キハ58系急行形気動車


国鉄色のキハ58系。この塗装に限らず、2011年にJR営業線上から一般車が全て引退してしまったが、千葉県の「いすみ鉄道」で観光の切り札として現在も活躍中。
(写真:予讃線 端岡駅/撮影:デューク)

●基本データ

デビュー年:1961(昭和36)年
保有会社:JR東日本、JR東海(※保管中)、JR西日本(※保存車)、JR四国(※保管中)、JR九州(※保留車)、いすみ鉄道、ミャンマー国鉄
元・保有会社:国鉄、JR北海道、富士急行、北近畿タンゴ鉄道、有田鉄道、サハリン鉄道、タイ国鉄
運転区間:タイ国鉄、ミャンマー国鉄など
元:運転区間:国鉄・JR路線全国各地、富士急行、北近畿タンゴ鉄道、有田鉄道、サハリン鉄道線、タイ国鉄線

●ついに定期運用を失った急行形気動車の代名詞・・・が「いすみ鉄道」で復活!

 国鉄標準型の急行型気動車で、DMH17H機関を搭載し、1エンジン車がキハ28(or 北海道向けキハ27)、2エンジン車がキハ58(or北海道向けキハ56、信越本線向けキハ57)と区分されている。総計1818両が製造され、全国の非電化線区で急行からローカルまで広く使用。 ジョイフルトレインの種車になった車輌も多い。このほか、国鉄車両との併結を考慮して山梨県の富士急行が同型を3両導入。2両は国鉄と完全に同一仕様の片運転台であるが、1両は両運転台というスタイルだった。その後、和歌山県の有田鉄道に3両が譲渡されたが、有田鉄道が2002(平成14)年に廃止されたため、現在は両運転台のキハ58003が有田川町鉄道公園で動態保存されている。

 本来の急行運用は、2007(平成19)年7月1日改正で、JR西日本の急行「みよし」廃止に伴い消滅。また、定期旅客運用についても電化区間の延伸や老朽化に伴う、廃車が著しく進み、北海道用のキハ56系、JR東海のキハ58系は引退し、JR九州で最後まで残っていたキハ58系「あそ1962」も2010(平成22)年12月26日限りで運行を終了した。そして、JR西日本の高山本線で活躍を続けていた4両が、2011(平成23)年3月12日改正で定期運用を離脱した。

 このまま営業線から全てのキハ58系一般車が姿を消すと思われたが、このうちの1両、キハ28 2346号が千葉県の第三セクター「いすみ鉄道」で再起して土休日を中心に運用。また、ジョイフルトレインでは、JR東日本の「Kenji」3両が現在でも活躍を続けている。

 なお、これと共同で運用される車両にキハ65形があり、1969(昭和44)年に登場。
 こちらはキハ58形と比べて大出力エンジンを搭載した車両で、総計102両が製造され、主に中京地域、四国、山陰で活躍。しかし、やはり廃車が進み、その多くが引退している。特に原形を保った車両は、2008(平成20)年11月2日をもってJR四国から引退したことにより、ついに本線上からその姿を消した。

 なおキハ58系は、JR東日本所属のキハ58系がロシア(サハリン)へ譲渡され、JR西日本からはタイ、ミャンマーに譲渡されて活躍する車両が多数存在。現在では、これら譲渡車両も引退が進んでいるが、長きにわたり活躍し、さらに世界で活躍する幸せな車輌では無いだろうか。

 また保存車両の代表的な例としては、北海道で活躍したキハ56形、キハ27形は小樽市総合博物館や三笠鉄道村などで保存されている。その他の現存車の一部は次のとおり。この他にも民間払下げ車が存在している。

<JRによる保存車両&保留車>
 ・JR東海 美濃太田車両区:キハ58 787・キハ28 2353 (※今後の処遇は不明)
 ・JR西日本 津山まなびの鉄道館:キハ58 563・キハ28 2329
 ・JR四国 多度津工場:キハ58 293・キハ28 2002
 ・JR九州:キハ58 139+キハ28 2401(あそ1962 *今後の処遇、最新の状況は不明)

<その他の保存車両>
 ・碓氷峠鉄道文化むら:キニ58 1
 ・上信越自動車道横川サービスエリア上り線メモリアルコーナー:キハ58 624(前面のみ。車番はキハ57 26)
 ・アドベンチャーワールド(和歌山県白浜町):キハ28 3019
 ・旧可部線安野駅:キハ58 554
 ・旧可部線加計駅:キハ28 2394
 ・四国鉄道文化館(愛媛県西条市):キハ65 34
 ・有田川鉄道公園:キハ58003 (元々は富士急行が発注した両運転台のキハ58系)

