4.グリニッジの旧王立天文台とその周辺

(前回はここをクリック)
 さて、グリニッジ駅を降りてロンドン郊外のグリニッジ駅を歩きます。先ほど、駅の裏手から降りてきましたので、今度は駅の正面を撮影。いかにも郊外の駅といった小ぶりの可愛らしい駅舎です。またグリニッジは「海事都市グリニッジ」として1997年に世界遺産に登録された地域。かつて七つの海を制覇した大英帝国にとって重要な場所でした。
 そして大通りに沿って歩くと、セント・アルフィージ教会が見えてきました。1714年にニコラス・ホークスムーアによって建設されたものです。また、この場所は1012年にカンタベリー大主教アルフィージが殺害された場所だとか。
 なんと、ここでリスを発見!!野生のリスです。

 ちょこまかちょこまかと動き回るのが何とも可愛らしい。時折止まって、こちらを見てきます。・・・はっ、リスばかり撮影している場合ではありませんでした(笑)。

 そして引き続き歩きますと、おやおや面白い名前の寿司屋がありますね〜。

 そしてグリニッジ・パークに到着します。霧がでていて、何とも幻想的。写真奥の、小高い丘に登ります。

 丘の上を歩くと、旧王立天文台が見えてきました。ある意味、今日最大の目的地であります。

 ここは、1675年にイングランド国王のチャールズ2世が造らせた天文台で、本館はクリストファー・レンの設計。観測機関としての王立天文台は1990年にケンブリッジに移転し、現在はその役割を終えていますが、ここが経度0度と定められ、世界中でグリニッジ標準時が使われています。

 それから、この旅行では至る所でクリストファー・レンの名前を目にしました。イギリス王室の建築家だったため、特にロンドン大火後はロンドン中の建物を設計・再建しています。しかも元々はオックスフォード大学で天文学の教授を務めるなど、理系分野でとにかく多才な人物だったそうです。

 そして門の脇にある時計では、グリニッジ標準時を示しています。さらにこの時計、初期の電気式時計として非常に貴重な文化財です。

 その下には様々な長さの基準が示されています。

 時計の裏側。ある意味で非常にシンプルな構造ですね。

 さて、ここが経度0度のライン。初代天文台長ジョン・フラムスチードがここで観測を行い、その観測結果を元に定めたそうです。勝手に自分たちが世界の基準だと定めるんじゃない(笑)、という気も多少しつつも、ここで東経・西経が別れる場所かと思うと、とても感慨深いです。

 多くの人がそう思っているようで、ここに立つ観光客は非常に多かったです。1通上の写真は何の苦もなく撮影しているように見えるかもしれませんが、シャッターチャンスを狙うのに結構苦労したんですよ(笑)。

 なお、内部の展示は写真撮影禁止。天文に関する様々な古い機械がありましたが、展示の解説はすべて英語であり、きちんと訳しながら見ていると、いくら時間があっても足りません。主要なものだけ秩父路号所員に訳してもらい、先に進みます。

 ・・・ところで、入口にあったコレ。おそらく、博物館の人が日本で見つけて「こりゃスゲぇ」と、そのまま買ったんでしょうね。英語の説明は一切貼っていませでした。イギリスとフランスを旅行して感じたのですが、こういう生活用品も日本のほうが遥かに便利です。

 最近、なんだかすっかり「日本の製品は過剰な性能の製品だから売れないんだ」と言われるようになりましたが、売り込み方が下手なだけだと思います。

 こちらは館外にあったイルカの日時計。

 さて、グリニッジ・パークに戻ります。公園内を歩いていますと、警官(警備員?)が・・・馬に乗っている!?
 さすがはロンドンです。

 ふもとから王立天文台全景を撮影しました。曇っているのが残念ですが、風格のある天文台です。

 続いて丘のふもとにあるクイーンズ・ハウスへ。ここは、1615年から1637年にかけて、国王チャールズ1世が王妃アンのために造らせた邸宅。イギリスで初めてのパラーディオ様式の宮殿でしたが、一時期の共和制時代に略奪や破壊に遭い、一部が残存しています。

 内部はエリザベス1世やドレイクなど様々な人物の肖像画や風景画などが飾られています(最初、レプリカと思ってあっさりと通り過ぎ、出口で聞いてみてビックリ!)。写真撮影は禁止でした。


 今度はカモが放し飼いにされています。

 そして、この建物に増築される形で国立海洋博物館が設置されています。実物の艦船があるわけではありませんが(王室が使った小型の木造船などはあります)、様々な模型や貴重な古い道具が展示されています。

 格調高い入口。早速、入ってみることにしましょう。

 第二次世界大戦前にイギリス海軍が建造した戦艦「キングジョージ5世」。48分の1の模型ながら、でかっ!

 ステンドグラス。どこかに飾られていたものを移設したようですが、非常に荘厳で美しい。

 1741年に建造された帆船を再現した模型。70門の大砲を装備しているようです。

 館内の中庭的な空間にて。ここでも船に関する様々な小道具の展示のほか、喫茶店も入っています。

 さて、国立海洋博物館の向かい側にあるのが旧王立海軍大学(英国海軍大学)。1669年、チャールズ2世が建てさせたキングス・ハウスを前身とし、後に3棟が建てられて、1694年に合計4棟になりました。設計したのは、クリストファー・レン。ロンドンを語るには欠かせない人物のようですね。

 4棟の建物を臨む広場は圧巻。奥にクイーンズハウスや旧王立天文台も見えますね。

 ドーム型の屋根が美しいです。

 大学構内にて1枚。

 ちなみにテムズ川の対岸を見てみると、なにやら怪しげな形の建築が・・・。

 こちらは「ジ・オールド・ブルワリー」(老舗ビール醸造所)。2010年春にオープンしたバーとレストランを併設した施設で、1717年からロイヤル・ホスピタルで退役海軍の軍人達にビールを提供してきたビール工場を、転用したものだそうです(建物は何度かの改修を経ているもののようです)。

 さて、大学構内を出てグリニッジの町を歩きます。

 この近くに1869年に中国との茶貿易のために建造された帆船カティー・サーク号が保存されているのですが、2007年に放火されて焼失。現在も復元作業が進められています。観光のシンボルであり、世界的にも貴重な帆船であっただけに残念な限り。復元されて公開される日を楽しみにしています。