、原付でガソリンスタンドに行っても
「レギュラーですかハイオクですか?」
 の問いや
 「満タンでいいですか?」
 の問いを聞くことはほとんどない・・・。すでに「原付=レギュラー・満タン」の不文律があるかのようである。もっとも、
「100円分だけ・・・。」
 というのも恥ずかしいが・・・。また、原付にハイオクをいれるのは良くないというのも聞いたことがある・・・。もっとも、イチイチ問うのも答えるのも面倒だから聞かないのだろう。


 給油がおわると、そそくさと支払いをして、すぐに出発する。郵便局とガソリンスタンド・・・。すぐに終わるだろうとタカを括っていたら、どちらも込み合っていて思った以上に時間を食ってしまった。私は原付を飛ばして教習所へむかう・・・。夕方ということもあり道はやや混んでいたが、原付はすり抜けが出来るので、信号で車の動きがとまると車の横をすり抜けて先頭へ躍り出ては、最高速度で走りぬけた。もちろん信号で止まるたびに時計の時間を確認した・・・。そして・・・、


 間に合った!!


 今回も、思ったより早くついた・・・教習時間と教習時間の間は十分の休憩時間があるのだが、私が教習所に到着したとき、前の時間の教習はまだ終わっていなかった。幸運といえば幸運だが、遅刻して一度イタイ目にあっておけばよかったような気もする


 しかし、「あの時は運が悪かった」と言って、また同じ悲劇を繰り返すだけなのかもしれない・・・。
 人は同じ過ちを繰り返す宿命なのか・・・。

棒