クラス317 

British Rail Class 317


マーク3ファミリーの初代形式のクラス317。写真はアベリオ・グレーター・アングリア(AGA)新塗装のクラス317/5。
(撮影:ケンブリッジ・ヒース駅、Cambridge Heath Station)

●基本データ

デビュー年 1981年
最高速度 160km/h
製造会社 イギリス国鉄鉄道工学部門ヨーク工場
(British Rail Engineering limited, BREL York)
運行会社 グレート・ノーザン (Great Northern, GN)
アベリオ・グレーター・アングリア(Abellio Greater Anglia, AGA
ロンドン・オーバーグラウンド(London Overground, LO
運行区間 東海岸本線近郊グレート・ノーザン線(Great Northern Suburban Lines, GN)
●ロンドン・キングズ・クロス(London King's Cross)〜ピーターバラ(Peterborough)
●ロンドン・キングズ・クロス〜ケンブリッジ(Cambridge)

ウェスト・アングリア本線(West Anglia Main Line, AGA)
●ロンドン・リバプール・ストリート(London Liverpool Street)〜ビショップス・ストートフォード(Bishop's Stortford)〜ケンブリッジ
●ストラットフォード(Stratford)〜ビショップス・ストートフォード
●ロンドン・リバプール・ストリート〜ハートフォード・イースト(Hertford East)

ウェスト・アングリア近郊路線(West Anglia Suburban Lines, LO)
●ロンドン・リバプール・ストリート〜チングフォード(Chingford)
●ロンドン・リバプール・ストリート〜チェザント(Cheshunt)
●ロンドン・リバプール・ストリート〜エンフィールド・タウン(Enfield Town)
編成詳細

317/1 12本
317/5 15本
317/6 24本
317/7 9本
317/8 12本

編成は全て4連
クラス317/5, 7, 8はクラス317/1として製造され、後に改名
クラス317/6はクラス317/2として製造され、後に改名


●大成功したマーク3客車を元に開発された通勤・近郊型電車

 1980年代初頭に開発された交流型電車で、マーク3客車の車体を元にデザインされた通称「マーク3ファミリー」の元祖。クラス313などののアルミ車体とは違い、マーク3ファミリーは鋼製の車体で他にも直流対応のクラス455電車やクラス150気動車が存在する。

導入背景と国鉄時代
 クラス317/1が1981年から一年間かけて4連x48本が製造され、当初はクラス127気動車を置き換えるべく新しく電化されたロンドン・セント・パンクラスとベドフォード間のミッドランド本線(Midland Mainline)に配備される予定だった。しかしワンマン運転の安全性に関して労働組合とイギリス国鉄の対立で実際に運用開始されたのは1983年半ばであった。1987年からはクラス319の導入で317/1は西海岸本線の近郊区間の運用にしばし移されたが、1989年にはクラス321の増備によってロンドン・キングズ・クロスを起点とする東海岸本線近郊のグレート・ノーザン線とロンドン・リバプール・ストリートから伸びるウェスト・アングリア本線に転属した。

 1985年からは前面デザインが変更されたクラス317/2が4連x24本製造された。これらは新造時よりグレート・ノーザン線とウェスト・アングリア本線に投入され、国鉄末期には全72編成が同一の路線に集結し、現在でもそれらの路線で活躍している。

民営化後の動き:ウェスト・アングリア本線所属編成
 1994年のイギリス国鉄民営化時にクラス317はウェスト・アングリア・グレート・ノーザン(West Anglia Great Northern)に引き渡され、1998年からクラス317/2のリニューアル工事が施された。座席はチャップマン製のものに、そしてパンタグラフも高速走行仕様のブレックネル・ウィリス製に交換され、同時にクラス317/6に改称された。2000年からはクラス322で運行されていたロンドンとスタンステッド空港を結ぶアクセス列車の「スタンステッド・エクスプレス(Stansted Express)」用にクラス317/1のうち9編成がレイルケア・ウルヴァートン(Railcare Wolverton)で改造され、317/7に改称。この際内装の一新や荷物置き場の新設の他、新しい前面デザインに更新されメタリック調のターコイズ色に塗られた。

 2004年からウェスト・アングリア本線はグレート・ノーザン線とは別フランチャイズに分離されナショナル・エクスプレス(National Express)が保有する「one」という運行会社が担当し、同時にウェスト・アングリア本線を担当していたクラス317も転属。同社の元では順次5色のレインボー塗装に更新されていった。2005年にはoneに所属し残存するクラス317/1のリニューアル工事がワブテック・ドンカスター(Wabtec Doncaster)で始まり、15編成が近郊・通勤列車仕様のまま更新され317/5に、12編成がスタンステッド・エクスプレス補完用に更新され317/8に改称。2008年には「one」がナショナル・エクスプレス・イースト・アングリア(National Express East Anglia)に名前を変更し、同時に未完了だった塗装更新を別のデザインに切り替えることになり中途半端な塗装の編成が多く登場することになった。

 2012年2月よりアングリア地方フランチャイズの運行会社がアベリオ・グレーター・アングリア(AGA)に変わり、同じくクラス317も転属。しかしクラス379の導入で運行車両に余剰が発生しリース料が見合わないクラス317/7は一時期運用を外されたが2015年からは復帰。同年5月にグレート・アングリア本線の近郊区間がロンドン交通局に移管すると共にロンドン・オーバーグランド(LO)へクラス317/7x8本と317/8x6本が転属。現在これらはクラス315と共にリバプール・ストリートとエンフィールドやチェザントを結ぶ近郊電車として使用されている。なおAGAには動力系統を交流機器に更新したクラス317/7の317722編成が一本のみ所属している。

