クラス172「ターボスター」 

British Rail Class 172 'Turbostar'


3連のロンドン・ミッドランド(LM)のクラス172/3。過去のターボスターとは異なった新規の前面デザインを採用している。
(撮影:キダーミンスター駅、Kidderminster Station)

●基本データ

デビュー年 2010年
製造会社 ボンバルディア・トランスポーテーション(Bombardier Transportation)
最高速度 160km/h
(172/0は120km/h)
運行会社 ロンドン・オーバーグラウンド(London Overground, LO)
チルターン鉄道(Chiltern Railways, CR)
ロンドン・ミッドランド(London Midland, LM)
運行区間 ゴスペル・オーク〜バーキング線(LO)
●ゴスペル・オーク(Gospel Oak)〜バーキング(Barking)

チルターン本線(CR)
●ロンドン・メリルボーン(London Marylebone)〜ビスタ―・ノース(Bicester North)
●ロンドン・メリルボーン〜ストラットフォード・アポン・エイヴォン(Stratford-upon-Avon)

スノー・ヒル線(LM)
●ウスター・シュラブ・ヒル(Worcester Shrub Hill)、ウスター・フォアゲート・ストリート(Worcester Foregate Street)〜バーミンガム・スノー・ヒル(Birmingham Snow Hill)
●バーミンガム・スノー・ヒル〜ストラットフォード・アポン・エイヴォン
●バーミンガム・スノー・ヒル〜レミングトン・スパ(Leamington Spa)
編成詳細

172/0 2連x8本
172/1 2連x4本
172/2 2連x12本
172/3 3連x15本


●小回りの利く近郊・中距離型気動車

 ボンバルディアの交通部門が開発した次世代気動車、通称「ターボスター」シリーズの最終形式。ターボスターは他に初代のクラス168の他、長距離輸送に特化したクラス170と171が存在する。クラス172は172/0から172/3までの4種類が存在し、それぞれ細かい差異がある。

導入背景と初期編成の動向
 ターボスター・シリーズの気動車の功績に便乗して各地の非電化路線の輸送力を増強するために新しい派生型がロンドン・オーバーグラウンド(LO)、チルターン鉄道(CR)とロンドン・ミッドランド(LM)の三社のために2008年に発注された。2010年に最初のLO向け編成が落成し、2連x8本のクラス172/0が製造されロンドン市内で完結する唯一の非電化路線であるゴスペル・オーク〜バーキング線に導入された。しかし試運転の結果に排気システムに異常がある疑いが浮上。当初は最高運用速度が65km/hに制限されたが、後に検査ミスだと発覚し制限が解除。同年12月には全ての編成が営業運転に入り、イギリス国鉄製のクラス150を置き換えた。新型車両と列車の増発が好評を博し、利用客も増え当初の計画ではクラス172/0を3連か4連の気動車で置き換える予定だったが2019年に同路線の電化が決定。この時にはクラス172は転用されるが現在どこへ転属するかは現在不明。

 次に導入されたのがCR向けのクラス172/1。これらは2連x4本製造され、172/0と同じくターボスター後期の前面デザインを採用。2011年6月から営業運転を開始し、クラス165を補佐する形でするようにロンドンを起点とする近郊・中距離列車を担当している。しかしロンドン地下鉄との共有線区で必要な打ち子式ATS用の機器がクラス172の軽量型台車に取り付けられないため、それらの線区では運用ができない。

新デザインを取り込んだ新造編成
 同系列で一番新しく製造されたのが2011年8月以来LMで運用されている172/2と172/3。元々2010年内には全編成が配備される予定だったが前述の排気システムの問題で製造が遅れた。先代とは異なるシャープなライトの形状とターボスター・シリーズとしては初の貫通扉が特徴的。172/2が2連x12本、172/3が3連x15本在籍していて、バーミンガム・スノー・ヒル駅を中心としたバーミンガム近郊の非電化路線で運用されている。

クラス172の仕様
 先代のターボスターと比べると都市間移動よりも通勤・近郊色が強く、軽量化する事により加減速性能を向上している。内装もクラス170と比較するとテーブル付の座席が無かったりと着席数を増やす仕様となっている。先代との相違点は他にもあり、流体式ではなく機械式の動力伝達方式を採用している等の点がある。クラス172/0は運用路線で160km/hの性能は不必要なためエンジンの負担を軽減すべく最高速度は120km/hに制限されている。

(解説・撮影:秩父路号、2016年3月更新)

●ギャラリー


2連のクラス172/2。ラッシュ時には併結して運行する。
(撮影:ドロイトウィッチ・スパ駅、Droitwich Spa Station)


クラス172/2、172/3共通の車内。LMのコーポレートカラーを意識したモケットを採用。


クラス220222で使用されているFLEXXエコ軽量台車を採用。軸受が台車の内側にあるのが特徴。
軸受を内側に置く分排気管を外側に設置せざるを得なくなり、他の気動車と比べて非常に目立つ。


LOが運用するクラス172/0。ロンドン市内で完結する唯一の非電化路線を走る。
(撮影:ゴスペル・オーク駅、Gospel Oak Station)


車内は2+2列配置のクロスシート。


CRのクラス172/1。
(撮影:ノーソルト・パーク駅、Northolt Park Station)

●参考文献・ウェブページ

・「Traction Recognition, Third Edition」 (Ian Allan Publishing) ISBN 978-0-7110-3792-2
・Today's Railways: Issue 168 (December 2015), "The Turbostar Family"
Angel Trains: Class 172/1 Chiltern Railways

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