クラス332 

British Rail Class 332 'Heathrow Express'


2012年に施されたクラス332の新標準塗装。スポンサーのラッピングが施されていることが多く、この塗装を見る機会はなかなかない。
(撮影:ハンウェル駅, Hanwell Station)

●基本データ

デビュー年 1998年
最高速度 160km/h
製造会社 CAF / シーメンス
運行会社 ヒースロー・エクスプレス (Heathrow Express, HX)
運行区間 ●ロンドン・パディントン(London Paddington)〜ヒースロー・セントラル(ターミナル1,2,3)(Heathrow Central for Terminals 1, 2, and 3)〜ヒースロー・ターミナル5(Heathrow Terminal 5)
編成詳細

4連x9本
5連x5本


●欧州最大級ヒースロー空港のアクセス列車

 ロンドンと同市最大のヒースロー空港を結ぶ新線の建設が可決されたときに空港アクセス列車として運用されることを想定してスペインの車両メーカー、CAFとドイツのシーメンスのコンソーシアムが製造した。CAF/シーメンスは他にもクラス333を製造しておりこれらはイングランド北部の近郊路線で使用されている。

導入背景と運用
 ロンドンの主要空港であるヒースロー空港とのアクセスを向上させるために近場を通るグレート・ウェスタン本線から支線を引いて、空港とロンドン市内を鉄道で繋げる計画が持ち上がった。1993年には工事着手され、新設される空港アクセス列車のヒースロー・エクスプレス(Heathrow Express)の専用車両としてクラス332が発注された。契約はCAF/シーメンスに授与され、前者のスペインのサラゴサ工場で14編成が製造された。落成当初クラス332は3連で、1998年1月からロンドン・パディントンからヒースロー・ジャンクション(Heathrow Junction)という空港から少しはずれた仮設駅までヒースロー・ファスト・トレイン(Heathrow Fast Train)として運行されていた。1998年6月には空港直下までの路線が完成し、全編成が4連に延長されると共にロンドン・パディントンと当時ブリティッシュ・エアウェイズの本拠地であったヒースロー・ターミナル4(Heathrow Terminal 4)を結ぶアクセス列車として本格的にデビューした。

 2002年には5編成が5連に増やされ、最大10連での運行が可能になったがそれは稀で4+5の9連での運行がよく見られる。2008年にヒースロー空港の第5ターミナルとその直下にある地下駅が完成し、それに伴いヒースロー・エクスプレスの行き先も第4から第5ターミナルから変更された(この時ブリティッシュ・エアウェイズも第5ターミナルに移動)。現在第4ターミナルへはヒースロー・セントラル駅からのクラス360のシャトル列車が走っている。ヒースロー・エクスプレスは15分間隔で走っていて、ロンドン・パディントンからヒースロー・セントラルまでは15分、第5ターミナルまでは21分と所要時間は他の交通機関と比べると各段に速い(地下鉄は都心からでも1時間以上)。

 2016年2月末に定期検査でクラス332のとある編成の車体下部に亀裂が発見され、全車両の緊急検査を行われた。これにより全編成が営業運転から外されヒースロー・エクスプレスは本来ヒースロー・コネクト用のクラス360で運行することに。3月中旬には損傷部分が修復され営業運転に回帰したが、その間ヒースロー・コネクトが運休したためにロンドン・パディントン近郊列車に多大な影響を及ぼした。

クラス332の仕様
 イギリスで走る他の鉄道車両とは異なりATP(Automatic Train Protection、自動列車防護装置)が搭載されており、全国標準であるTPWS(Train Protection & Warning System、列車防護警報装置)が備わっていない(ATPは速度超過を察知し信号冒進を未然に防ぐ事ができる反面、TPWSは信号冒進をした後にしか列車を停止させようとしない)。これはヒースロー・エクスプレスの走行区間の大半であるグレート・ウェスタン本線がATPを採用しているイギリスで数少ない路線だからである。本来イギリスの鉄道車両はTPWSの設置を義務付けられているが、クラス332は特別免除となっている。

 各編成のロンドン寄りの先頭車はファースト・クラスで登場時の座席配置は2+1列、他の車両はエグゼクティブ・クラス(実質普通車)で2+2列配置のクロスシートである。デッキ付近は荷物置き場があり、ニュースや広告などを流す液晶モニターも設置されている。2012年には大掛かりなリニューアルが施され、ファースト・クラスが1+1列配置に、エグゼクティブ・クラスの座席も紫と黄色を基調にしたものに更新され、同時に塗装も一新された。1999年からはロンドン・パディントン駅で荷物が預けられるサービスが行われていて、クラス332の車内に保安検査通過済み荷物用の置き場があったが現在は廃止された。

(解説・撮影:秩父路号、2016年3月更新)

●ギャラリー


ヴォーダフォンの4Gネットワークの広告編成。こちらは5連の編成。
(撮影:ハンウェル駅, Hanwell Station)


2015年にイギリスで開催されたラグビーW杯の特別塗装。
(撮影:ハンウェル駅, Hanwell Station)


TATAコミニュケーションズの広告列車。
(撮影:ハンウェル駅, Hanwell Station)

2016年はTATAコミニュケーションズがスポンサーとなった。写真はファースト・クラスのロンドン寄り先頭車。
(撮影:ロンドン・パディントン駅)


エグゼクティブ・クラスの様子。床もカーペット張りになっている。


ファースト・クラスの様子。イギリスでは唯一の1+1配置となっていて広い空間となっている。


各デッキ付近には荷物置き場と液晶モニターが設置されている。

身体障害者用の座席とトイレも完備。



クラス332の旧塗装。ドアが灰色で、全面の警戒色の塗り分けが異なる。
(撮影:ウェスト・イーリング駅、West Ealing Station)


RBS(王立スコットランド銀行)の旧ラッピング車両。
(撮影:ロンドン・パディントン駅、London Paddington Station)

ヴォーダフォンの旧ラッピング車両
(撮影:ロンドン・パディントン駅、London Paddington Station)


リニューアル前のエグゼクティブ・クラスの車内。


荷物置き場の様子(リニューアル前)

デッキ付近と液晶モニター(リニューアル前)

●参考文献・ウェブページ

・「Traction Recognition, Third Edition」 (Ian Allan Publishing) ISBN 978-0-7110-3792-2
Wikipedia: British Rail Class 323
Siemens: Class 332 & 360/2 - Heathrow Express
Heathrow Connect gets back on track

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