●キハ58系(+キハ65形)バリエーション一覧


 このページではキハ58系に分類したが、そのスタイルはキハ58系とはかなり異なるキハ65形。
(写真:予讃線 松山駅/解説:裏辺金好)

 北海道のみで運用されたキハ56+キハ27。登場時は俊足が大好評で新聞記事にもなったほど。ちなみに、キハ58などと比べて側面窓が一回り小さいなど、耐寒設備を強化している。2000年までに全車が廃車となっている。
(写真:三笠鉄道村/撮影:裏辺金好)

 引退を前にJR四国のキハ58形国鉄色に再現された、ヒゲ付き塗装。これは四国で電子音警笛付きの車両に施されたもの。
(写真:予讃線 宇和島駅/撮影:裏辺金好)

 小牛田運輸区のキハ58−414とキハ28−2174は2008年に修学旅行色に変更されている、同年12月まで運用された。
(写真:東北本線 仙台駅/撮影:裏辺金好)
   キハ56系を大改造して誕生した、ジョイフルトレイン「アルファ・コンチネンタル・エクスプレス(通称・アルコン)」。その斬新なデザインは大きな反響を呼びましたが、老朽化で1995年に引退。幸いにも現在、北海道千歳市駒里の竹田牧場で先頭車が保存されている他、JR北海道の苗穂工場でも先頭車の一部が保存。写真は夏季に運転されたリゾートエクスプレス号。
(写真:函館本線 札幌駅=高架化前/撮影:KAIJI様 禁転載)

 JR北海道のキハ56系カーペット車。キハ56 551と552の2両が存在し、団体列車などで活躍していた。
(写真:函館本線 大沼駅付近/撮影:haru様)

 JR北海道の快速「ミッドナイト」(函館〜札幌)で活躍したキハ27。501、502は座席車で、551〜554はカーペット車だった。
(写真:函館本線 札幌駅/撮影:haru様)

 青森駅近くの青函連絡船「八甲田丸」の向かい側で休憩用車両として使用されていたキハ27形。オリジナルの塗装が施されている。2012年11月に解体された。
(撮影:裏辺金好)

 盛岡地区を走っていたキハ58系の塗装。一般形のキハ40系と同じ塗装。
(写真:花輪線 好摩駅/撮影:裏辺金好)

 盛岡地区のキハ58の中には、「赤鬼」と呼ばれる塗装も存在していた。写真の花輪線からは2007年3月に引退。
(写真:花輪線/撮影:デューク)

 主に宮城県、岩手県で活躍したジョイフルトレイン「グラシア」。
(写真:東北本線 仙台駅/撮影:与太郎)

 宮城県、岩手県を走るジョイフルトレイン「こがね」。ジョイフルトレイン「グラシア」を再改造したもの。2010年12月で引退。
(写真:東北本線 古川駅/撮影:裏辺金好)

 JR東日本・東北地区で活躍したジョイフルトレイン「アキ座」。
1984年に登場し、のちに「こまち」「おばこ」と改名され塗装も変更されたが、現在は引退している。
(写真:奥羽本線 関根〜大沢/撮影:daikiti)

 キハ58系ジョイフルトレイン「エーデルワイス」。1988年に土崎工場で3両を改造。運転台助士席側の窓を大型化し、客室仕切りも上半分を撤去して前面展望を高めたのが特徴で、2001年に引退した。なお、写真は初代塗装。
 (写真:東北本線 松島駅/撮影:reboot様 禁転載)

 主に宮城県、岩手県を走るジョイフルトレイン「Kenji」初代塗装。愛称は岩手県ゆかりの宮沢賢治にちなむ。
(写真:山田線 宮古駅/撮影:ちゃけ様

緑色+金帯へ塗装変更されたジョイフルトレイン「Kenji」。
(写真:東北本線 平泉駅/撮影:裏辺金好)

2013(平成25)年12月からは、青色+金帯へ塗装変更された「kenji」。
(写真:東北本線 盛岡駅/撮影:裏辺金好)

  急行「月山」「よねしろ」用として誕生したキハ58系(秋田車両センター所属)。室内アコモデーションの大幅な改善、側面方向幕の設置など大規模な改造が施された。現在は引退している。
(写真:奥羽本線 八郎潟〜鯉川/撮影:デューク)

 新潟地区のカーペット車両。のちに塗装変更もされたが、現在は消滅。
(写真:新潟駅/撮影:haru様 禁転載)

