クラス320
British Rail Class 320
旧ファースト・スコットレイルのフランチャイズ中に展開された新規スコットランド国旗塗装のクラス320/3。
(撮影:カーンタイン駅, Carntyne Station)
●基本データ
デビュー年 | 1990年 |
最高速度 | 145km/h |
製造会社 | イギリス国鉄鉄道工学部門ヨーク工場 (British Rail Engineering Limiter, BREL York) |
運行会社 | アベリオ・スコットレイル(Abellio ScotRail, ASR) |
運行区間 |
グラスゴー近郊路線(クラス318と共通) アーガイル線(Argyle Line) ●ダルムイア(Dalmuir)〜グラスゴー・セントラル地下ホーム(Glasgow Central Low Level)〜マザーウェル(Motherwell)〜カーステアーズ(Carstairs) ●ダルムイア〜グラスゴー・セントラル地下ホーム〜カンバーノールド(Cumbernauld) ●ダルムイア〜グラスゴー・セントラル地下ホーム〜ラーカル(Larkhall) ●グラスゴー・セントラル(Glasgow Central)〜ラナーク(Lanark) ノース・クライド線(North Clyde Line) ●バロック(Balloch)〜グラスゴー・クイーン・ストリート(Glasgow Queen Street)〜エアドリー(Airdrie) ●マルゴイ(Milngavie)〜グラスゴー・クイーン・ストリート〜エアドリー ●ヘレンズバラ・セントラル(Helensburgh Central)〜グラスゴー・クイーン・ストリート〜エアドリー |
編成詳細 |
クラス320/3 3連x22本 (クラス320として新造) |
●スコットランド向けに造られた派生型電車
1990年にスコットランド近郊路線向けに開発された交流対応電車で、マーク3客車の車体を元にデザインされた通称「マーク3ファミリー」の一員。マーク3ファミリーは鋼製の車体で他にもデザインの元となったクラス321電車やクラス150気動車が存在する。難航したクラス320のデビュー
スコットランドのグラスゴー周辺の老朽化したクラス303や311を置き換えるべく、22本がイギリス国鉄のヨーク工場で1990年に製造。クラス321をベースに設計され、導入路線の需要を考慮した結果3両編成として造られた。比較的短距離を走行する事を想定され、車内は全車普通車でトイレは備わっていなかった。高速走行性能は不必要と判断されクラス321には標準だ装備だった台車のヨーダンパは撤廃され最高速度は120km/hに抑えられていた。
1990年5月に初編成がスコットランドに届けられ、近々デビューするはずだったが同系列の登場によって展開される予定のワンマン運転に労働組合が反発。結局営業運転を開始したは同年8月からで、順次アーガイル線とノース・クライド線に導入。1992年5月にはアーガイル線にワンマン運転が導入されドア開閉用のホームのモニターが設置されたが、運転室の側面窓との位置が合わず、以来ノース・クライド線に運用が限定された。
民営化後の動向
1997年3月からはナショナル・エクスプレス社(National Express)が担当するスコットレイル(ScotRail)のフランチャイズに全編成が引き継がれた。登場時はストラスクライド交通局(Strathclyde Partnership for Transport, SPT)のオレンジと黒の塗装が施されていたクラス320だったが、1999年にマルーンとクリームの塗装に更新。2004年10月からスコットレイル・フランチャイズはファースト社に委託され、同時に運行会社もファースト・スコットレイル(First ScotRail)に変更し同系列も傘下に入った。
アーガイル線のワンマン運転用モニターの互換性の問題は2007年にモニターを取り換えることによって解結した。しかし同線は西海岸本線との線路共有区間があり、クラス320の運用復帰には営業最高速度を145km/hに上げる必要があった。2010年7月から一年間かけて全編成の台車にヨーダンパが新設され、翌年4月から145km/h運転が正式に認可された。更に2011年から2013年にかけて全編成にリニューアル工事が施され、内装の更新やトイレの設置、車体の修復などが行われた。塗装も現在スコットランドを走る列車に施されているスコットランド国旗のデザインに更新された。2015年4月からは運行会社がアベリオ・スコットレイル(ASR)になり、全編成が引き渡された。
クラス321改造車の追加
グラスゴー近郊路線の需要増加に対応するためにロンドン・ミッドランド(London Midland)からクラス321が7本ASRに転属することが可決された。2015年末からこれらの編成はドンカスターのワブテック社(Wabtec)で3両編成化の改造工事を受け、クラス320/4と定められた(既存の編成は320/3に改称)。一部編成はASRに転属する前にロンドン・オーバーグラウンド(London Overground)が一時期リースしていたが、2016年1月からスコットランドでの営業運転を開始。
クラス320の仕様
基本的な仕様としては20メートル級の車両3連を一編成としており、前述の通りクラス321を3連にまとめた車両。中間動力車にはパンタグラフが備わっており、1M2T構成(Tc-M-Tc)。クラス321/4の改造工事では中間付随車が外された。
(解説・撮影:秩父路号、2016年3月更新)
●ギャラリー
1999年から2013年まで使用されていた旧ストラスクライド交通局塗装のクラス320/3。運行会社はファースト・スコットレイル
(撮影:カークヒル駅, Kirkhill Station)
リニューアル前の車内。座席は2+3列と2+2列配置が混合。
(撮影:パーティック駅, Partick Station)
●参考文献・ウェブページ
・「Traction Recognition, Third Edition」 (Ian Allan Publishing) ISBN 978-0-7110-3792-2・Today's Railways: Issue 163 (July 2015)
・Scot-Rail.co.uk: Class 320