第五十七話 「藻」から石油をつくる
(原付ライダー番外編 食貨志1)

 私が原付に乗り出した頃、ガソリンの価格はリッター100円くらいだった。

 また、セルフのガソリンスタンドが登場し始めた頃で、セルフのガソリンスタンドはフルサービスのガソリンスタンドよりガソリンの価格が安かったので、90円台でいれるこができた。


 時は流れ、ガソリン価格は高騰を続け、一時は200円近くまで跳ね上がることもあったが、現在は150円くらいに落ち着いている。200円近くまでの値上がりを経験したためか、150円であっても決して「高い」とは思わないのだが、昔を思うとやはり高い。今ではガソリンスタンドはセルフが主流になっているせいか、セルフのガソリンスタンドもフルサービスのガソリンスタンドもほとんどガソリンの価格はかわらない。


 オートバイで遠出のツーリングをするとガソリン代高いなあと改めて感じることもしばしば。


 ガソリンを40リッター入れたとすると、現在の価格、リッター150円だと6000円、往時の価格、リッター100円だと4000円。長距離になればなるほど、金額の差は大きくのしかかってくる・・・。


 東日本大震災もあり、ガソリン価格が高くなることはあっても安くなることはないだろうなと思っていた矢先、TBSテレビの番組「夢の扉+」で「藻から石油を! エネルギー革命で日本を産油国に!?」という放送がなされた。


 放送日は2011年5月29日。私はこの日、休日で、尚且つ、台風も接近していたので、昼間から自宅でテレビをみていたのだが、昼間の番組途中のコマーシャルで「藻から石油をつくる」という番組の宣伝が入り、非常に興味をひかれたので、6時30分からの放送をドキドキしながら見ていた。


 30分間の放送であったが、私は興奮しっぱなしだった。通常、原付ライダーは過去から現在へ時系列を追って話をすすめていくスタイルをとっているが、興奮覚めやまぬうちにと、敢えて現在の話を捻じ込むことにした。


 私は当初、「藻」そのものを加工して石油のような物にするのだろうなと思っていたのだが、実際は石油(正確には石油そのものでなく、石油と成分が極めて近いもの)を作り出す能力を持った「藻」が存在していて、その「藻」を使って石油をつくりだすのだという。その生産能力は現在実用化されているバイオエタノールのトウモロコシと比較すると、同じ栽培面積ならば「藻」はトウモロコシの5000倍の生産能力があるのだという。


 実は石油をつくる「藻」の存在は以前から知られていて、外国では盛んに研究が行われており、アメリカは何兆円という国家予算をこの研究につぎ込んでいるそうだ。現在のように石油資源の大半を中東諸国が握っているというのは、覇権国家アメリカにとってはゆゆしき事態なのだろう。


 翻って、日本の企業はこの研究に左程関心をもっていなかったようである。石油は外国から買ったほうが安いから、この手の研究に資金をつぎ込む必要はないと考えたのだろうか。


 しかしながら、東日本大震災以降、日本企業はこの研究に対して、急速に関心を抱くようになったのだという。原子力発電所の停止によるエネルギー不足が企業にエネルギーに対する関心を抱かせたのだろう。東日本大震災で被災した方には申し訳ないが、地震以降、日本人の意識や産業の在り方に変化が生じてきているような気がする。破壊と創造という言葉があるが、今なら
その言葉が理解できるような気がする。


 番組の最後は、「藻」から作った石油を、現在、ガソリンに混ぜて使うことができるバイオエタノールの比率と同じ比率で、ガソリンに混ぜて使い、見事、トラクターを動かすことに成功したところでしめくくられた。実用化の日は近いようだ。


 「藻」から石油がつくられる技術が確立し、石油が大量生産されることに至れば、ガソリン代はかなり安くなるだろう。ガソリン代を気にせずにツーリングにでかけられる日も遠い日の花火ではない。もしかすると、ガソリン代の下降によって、バイク人口が増えることも考えられる。


 そうなると二酸化炭素の問題も浮上してきそうだが、ガソリン代が安くなればガソリン自動車の需要が高くなるだろうから、ガソリンエンジンの効率をよくしたり、二酸化炭素の排出量をおさえる研究が進むだろから大きな心配はいらないだろう。


 一日も早く、この技術が確立されんことを。





棒