 キハ27形551&552の2両は、なんと北海道から遠く離れた奥飛騨ガーデンホテル焼岳にて保存され、オリジナルの塗装に塗られている。これはこれで、まるで現役のような雰囲気。
(撮影:国鉄車両好様)

 急行「かすが」、快速「みえ」などで運用されたJR東海のキハ58系。コーポレートカラーであるオレンジの帯を巻く明るい塗装だった。
(写真:参宮線 多気駅付近/撮影:haru様 禁転載)

富山県の氷見線・城端線用の旧塗装。前面の青いラインは、当初は装飾が細かかったが、末期には塗装工程簡略化に伴い、ただの帯に。
(写真撮影:Neo Nostalgia 禁転載)

 氷見線・城端線用の塗装で、2011年3月まで高山本線で活躍したキハ58系。
(写真:高山本線 千里〜越中八尾/撮影:裏辺金好)

 今は無き「ゆうトピア和倉」。1986(昭和61)年に登場し、485系特急形電車による特急「雷鳥」を、当時非電化だった七尾線に乗り入れさせるため、併結運転していた。1995年頃引退。(写真:東海道線 大阪駅/撮影:もこてん 禁転載)

 ゴールデンエクスプレス・アストル初代塗装。先輩格である「ゆうトピア和倉」とよく似た構造で(先頭部ライトなどが違う)、やはり時には「ゆうトピア和倉」代走として特急「雷鳥」と併結運転することもあった。のち、3両編成化されて、塗装変更の上で活躍した。
 (写真:東海道線 大阪駅/撮影:もこてん 禁転載)

 ゴールデンエクスプレスアストルの2代目塗装。従来のゴールドがオレンジ系に代わるなど、随分と印象が変わった。
2006年11月に引退し、解体されたため現存していない。
(写真:東海道本線 向日町駅/撮影:ちゃけ様 禁転載)

 JR西日本の七尾線(石川県)で主に急行「能登路」として走ったキハ58の塗装。一部は岡山・山陰地区でもこの塗装で運行された。
(写真:吉備線 足守〜備中高松/撮影:与太郎)

 福井県・京都府の小浜線用のキハ58系。現存せず。
(写真:小浜線 敦賀駅/撮影:与太郎)

 元・特急「エーデル鳥取」用の車両(現存せず)。写真は、「あまるべロマン」号として運転されたときの姿。
(写真:山陰本線 餘部駅/撮影:リン)

 元・特急「マリンタンゴディスカバリー」、「エーデル丹後」用のキハ65形。現在は引退している。
(写真:東海道本線 山科駅/撮影:デューク)

 元・特急「エーデル北近畿」用のキハ65形。一時は特急にまで出世しただけあって、大幅な改造を受けている。現在は引退。
(写真:急行だいせん 大阪駅/撮影:関西ライナー様 禁転載)

 急行「だいせん」や臨時列車で活躍したキハ65形。こちらは元の車両の顔をよく残している。なお、急行「だいせん」は2004年10月で廃止。
(写真:急行だいせん 大阪駅/撮影:関西ライナー様 禁転載)

 岡山県の津山線で使用された急行「砂丘」(→「つやま」)用塗装。キロハ28を組み込んでいるのが特徴だった。
同運用から撤退したあとも、1両が輸送力増強用に残っていたが、ミャンマーへ譲渡され消滅。
(写真:津山線 岡山駅/撮影:裏辺金好)

 主に芸備線の急行で使用された塗装で、緑色をベースに銀色の帯を巻く。後に下写真の塗装に変更。
(写真:山陰本線 米子駅/撮影:デューク)

芸備線の急行「みよし」などで活躍した塗装。
(写真:芸備線 三次駅/撮影:デューク)

昭和61年に登場したジョイフルトレイン「ふれあいSUN−IN」。山陰地方を中心に活躍し、3両編成で運転されていたが、2007年5月に2両が廃車となり、残った1両はほのぼのSUN-INの増結用となった(上写真)。現在は引退している。
 (写真:山陰本線 下北条駅/撮影:リン)

 山陰地方を中心に活躍したジョイフルトレイン「ほのぼのSUN−IN」。昭和62年に登場。和洋折衷の車内が特徴。なお、2両編成。
(写真:山陰本線 下関駅/撮影:リン)

 JR四国に所属するキハ58系はキハ40と同じJR四国コーポレートカラーである水色を配した塗装。2008年10月に引退した。
(写真:土讃線 高知駅/撮影:裏辺金好)

