第9回インノトランス〜機関車編〜

 こちらでご紹介するのは最新の機関車。日本では珍しくなった客車列車でもヨーロッパでは健在であり、オーストリアのレールジェットなどを見ると客車列車はまだまだヨーロッパの主力といえます。国際列車などを運行させる際、国境で機関車だけをとりかえればいい客車列車のほうが手間がかからず都合がいいのです。もちろん旅客列車だけでなく長編成の貨物を牽引するもの、操車場や貨物ヤードで入替作業を行うものなど用途に合わせて様々な種類が展示されていました。


 まず、上写真は日本でも車両製造に参加しているドイツのシーメンス社のES64 F4型です。最大定格出力6400kWの貨物牽引用電気機関車で、最高速度は140km/h。15kV AC, 25kv AC, 1.5kV DC, 3kV DCの4電源に対応しており、ドイツで189型として、スイスではRE474型として活躍しています。愛称はユーロスプリンター(Eurosprinter)で、歌うVVVF機関車として有名なES64 U型もこの一員です。

 ポーランドのネヴァグ社(Newag)の15D/16D型機関車。2010年より製造されている重入替用ディーゼル機関車です(最大定格出力1480kW)。現在ポーランド国鉄の貨物支部が30機発注しています。ちなみに15Dと16Dの違いは前者が標準軌仕様、後者が広軌仕様となっております。

 チェコのシュコダ社(Skoda)の109E2型。2008からチェコ国鉄(CD)用に製造された109E型電気機関車をベースにスロヴァキア国鉄のZSSK用に仕様変更されました。シュコダ社としては初の機関車モデルです。近郊路線で使用されるため最高速度は160km/hに抑えられ、定格出力は6400kWとかなりのハイパワーです。

 海を越えてアメリカのゼネラル・エレクトリック社のパワーホール・シリーズ(GE PowerHaul)のPH37ACai型。イギリス、トルコ、韓国、オーストラリア等ですでに発注を受けているパワーホール・シリーズですが、こちらの亜種はヨーロッパ本土用のもの。重貨物牽引用のディーゼル機関車で、最大定格出力は2750kWです。

 オマケとしてイギリスで活躍しているパワーホールのクラス70型機関車です。フレートライナー社(Freightliner)が2007年に30機発注しました。

 ポーランドのPESA社のガンマ・シリーズの第一員である111Ed型機関車です。この形式の愛称は「マラソン(Marathon)」で、次世代の特急牽引用の電気機関車として設計されています。定格出力は5600kWで、対応電源はポーランド国内の3KV DCのみ、最高速度は160km/h。今回のインノトラスでデビューし、2013年2月からワルシャワ〜クラクフ・ポズナン等の特急列車を牽引しています。しかし電車のLINKといいPESAのデザインは奇抜ですね。個人的には未来チックで好みですけど。

 ドイツのフォイト社(Voith)のグラヴィタ・シリーズの最新派生型の15L BB型(Gravita 15LBB)。重入替、そして軽貨物用のディーゼル機関車シリーズの一員であり、15LBBはその中で最も大きな亜種です。定格出力は1800kWで、最高速度は100km/hとなっていて、現在はドイツ国鉄が260型として運用しています。

 ドイツのフォスロ社(Vossloh)のG6型。フォイトのグラヴィタと対抗する入替用ディーゼル機関車で、車輪の配置は3軸となっています。今回展示された機関車はG6 ME型といい、従来のG6型を電動ディーゼル駆動に変更したものです。

 同じくフォスロのユーロライト・シリーズ(Eurolight)の機関車。従来のユーロ・シリーズを軽量化し、軸重を20トン以下に抑えた汎用型ディーゼル機関車です。その分パワーも控えめで、最大定格出力も2800kWとなっています。アジア向けの狭軌バージョンも開発されようとしています。イギリスでは貨物輸送のDRS社が15機購入し、これらの機関車はクラス68と称されます。

 そしてフォスロのDE12型。入替・軽貨物牽引用の電動ディーゼル機関車で、定格出力は1200kW。同じ容姿で出力を1800kWに向上したDE18型も存在します。日本でいうDE配置とは違い、二軸台車が二つ備わっています。

 こちらではシーメンスの最新型機関車、ヴェクトロン・シリーズ(Vectron)。前述のユーロスプリンター・シリーズの後継機関車として開発されました。機関車のパーツをそれぞれモジュール化し、発注者の要望に応じて色々と仕様変更ができるのを売りにしています。
 電源は1.5kV DC, 3kV DC, 25kV AC(50Hz), 15kV AC(16.7Hz)に全て対応、ギア比を変更して貨物輸送や特急牽引に特化(〜200km/h)させたり、最大出力を変更したり(最大6400kW)、標準軌から広軌(〜1668mm)まで対応できるようになっています。写真の機関車はヴェクトロンAC型の中出力バージョン(5200kW)で、交流電源に対応しています。

 ヴェクトロンDC型。名前が示唆するように、ヴェクトロンの直流対応機関車です。ちなみにDCとAC型には180kWの小型のディーゼルモーターを取り付ける事で、非電化区間での単独走行を可能にしています。架線のない貨物ターミナルや機関区での運用を可能にするものとしてPRされています。

 ヴェクトロンDE型。これはヴェクトロン・シリーズのディーゼル機関車で、最大出力は2400kWとなっています。

 ブルガリアのエクスプレス・サービス社(Express Service OOD)のMDD4-00型。二軸の入替用機関車で、最大出力は450kWです。

 スイスのシュタドラー社(Stadler)のバトラー(Butler、執事の意)。交流電源、ディーゼル機関の両方で駆動できるデュアルモード機関車で、現在スイス国鉄がEem923型として30機保有しています。櫛形ホームのターミナル駅からの客車回送や、非電化の引き込み線での入替などで活躍しています。

 ネヴァグはこれで電気機関車市場に初参戦、グリフィン・シリーズ(Griffin)のE4MSU型です。交流対応で最大定格出力は5600kW、最高速度は140km/h。2012年12月現在ではこの一機しか存在しませんが、グリフィン・シリーズはモジュール化されていて将来的には特急列車牽引用の200km/h型、直流型、ディーゼル型も開発される予定です。
 現在ポーランド国鉄の貨物支部が発注している模様で、2013年5月に試験走行を行う予定です。しかしこのメタリック・グリーンの塗装といいES64 U型を彷彿とさせる丸まった形状、たまらん!個人的に今回のイノトランスの目玉の一つでした。

 ドイツのボンバルディア社の機関車シリーズ、TRAXX(トラックス)のP160 DC型。TRAXXシリーズはシーメンスのユーロスプリンターと並ぶ機関車市場の大物で、ヨーロッパ中で運用されています。搭載機器のモジュール化を果たし、セミオーダーメイドの発注を受ける体制はユーロスプリンターとも共通しています。こちらの機関車は3kV DC対応で、ポーランドでE583型として活躍しています。最高速度は160km/h、最大定格出力は5600kWです。

 同じくTRAXXシリーズのディーゼル機関車、P160 DE型のマルチエンジン版。従来のように大型のエンジンを一基だけ採用せず、小型の540kWエンジンを4基採用する事によって燃費を向上させ、排気量を抑える改造が施されたのがポイントです。ドイツで中近距離列車を担当するDB Regioが200機発注し、2013年夏から運用開始される予定です。

 こちらはTRAXX F140 AC型。シーメンスのヴェクトロンACと同じように交流対応の電気機関車で、非電化区間を走行できるように小型のディーゼル駆動装置が備わっている。
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