クラス168「クラブマン」
British Rail Class 168 'Clubman'
クラス168初期モデルの168/0。クラス165や465に使用された「ネットワーカー(Networker)」デザインを流用したもので若干古めかしい印象がある。
(撮影:サドバリー・ヒル・ハロー駅、Sudbury Hill Harrow Station)
●基本データ
デビュー年 | 1998年 |
製造会社 | 旧アドトランツ(Adtranz)、現ボンバルディア・トランスポーテーション(Bombardier Transportation) |
最高速度 | 160km/h |
運行会社 | チルターン鉄道 (Chiltern Railways, CR) |
運行区間 | チルターン本線(Chiltern Main Line) ●ロンドン・マリルボーン (London Marylebone)〜バーミンガム・スノー・ヒル (Birmingham Snow Hill)〜キダーミンスター (Kidderminster) ●ロンドン・マリルボーン〜ビスタ―・ノース(Bicester North) ●ロンドン・マリルボーン〜ストラットフォード・アポン・エイヴォン (Stratford-upon-Avon) ●ロンドン・マリルボーン〜オックスフォード・パークウェイ(Oxford Parkway) |
編成詳細 |
168/0 4連x5本 |
●イギリス国鉄民営化後の初新型車両
導入背景:製造の第一波
クラス168は元々イギリス国鉄のロンドン近郊とイギリス南東を管理していたネットワーク・サウスイースト(Network SouthEast, NSE)がチルターン本線経由でロンドンとバーミンガムを結ぶ速達列車の増発が目的で発注した。しかし車両の製造途中で国鉄が民営化され、チルターン本線を走る列車はチルターン鉄道(CR)が運行する事になり、クラス168は同社が受領。不意にも民営化後初めて発注されたの新型車両である。現在は合計24編成がCRに在籍。
当初は3連x5編成が導入され、クラス168/0と分類。これら初期モデルは後に製造された編成とは異なり、まだ新型ターボスターシリーズの前面デザインが決まっていなかったことから、国鉄が製造したクラス165や465を含む「ネットワーカー」シリーズのデザインを流用。主にロンドン〜バーミンガム、またはストラットフォード・アポン・エイヴォンをチルターン本線経由で結ぶ速達列車に使用され、一日数回バーミンガム以遠のキダーミンスターまで走る運用が組まれた。
デザインの更新:製造の第二波
2000年にはチルターン本線の需要が増えてきたことから二次車が作られ、クラス168/1と呼ばれる4連x2編成と3連x6編成が導入され、更にクラス168/0に4両目が増結された。クラス168/1が製造される頃には新型前面デザインが採用され、一次車のクラス168/0と比べると随分スマートで近代的な車両となっている。クラス168/0を進化させたクラス168/1の前面デザインはアドトランツ(ボンバルディア)のターボスター・エレクトロスター両シリーズの標準となるもので、後に製造された気動車のクラス170、そして電車のクラス357等に受け継がれている。イギリス南部でよく見かけるクラス377やクラス375もこのデザインに貫通扉を付け加えたものとなっている。
2004年には更に6編成が発注され、クラス168/2と呼ばれる三次車が導入された。これらはクラス168/1とは前面が異なり、ヘッドライトとテールライトの統合、丸いおでこのライト、短いスカート等が挙げられる。
クラス170からの編入、輸送力の増強
ロンドン〜オックスフォード間の副幹線の新規開通する企画の一環でビスタ―・ビレッジ〜オックスフォード・パークウェイ間が2015年10月に先行開業を控えていたが、新しい支線に毎時二本の列車を運行するダイヤを組んだため編成不足を補う必要があった。CRは車両保有会社のポーターブルック(Porterbrook)と交渉しファースト・トランスペナイン・エクスプレス社(First Transpennine Express)が使用していたクラス170/1をリースする契約を成立。2015年5月頃にはクラス170/1(2連x5本)がCRに転属し、これらの編成は同社のクラス168と共通の運用ができるよう改造工事が施された後クラス168/3に改称。2016年7月にはファースト・トランスペナイン・エクスプレスに在籍する残りのクラス170/1(2連x4本)が転属予定。
クラス168の仕様
全編成は全車普通車で、内装はゆったりとした2+2列のクロスシート(半分はテーブル付)で長距離輸送に適している。床もカーペット張りで、デッキ付近には荷物置き場もあり、空調システムも完備されていて、同じような距離を走る中距離・近郊型車両と比べれば少しばかり豪華な内装である。導入当初はCRのコーポレートカラーである白と青を使用した塗装だったが、2013年9月より「チルターン・メインライン(Chiltern Mainline)」というブランドの元クラス168のリニューアルを開始。塗装は銀色と白を基調にしたものに更新され、カーペットや座席などを含む内装も一新。車イス用スペースや車イス対応トイレの増設も行われた。
(解説・撮影:秩父路号、2016年3月更新)
●ギャラリー
3連のクラス168/1。前面デザインが一新され、ターボスター・エレクトロスター両ファミリーの顔のベースとなっている。
(撮影:サドバリー・ヒル・ハロー駅、Sudbury Hill Harrow Station)
4連のクラス168/2。再びデザインを一新しており、統合された前照灯と尾灯、丸くなったおでこのライト、短くなったスカートなどの違いが挙げられる。
(撮影:プリンセズ・リズバラ駅、Princes Risborough Station)
元々クラス170として製造されクラス168に改造されたクラス168/3。スカートが短いので容易に判別できる。
(撮影:サドバリー・ヒル・ハロー駅、Sudbury Hill Harrow Station)
普通車の様子。2+2列配置でテーブル付の座席が多く、パソコンを多用するビジネス客の利便性を意識している。
車端部の座席はヘッドレスト周りのデザインが異なる。 |
車イス駐機用スペースと車イス対応トイレ。 |
旧塗装のクラス168/0。以下の写真も全て旧塗装の編成。
(撮影:サドバリー・ヒル・ハロー駅、Sudbury Hill Harrow Station)
クラス168/1(3連)。
(撮影:ノーソルト・パーク駅、Northolt Park Station)
2編成のみ在籍する4連のクラス168/1。
(撮影:サウス・ライスリップ駅、South Ruislip Station)
3連のクラス168/2。
(撮影:ノーソルト・パーク駅、Northolt Park Station)
4連のクラス168/2。
(撮影:サドバリー・ヒル・ハロー駅、Sudbury Hill Harrow Station)
リニューアル前の普通車の様子。チルターン鉄道のコーポレートカラーの青をベースにした内装だった。
車端部の座席の様子。
●参考文献・ウェブページ
・「Traction Recognition, Third Edition」 (Ian Allan Publishing) ISBN 978-0-7110-3792-2・Wikipedia: British Rail Class 168
・Today's Railways, Issue 172 (April 2016): TPE looks to the future with new franchise