クラス156「スーパー・スプリンター」 

British Rail Class 156 'Super Sprinter'


アベリオ・スコットレイル(ASR)のクラス156。
(撮影:アディングストン駅, Uddingston Station)

●基本データ

デビュー年 1987年
最高速度 120km/h
製造会社 イギリス国鉄鉄道工学部門ヨーク工場
(British Rail Engineering Limited, BREL York)
運行会社 アベリオ・スコットレイル(Abellio ScotRail, ASR
イースト・ミッドランズ・トレインズ(East Midlands Trains, EMT
アベリオ・グレーター・アングリア(Abellio Greater Anglia, AGA
アリーヴァ・レイル・ノース(Arriva Rail North, ARN
運行区間 こちらを参照
編成詳細

クラス156 2連x114本製造

156478編成は脱線事故により廃車、113本が現役


●長距離地方路線を担当するディーゼル車

 イギリス国鉄が導入した「スプリンター・ファミリー」の一員で、クラス150に次いで開発された。スプリンターは他にもクラス153、155、158と159が存在し、老朽化した第一世代気動車を置き換えた第二世代気動車である。スプリンターの中でもクラス155と共に「スーパー・スプリンター」とも呼ばれている。

導入背景、国鉄の新型気動車
 他のスプリンター気動車と同じように旧型気動車の置き換えのために発注され、1987〜1989年の間に2連x114編成がメトロ・キャメル社に製造された。全車動力制御車でカミンス製(Cummins)のディーゼルエンジンとフォイト製(Voith)の動力伝達機器を採用。長距離輸送を意識した作りになっていて、ドアは駅間の長い地方路線を想定して片側2ドアで一枚扉を車端に配置。車内も全車二等車で各編成にトイレが備わっている。最初に製造された100編成が英国鉄の地方路線部門に配備され、後に14編成がスコットランドのストラスクライド交通局(SPT, Strathclyde Partnership for Transport)に配備された。

 1990年代初頭にイギリス国鉄が採算が悪い路線での経費節減として、輸送量が過剰な2連のローカル列車を単両に改造する計画が持ち上がった。当初はクラス156がこの対象となり、改造後の車両はクラス152と呼ばれるはずだったが、改造工事は結局クラス155に施されクラス153が誕生した。英国鉄の民営化後は各地の運行会社に引き受けられ、未だに全国中で運用されているので、以下では地域別での経緯を記す。

民営化後の運用
スコットランド
アベリオ・スコットレイル(ASR)に48本が所属しており、クラス156を運行する会社の中では最大数を誇る。都市近郊列車や長距離ローカル線など様々な列車に運用され、中でも一番の長距離運用としてはグラスゴー〜マライグ間の5時間半が存在する。2004年から2015年まではファースト・スコットレイルがスコットランドの鉄道フランチャイズを担当し、クラス156は紺とピンクの塗装が施されていたが、2009年より順次スコットランド国旗塗装に変更されている。現在は全編成がファースト・スコットレイルの後継会社であるASRに引き継がれた。2014年12月に起きた大雨による洪水によりグラスゴー中央発カーライル行きの列車を担当していたファースト・スコットレイルのクラス156、156478編成が大破。2015年6月に修理のコストが見合わないと判断され、廃車となった。

イングランド東部
AGAが9編成保有していて、クラス153と共にイプスウィッチとノリッジを起点とする地方路線で運用される。

イングランド北部
民営化後はファースト・ノース・ウェスタン(First North Western)とアリーヴァ・トレインズ・ノーザン(Arriva Trains Northern)がクラス156を受け継ぎ、更に2004年からはノーザン・レイル(Northern Rail)の手に渡る。2016年4月からはアリーヴァ・レイル・ノース(ARN)が運行しており、合計で42本が所属している。これらはニューキャッスル、マンチェスターとリバプールの3つの車両基地に分散されているが、所属基地周辺の路線を担当するわけでもなく自由に運用に入っている。更にはARN以前の所属会社によって内装が異なる。2015年からはファースト・トランスペナイン・エクスプレス(First TransPennine Express)が車両不足を補うためにクラス156を3本サブリースしていたが、2016年4月に返却した。

イングランド中部
中部地方では主にノッティンガムを中心とする中距離列車として運行されていて、2011年からノーザン・レイルから転属してきた編成を含めてイースト・ミッドランズ・トレインズ(EMT)は15本保有している。2008年からEMTの青、オレンジと赤塗装に塗りなおされ、2010年からはリニューアル工事が行われた。これにより内装が一新され運転席も更新し、防犯カメラも設置された。

 ちなみに1989年の夏にクラス156の一編成が海を渡り、ヨーロッパを駆け巡った。オランダの鉄道開業150周年記念のために英国鉄が最新鋭の車両を送り込む事になり、156502編成がオランダのユトレヒトまで自走した。当時は英仏海峡トンネルは工事中だったため、フェリーでイギリスからフランスへ運送され、ベルギー経由でオランダに到着した。

(解説・撮影:秩父路号、2016年4月更新)

●ギャラリー


上記と同じくASRのクラス156だがヘッドライトが白熱灯のままでLED式に交換されていない。
(撮影:アディングストン駅, Uddingston Station)


ASRのクラス156のリニューアル前の車内。2+2のクロスシートとテーブル席があり、長距離運用向けとなっている。


旧ノーザン・レイル所属のクラス156。地方幹線では2編成を併結して運用される事も。
(撮影:モールデス・ロード駅、Mauldeth Road Station)


NTのクラス156の車内。

AGAのクラス156。
(撮影:ノリッジ駅, Norwich Station)

AGAのクラス156の車内。


クラス221と(右)並ぶEMTのクラス156(左)。
(撮影:ダービー駅、Derby Station)


旧ファースト・スコットレイルのクラス156。
(撮影:アディングストン駅、Uddingston Station)


EMTの前身である旧セントラル・トレインズ社塗装のクラス156。現在はAGAが運用している。
(撮影:ノリッジ駅, Norwich Station)

AGAのクラス156だが、塗装は旧one社のものがベースとなっている。
(撮影:ノリッジ駅, Norwich Station)

ノリッジ〜グレート・ヤーマス間のビターン線のPR塗装。AGAが保有、運用している。
(撮影:グレート・ヤーマス駅付近、Great Yarmouth Station)


旧ノーザン・レイル運用のアライヴァ・トレインズ・ノーザン塗装の編成。
(撮影:カーライル駅、Carlisle Station)

●参考文献・ウェブページ

・「Traction Recognition, Third Edition」 (Ian Allan Publishing) ISBN 978-0-7110-3792-2
Wikipedia: British Rail Class 156
scot-rail.co.uk : Class 156
Angel Trains: Class 156

↑ PAGE TOP