クラス321
British Rail Class 321
グレート・イースタン本線を快走するアベリオ・グレーター・アングリア(AGA)のクラス321/3。
(撮影:マナー・パーク駅, Manor Park Station)
●基本データ
デビュー年 | 1988年 |
最高速度 | 160km/h |
製造会社 | イギリス国鉄鉄道工学部門ヨーク工場 (British Railway Engineering Limited, BREL York) |
運行会社 | アベリオ・グレーター・アングリア(Abellio Greater Anglia, AGA) ノーザン・レイル (Northern Rail, NT) グレート・ノーザン(Great Northern, GN) |
運行区間 | グレート・イースタン本線(Great Eastern Main Line,
AGA) ●ロンドン・リバプール・ストリート(London Liverpool Street)〜イプスウィッチ(Ipswich) ●ロンドン・リバプール・ストリート〜イプスウィッチ〜ノリッジ(Norwich)(ラッシュ時のみ) ●ロンドン・リバプール・ストリート〜ブレイントリー(Braintree) ●ロンドン・リバプール・ストリート〜サウスエンド・ヴィクトリア(Southend Victoria) ●ロンドン・リバプール・ストリート〜ハリッジ・インターナショナル(Harwich International) ●ロンドン・リバプール・ストリート〜コルチェスター(Colchester)〜コルチェスター・タウン(Colchester Town) ●ロンドン・リバプール・ストリート〜コルチェスター〜クラクトン・オン・シー(Clacton-on-Sea) ●マニングツリー(Manningtree)〜ハリッジ・タウン(Harwich Town) ●ウィックフォード(Wickford)〜サウスミンスター(Southminster) リーズ近郊路線(West Yorkshire Metro Lines, NT)(クラス322、333と共通) ●リーズ(Leeds)〜ウェークフィールド・ウェストゲート(Wakefield Westgate)〜ドンカスター(Doncaster) ●リーズ(Leeds)〜イルクリー(Ilkley) ●ブラッドフォード・フォースター・スクエア(Bradford Forster Square)〜イルクリー ●リーズ〜ブラッドフォード・フォースター・スクエア ●リース〜スキプトン(Skipton) 東海岸本線(East Coast Main Line, GN)(ラッシュ時のみ) ●ロンドン・キングズ・クロス(London King's Cross)〜ピーターバラ(Peterborough) ●ロンドン・キングズ・クロス〜ケンブリッジ(Cambridge) |
編成詳細 |
製造 |
●釣りかけ駆動ながらも俊足な国鉄型電車
導入背景と国鉄時代の運用
1980年代後半に交流電化区間の車両置き換えのためイギリス国鉄が同社の車両製造部門に近郊・中距離型電車の製造を発注。1988から1990年の間にクラス321/3と呼ばれる4連x66本が造られ、当時の国鉄のイギリス南東部門、ネットワーク・サウスイースト(Network South East, NSE)が受領した。これらの編成はロンドン・リヴァプール・ストリート駅を起点とするグレート・イースタン本線の快速・近郊列車運用に導入され、老朽化していたクラス305、308や309を置き換えた。
後に同系列の追加発注が行われ、クラス321/4が1989年から4連x48本製造された。これらはNSEのロンドンとノーサンプトンやバーミンガムを西海岸本線経由で結ぶ快速列車に充てられた。この321/4の導入でクラス317がグレート・ノーザン線とウェスト・アングリア近郊路線に転属した。321/3と比べ、321/4は一等席の割合が多く、先頭車の3分の1から半分までに増やされた。後に11編成がグレート・イースタン本線系統へ転属し、321/3を補完する形で運用に入った。
クラス321/9は他の派生型と違い、イングランド北部のリーズ近郊のために西ヨークシャー交通局(West Yorkshire Passenger Transport Executive, WYPTE)が発注した4連x3本を指す。1991年に製造され主な特徴として一等席がなく、全車普通車となっている。クラス321の中でも一番通勤型の色が濃い。
民営化後初期の動向
民営化時にグレート・イースタン本線はファースト・グレート・イースタン(First Great Eastern)の管轄下となり、クラス321/3x66本、321/4x11本を引き継いだ。その後2004年には運行会社が「one」に変わり同社が2008年にナショナル・エクスプレス・イースト・アングリア(National Express East Anglia)に改名。2012年2月からは現在の運行会社であるアベリオ・グレーター・アングリア(AGA)がクラス321を運行しているが運用されている路線は変わらない。
クラス321/4は西海岸本線の近郊列車を担当するシルバーリンクが37編成を譲り受け、その後2007年にロンドン・ミッドランド(LM)が受け継いだ。しかし2009年には新型のクラス350/2を導入したため、17編成がグレート・イースタン本線系統(現AGA)へ、更に13編成ファースト・キャピタル・コネクトへ転属。ファースト・キャピタル・コネクトは当時東海岸本線の近郊・各駅停車を運行しており、現在は後継会社であるグレート・ノーザン(GN)がクラス321/4を運行している。