民営化後の動き:グレート・ノーザン線所属編成
 一方グレート・ノーザン線所属のクラス317/1x12本は2006年にファースト・キャピタル・コネクト(First Capital Connect)に引き継がれた。同社標準の内装とネオン塗装に順次更新され、クラス365を補完する形でロンドンとピーターバラ、そしてケンブリッジ間の近郊列車を担当していた。2014年9月からは運行会社がグレート・ノーザン(GN)に移り変わり、317/1も転属したが運用に変更はない。

将来の動向
 GN所属編成はテムズリンクから余剰となって転属してくるクラス377/5に2016年中に置き換えられる予定で、その後の行き先は未定。2015年7月にはLO編成の置き換え用のボンバルディア製のクラス710が発注され、2018年から導入予定。AGAの編成はしばらくウェスト・アングリア本線運用に就く見込みだ。

クラス317の仕様
 基本的な仕様としては20メートル級の車両4連を一編成としており、架線式交流25kVに対応するためパンタグラフを搭載している中間車がある。動力構成は1M3T(Tc-M-T-Tc)の直流吊りかけ駆動で、ドア配置は車両中間寄りの2ドア。

 将来的には新しい駆動機器を備え付けられる予定で、リースされていない予備のクラス317/7(317722編成)で新型の三相誘導交流モーターと回生ブレーキがの試験走行が2014年より開始された。内装も近日再びリニューアルされる予定で、上記の通り現在はAGAが新内装の候補を各車両に施し、乗客の意見を調査している。

(解説・撮影:秩父路号、2016年4月更新)

●ギャラリー


クラス317には三種類の全面デザインが存在する。左側のデザインはクラス317/1から派生した形式に受け継がれ、右側の車両はクラス317/2(現在はクラス317/6)に使用されている。
(撮影:トッテナム・ヘール駅、Tottenham Hale Station)

旧ナショナル・エクスプレス・イースト・アングリア塗装のAGAのクラス317/8。クラス317/1からの派生型。
(撮影:トッテナム・ヘール駅、Tottenham Hale Station)


白ベース塗装のAGAのクラス317/6。 車両前面の黒い三角は編成のこちら側に車イス用のスペースがある事を示している。
(撮影:ベスナル・グリーン駅、Bethnal Green Station)


AGA所属編成の普通車。2+2列配置。


GN所属のクラス317/1。旧ファースト・キャピタル・コネクトの塗装にGNのロゴが貼られている。
(撮影:ウェラム・グリーン駅、Welham Green Station)


GN所属クラス317/1の一等席。肘掛け付きの2+2列配置。


GN
所属クラス317/1の普通席。2+3列と2+2列混合の配置。

●旧塗装


AGAに所属していたころ同社の塗装のクラス317/7。
(撮影:ロンドン・リバプール・ストリート駅、London Liverpool Street Station)


AGA所属時代の旧ナショナル・エクスプレス・イースト・アングリア塗装のクラス317/7。
(撮影:セブン・キングズ駅、Seven Kings Station)


ネオン塗装の旧ファースト・キャピタル・コネクトのクラス317/1。現在はGNによって運用されている。
(撮影:ブルックマンズ・パーク駅付近、Brookmans Park Station)


旧ナショナル・エクスプレス・イースト・アングリア塗装のAGA所属のクラス317/5。こちらもクラス317/1から派生した。
(撮影:ベスナル・グリーン駅、Bethnal Green Station)

元スタンステッド・エクスプレス用のクラス317/7。クラス317/1から派生したが全面デザインがアレンジされた。
(撮影:チェザント駅、Cheshunt Station)



クラス317/8は一時期クラス317/7と共にスタンステッド・エクスプレスとして運用されていた。
(撮影:ハーロー・タウン駅、Harlow Town Station)

スタンステッド・エクスプレス仕様のクラス317/8の車内。



AGA所属のクラス317/8だが旧ナショナル・エクスプレス・イースト・アングリア塗装の灰色の斜めストライプが残っている。
(撮影:ベスナル・グリーン駅、Bethnal Green Station)


AGA所属の旧one塗装ベースのクラス317/6。
(撮影:トッテナム・ヘール駅、Tottenhem Hale Station)


旧ウェスト・アングリア・グレート・ノーザンと旧ナショナル・エクスプレス・イースト・アングリア時代に使用された普通車の内装。

一等席は肘掛けが備わっており、2+2列配置。


パンタグラフ下の普通席は支柱があり天井が低く、2+3列配置。


旧one塗装ベースの旧ナショナル・エクスプレス・イースト・アングリア所属のクラス317/6。
(撮影:ベスナル・グリーン駅、Bethnal Green Station)


旧oneのクラス317/6。
(撮影:ハーロー・タウン駅、Harlow Town Station)


クラス317/5、317/8の車内。他の派生型と同じく2+3列の二等車と2+2列の一等席という構成。

デッキ付近には車イス用のスペースがある。


2+2列配置の一等席。




クラス317/6に昔施されていた旧ウェスト・アングリア・グレート・ノーザン塗装。
(撮影:トッテナム・ヘール駅、Tottenham Hale Station)


旧ウェスト・アングリア・グレート・ノーザン塗装の旧ファースト・キャピタル・コネクト所属のクラス317/1。
(撮影:ロンドン・キングズ・クロス駅、London King's Cross Station)

●参考文献・ウェブページ

・「Traction Recognition, Third Edition」 (Ian Allan Publishing) ISBN 978-0-7110-3792-2
Wikipedia: British Rail Class 317
Class 317 - Govia Thameslink Great Northern, Abellio Greater Anglia, LOROL
Network SouthEast.net: WAGN
flickr: Class 317 EMU Trains Group

↑ PAGE TOP