クラス221「スーパー・ボイジャー」
British Rail Class 221 'Super Voyager'
ヴァージン・トレインズ(VT)のクラス221。クラス220とは異なり車両前面のエンブレムは赤の背景に銀字。
(撮影:サウス・ケントン駅、South Kenton Station)
●基本データ
デビュー年 | 2002年 |
製造会社 | ボンバルディア・トランスポテーション(Bombardier Transportation) |
最高速度 | 200km/h |
運行会社 | ヴァージン・トレインズ(Virgin Trains, VT)→アヴァンティ・ウェスト・コースト(Avanti
West Coast , AWC) クロスカントリー(CrossCountry, XC) |
運行区間 | 西海岸本線(West Coast Main Line, VT) ●ロンドン・ユーストン〜バーミンガム・ニュー・ストリート(Birmingham New Street) ●ロンドン・ユーストン〜グラスゴー・セントラル、またはエジンバラ・ウェイバリー(バーミンガム・ニュー・ストリート経由, Glasgow Central, Edinburgh Waverley via Birmingham New Street) ●ロンドン・ユーストン〜チェスター(Chester)、バンゴー(Bangor)、ホリーヘッド(Holyhead)、レクサム・ジェネラル(Wrexham General)、ブラックプール・ノース(Blackpool North) クロスカントリー・ルート(CrossCountry Route, XC) ●ペンザンス(Penzance)〜プリマス(Plymouth)〜ブリストル・テンプル・ミーズ(Bristol Temple Meads)〜バーミンガム・ニュー・ストリート(Birmingham New Street)〜ニューキャッスル(Newcastle)〜エジンバラ・ウェイバリー(Edinburgh Waverley)、またはグラスゴー・セントラル(Glasgow Central) ●レディング(Reading)〜オクスフォード(Oxford)〜バーミンガム・ニュー・ストリート〜ニューキャッスル ●ブリストル・テンプル・ミーズ〜バーミンガム・ニュー・ストリート〜ストーク・オン・トレント(Stoke-on-Trent)〜マンチェスター・ピカデリー(Manchester Piccadilly) ●ボーンマス(Bournemouth)〜レディング〜オクスフォード〜バーミンガム・ニュー・ストリート〜ストーク・オン・トレント〜マンチェスター・ピカデリー |
編成詳細 |
クラス221 5連x42本、4連x1本 |
●車体傾斜システムを搭載した高速電気気動車
運用の歴史
ヴァージン・グループがクラス221を当初44編成を導入。内約は5連x40本、4連x4本で前者は主にクロスカントリー用、後者は西海岸本線のVT用に振り分けられた。2007年11月にクロスカントリー路線のフランチャイズがアリーヴァの傘下にあるクロスカントリー社(XC)に移り、同時に5連x22編成と4連x1編成が同社に転属。VTの元ではチェスターやブラックプールなど西海岸本線から分岐する非電化路線の先にある地方都市を結ぶ運用や、クラス390を補完する形でバーミンガム〜スコットランド間などの列車を担当。2010年11月には編成の共通化を図るためVTが手元にあった4連x3本を組み替えた。221144編成の中間車2両を4連x2本に1両ずつ組み込み、5連x2編成に再編。余剰となった221144編成の先頭車2両は予備として保管されている。
2019年12月8日にはウェスト・コースト・フランチャイズの運営権がVTからトレニタリアとファースト・グループ率いるアヴァンティ・ウェスト・コースト(AWC)に引き継がれたため、クラス221は全編成が移管された。なお、AWCのフランチャイズ規約の一環として、日立レール・ヨーロッパより7連x10本の電車と5連x13本のバイモード車両を発注すると発表。恐らくAT300シリーズとなる見込み。既存のClass 221置き換え・補強用となる見込みである。
XCではクラス220と同様クロスカントリー・ルート上の地方都市間の長距離列車として使用されている。しかし指定された走行ルートでは車体傾斜装置の使用が認可されておらず、2008年に同装置を使用停止。信頼性の向上やメンテナンス費のコスト削減などのメリットを考慮した結果、車体傾斜用の油圧システムは取り外され車体は台車に固定された。
クラス221の仕様
外見はクラス220と瓜二つだが、「スーパー」と名乗るだけあって強制車体傾斜装置を搭載し、最大6度まで車体を傾斜させられる。そのため台車も軽量ボギーではなく、従来のもののように軸受が車輪の外側にあるY36型を使用。編成長にも違いがあり、クラス221は4両編成と5両編成の2タイプが存在する。一回の給油での走行距離は1900kmとクラス220の2170kmより縮まっている。2013年には全編成のスカート下部をより流線型なカバーに交換された。
編成の構成は一等車が一両で、普通車が残りの車両を占める。設備は意外に豪華で、各座席にコンセントと音楽が聴けるジャックも備わっている。しかし車体傾斜式なので車体断面はやや狭く、クラス220の項にも記述したように乗客には不人気。XC所属編に至っては車体傾斜装置も取り外されたので無意味に狭いという少しばかり残念な車両である。
(解説・撮影:秩父路号、2020年5月更新)
●ギャラリー
VTではロンドンと北ウェールズやイングランド北部の都市間特急を担当。
(撮影:サウス・ケントン駅付近、South Kenton Station)
2018年に登場した旧ヴァージン・トレインズーのクラス221後期塗装。
(撮影:Coventry Station)
Y36型の台車。クラス220とは異なり従来のデザインの台車を使用している。
XCのクラス221。
(撮影:アディングストン駅、Uddingston Station)
VTからXCへの受け渡しの際に発生したハイブリッド塗装。VTの標準塗装からエンブレムが取り除かれ、車体側面のロゴが更新されている。
(撮影:プリマス駅、Plymouth Station)
ボンバルディアとVTの提携を記念した塗装が施されたVT編成。
(撮影:サウス・ケントン駅付近、South Kenton Station)
普通車の車内(2+2固定式クロスシート)。車内は傾斜を想定して従来の車両より断面が小さく、窮屈に感じる乗客も少なくない。
先頭車2両だけが残った221144編成。低速で車両基地内は走行できるもののブレーキ用のコンプレッサーを搭載しておらず、本線上の走行は許可されていない。
(撮影:ヨーク鉄道博物館、National Railway Museum York)
製造時のスカート。 |
2013年に交換された流線型のスカート。編成番号の表示位置も変更された。 |
●参考文献・ウェブページ
・「Traction Recognition, Third Edition」 (Ian Allan Publishing) ISBN 978-0-7110-3792-2・North Wales Coast Railway: Class 221 'Super Voyager'
・Wikipedia: British Rail Class 221