一方クラス321/9はアリーヴァ・トレインズ・ノーザン(Arriva Trains Northern)に移った後2004年12月に後継のノーザン・レイル(Northern Rail)に転属。2016年4月からはノーザン(NT)が運行しており、現在もリーズ近郊の電化区間でクラス333と共に運用されている。
クラス320改造と「レナートゥス」
LMに在留した7編成はラッシュ時の西海岸本線各駅停車とワトフォード・ジャンクションとセント・オルバンズ・アビー間のアビー支線で使用されていたが、2015年12月にはスコットランドのアベリオ・スコットレイル(Abellio ScotRail)に転属することが決定。これらはワブテック・ドンカスター(Wabtec Doncaster)で3両編成化されクラス320/4への改造工事を受けたが、工事が完了するまでの間一時期ロンドン・オーバーグラウンド(London Overground)が2編成サブリースしてロムフォードとアップミンスター間の支線で使用していたが2016年3月に返却された。
2013年12月にはAGAとクラス321の保有会社であるエヴァーショルト・レール(Eversholt Rail)が協力し、321448編成を改装し様々な内装をテストするデモ編成に改造。乗客からの反響をクラス321の大規模リニューアル工事の参考にした。エヴァーショルト・レールはこれを「プロジェクト・レナートゥス(Project Renatus)」と命名。2017年までにAGA所属のクラス321を30本をワブテック・ドンカスターでリニューアルし、動力機器を直流から交流モーターに交換することであと20年は現役でいられるように更新する予定だ。2020年までには全てのクラス321がリニューアルされる見込みである。
クラス321の仕様
全編成は4連となっていて、構造は1M3T(Tc-M-T-Tc)で動力中間車にパンタグラフが設置されている。吊り掛け式のブラッシュ社製直流モーターを搭載しているが上記の通り交流モーターに更新される予定だ。
(解説・撮影:秩父路号、2016年4月更新)
●ギャラリー
白ボディに赤ドアのAGA所属編成の正規塗装。
(撮影:マナー・パーク駅, Manor Park Station)
グレート・ノーザン(GN)でラッシュ時に運用されるクラス321/4。未だに旧ファースト・キャピタル・コネクトのラッピングがベースになっている。
(撮影:ウェラム・グリーン駅、Welham Green Station)
GN所属クラス321の普通席。3+2列のクロスシート。
GN所属編成の一等席。 |
他のマーク3客車ファミリーと同様パンタグラフ下は天井が低い。 |
●旧塗装
ロンドン・ミッドランドのクラス321/4。これらはクラス320へ改造され、スコットランドへ2016年中に転属した。
(撮影:サウス・ケントン駅, South Kenton Station)
ロンドン・ミッドランドから放出され、クラス320に改造される前に2編成がロンドン・オーバーグラウンドに半年ほどリースされていた。
(撮影:アップミンスター駅付近、Upminster Station)
元ロンドン・ミッドランド編成(クラス321/4)の普通席。国鉄時代のNSEモケットが未だに使用されていた。
元ロンドン・ミッドランド編成の一等席。 |
車イス用スペース。 |
旧ファースト・キャピタル・コネクトのクラス321/4。
(撮影:ブルックマンズ・パーク駅付近, Brookmans Park Station)
AGA所属編成だがナショナル・エクスプレス・イースト・アングリアとの中間塗装に留まっている(クラス321/3)。
(撮影:マナー・パーク駅, Manor Park Station)
旧ファースト・グレート・イースタンの内装のままのAGA所属クラス321の普通席。2+3列のクロスシート。
上記と同編成の一等席。肘掛け付きの2+2列クロスシート。
灰色の斜め線とロゴが消えた旧ナショナル・エクスプレス・イースト・アングリアのクラス321/3。
(撮影:プディング・ミル・レーン駅, Pudding Mill Lane Station)
旧ナショナル・エクスプレス・イースト・アングリアの白ベース塗装(クラス321/3)。
(撮影:ベスナル・グリーン駅, Bethnal Green Station)
旧ナショナル・エクスプレス・イースト・アングリアの正規塗装。
(撮影:プディング・ミル・レーン駅, Pudding Mill Lane Station)
旧ファースト・グレート・イースタン塗装のクラス321/3だがナショナル・エクスプレス・イースト・アングリアの帯が入っている。
(撮影:プディング・ミル・レーン駅, Pudding Mill Lane Station)
旧ファースト・グレート・イースタンのクラス321/3。
(撮影:プディング・ミル・レーン駅, Pudding Mill Lane Station)
旧シルバーリンクのクラス321/4。
(撮影:サウス・ケントン駅付近, South Kenton Station)
●参考文献・ウェブページ
・「Traction Recognition, Third Edition」 (Ian Allan Publishing) ISBN 978-0-7110-3792-2・RailUKforums: Wabtec Awarded Contract for £60M Class 321 Refurbishment Project
・Eversholt previews Anglia class 321 upgrade
・Eversholt Rail: Class 321 Electrical Multiple Unit
・Wikipedia: British Rail Class 321