 JR四国のキハ58系ジョイフルトレイン「レインボー」。
JR四国発足初期から90年代前半までの短い期間、キハ58系ジョイフルトレイン「旅立ち」とイメージを揃えた専用塗装で活躍していた。
(写真:高松駅/撮影:haru様 禁転載)

 JR九州のキハ58系一般用は、キハ40、415系電車などと同じ塗装が採用。2008年12月に最後の2両が廃車された塗装消滅。
(写真:日南線 宮崎駅/撮影:裏辺金好)

 JR九州キハ58系の初代急行色。国鉄末期から、90年代前半まではよく見られた塗装で急行「火の山」「由布」「くまがわ」などで活躍。
(写真:筑豊本線 折尾駅付近/撮影:DML30様 禁転載)

 豊肥本線を走った急行「くまがわ」用の車両。九州新幹線開業に伴い特急に格上げされたことから運用がなくなり、消滅した。
(写真:熊本駅/撮影:裏辺金好)

 JR九州のキハ58系のうち、トロッコ列車「TORO-Q」として運用された車両は、非常に濃い緑色に、英語のレタリング。現在は存在しない。
(写真:久大本線 由布院駅/撮影:デューク)

 JR九州の「あそ1962」。あそBOYの後継車両として、2006年8月より運転開始。
2両編成で、自転車持ち込みスペースを確保している。なお、2010年12月に定期運用を離脱した。
(写真:豊肥本線 熊本駅/撮影:裏辺金好)

 タイ国鉄で活躍するキハ58系。JR西日本からの譲渡で、当初は国鉄急行色を少し明るくした感じだったが、
現在は前面を黄色、側面を灰色・青系統の色に塗って活躍。また、気動車から客車への改造が進められた後、休車に。
(写真:タイ国鉄線/撮影:ムスタファ

 JR西日本からミャンマー国鉄に売却されたキハ58系。塗装は大幅に変更され、前面種別幕が埋められるなどの改造が行われている。
(撮影:おやじまふぃあ 禁転載)

 国鉄末期に登場した北海道の「お座敷列車」の塗装。現存せず。
(写真:宗谷本線 南稚内駅/撮影:1980JNR.com 禁転載)

 東北支社のキハ58系のうち、一般運用に就くキハ58系は、キハ40系に準じた塗装に。白と濃淡2色の緑色のバランスのとれた綺麗な塗装だった。
(写真:仙山線 山形駅/撮影:デューク)

 新潟地区で活躍したキハ58系。キハ40系などと同じく、国鉄末期に115系に採用されたオリジナル塗装に塗られている。
(写真:米沢駅/撮影:新快速様 禁転載)

 電化前のJR西日本 七尾線などで活躍したキハ58系普通列車用の塗装。急行用と同じ配色ながら、デザインは異なる。
(写真:七尾線/撮影:haru様)

 JR西日本 七尾線(石川県)急行用塗装。現存せず。
(写真:旧七尾線 能登中島〜西岸/撮影:1980JNR.com 禁転載)

 リゾート立山などに使用されたキハ65。エーデルシリーズの増結用で、パノラマ車は存在しないが、運転台を半室構造とし、反対側は窓を拡大して視界を良好にした。
(写真:東海道本線 大阪駅/撮影:もこてん)

 ジョイフルトレイン「フェスタ」。前面の唇の中には電光掲示があり、メッセージを表示するほか、スピーカーから自分の名前をしゃべるという実にユニークな車両だった。
 引退後、タイ国鉄に譲渡される予定だったが実現せず解体された。
(写真撮影:雑学の博物館 禁転載)

 左はエーデル丹後用だが、右はシュプール・リゾートエーデル用の車両。
(写真:東海道本線 京都駅/撮影:刹那さん 禁転載)

 主に山陰本線西部で活躍したキハ58系。一般形のキハ40系広島支社色と同じ塗装をまとっていた。
(写真:山陰本線 下関駅/撮影:武蔵野通信局 禁転載)

 国鉄末期の1987(昭和62)年に誕生した、九州のジョイフルトレインBun-Bun(現在は引退)。客室は畳敷きの掘りごたつタイプ。なお、愛称は蜂の飛ぶ音に由来し、車体側面には蜂をデザインしたエンブレムが描かれていた。
(写真:鹿児島本線 博多駅/撮影:もこてん 禁転載)

JR九州のジョイフルトレイン「アクアエクスプレス」。当初は香椎線などを走っていたが、その後、急行「くまがわ」などに転用。ところが、なぜか「くまがわ」廃止より前に、引退してしまった。
(写真:鹿児島本線 博多駅/撮影:もこてん 禁転載)

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