クラス442
British Rail Class 442 'Wessex Electric' / 5WES
ガトウィック空港へのアクセス特急、ガトウィック・エクスプレスを担当するクラス442。頻繁に10連で運行する。
(撮影:クラッパム・ジャンクション駅, Clapham Junction Station)
●基本データ
デビュー年 | 1988年 |
最高速度 | 160km/h |
製造会社 | イギリス国鉄鉄道工学部門ダービー工場 (British Rail Engineering Limited, BREL Derby) |
運行会社 | サザン(Southern, SN) |
運行区間 | ガトウィック・エクスプレス ●ロンドン・ヴィクトリア(London Victoria)〜ガトウィック空港(Gatwick Express,) ブライトン本線(ラッシュ時のみ) ●ロンドン・ブリッジ(London Bridge)〜ブライトン(Brighton) ●ロンドン・ブリッジ〜イーストボーン(Eastbourne) |
編成詳細 |
クラス442 5連x24本 |
●世界最速の第三軌条電車
国鉄の新型急行・中距離型車両
サウス・ウェスト本線最西端区間のボーンマス(Bournemouth)〜ウェイマス(Weymouth)間の第三軌条電化に合わせて導入され、イギリス国鉄のロンドン近郊とイングランド南東の路線を管轄下に置いていたネットワーク・サウスイースト(Network SouthEast, NSE)によってロンドン・ウォータールー(London Waterloo)〜ウェイマス間の快速列車を担当していた。1990年代に入るとポーツマス・ダイレクト線(Portsmouth Direct Line)にも乗り入れるようにもなり、ロンドン・ウォータールー〜ポーツマス港(Portsmouth Harbour)間の列車も担当するようになった。
SWT時代、そして空港アクセス特急へ転生
イギリス国鉄が民営化後、1996年にクラス442の全24編成がサウス・ウェスト・トレインズ(South West Trains)に受け継がれたが、快速列車としての運用は特に変わらなかった。 1998年には改装工事を受け、塗装も従来のNSEのものからサウス・ウェスト・トレインズのエクスプレス塗装に更新された。2004年からは新しくクラス444が登場し、ポーツマス・ダイレクト線からは退き、再びロンドン〜ウェイマス間のみを活躍の場とした。2006年には再び小規模の改装工事を受けたものの、2007年2月には全編成が運用を外され、しばしの間イーストリー車両工房(Eastleigh Works)で保管された。
一方イギリス南部の路線網を担当するSNではガトウィック空港の専用アクセス特急であったガトウィック・エクスプレス(Gatwick Express)の運行区間をラッシュ時に一部ブライトンまで延伸する計画が持ち上る。この新ガトウィック・エクスプレス用にSNはクラス442を17本リースし、車内改装と塗装変更を終えた後2008年12月から導入した。残りの7本もSNがリースし、今では全編成がSNに所属している。クラス442の導入で玉突きで元々ガトウィック・エクスプレスを担当していたクラス460が置き換えられ、2012年にはクラス460の全編成がサウス・ウェスト・トレインズに転属した後クラス458/5に改造された。一般列車の運用にも入るので乗客の混乱を防ぐため現在は側面に「EXPRESS」のロゴだけが使用されている。2016年6月からは順次新造予定のクラス387/2に置き換えられる予定であり、その後の転属先は未定である。
クラス442の仕様
一編成5連で、構成は1M4TとMT比が非常に小さい(Tc-T-M-T-Tc)。吊り掛け駆動のモーターを使用しており、制御機器や電気系統も含めて1966年製のクラス432のものが再利用されている。車長は他のマーク3ファミリーの20メートル級とは異なり23メートル級となっていてドアも車端に位置し、長距離運用を意識している。内装もそれなりに整っており国鉄型ながらも空調完備、そしてデッキとの仕切りに自動ドアが設置。サウス・ウェスト・トレインズ時代にはビュッフェがあり軽食や飲み物が買えたが、改装後は撤去され、空港利用客用の荷物置き場や座席に変わっている。
ちなみにクラス442は第三軌条方式での世界速度記録保持車で、1988年4月11日に174km/hを記録した。
(解説・撮影:秩父路号、2016年3月更新)
●ギャラリー
ロンドン・ヴィクトリアとブライトンを結ぶ大幹線のブライトン本線を快走するクラス442。ガトウィック・エクスプレスだけでなく一般運用にも入る。
(撮影:サウス・クロイドン駅付近, South Croydon Station)
一等席の様子。2+1のボックスシート形式となっている。
二等席の様子。2+2のクロスシート形式。
車端には空港利用客用の荷物置き場が設置されてある。 |
車両の真ん中には簡易なパーテーションがある。 |
トイレも豪華なロンドン仕様に。
旧サウス・ウェスト・トレインズのクラス442。現在のサザン運用とは異なり併結時使用されるジャンパ部分にカバーがついている。
(撮影:ロンドン・ウォータールー駅、London Waterloo Station)
小規模改装を終えた旧サウス・ウェスト・トレインズの編成。目の不自由な乗客にもドアの位置が分かりやすいように色が修正してある。 (撮影:ウィンチェスター駅, Winchester Station) |
クラス444の導入まではサウス・ウェスト本線のフラッグシップ列車だった。 (撮影:ロンドン・ウォータールー駅、London Waterloo Station) |
自動連結器が備わっていないため、併結時は幌の隣のカバーを解放し、ジャンパケーブルをつなげる。 (撮影:ロンドン・ウォータールー駅、London Waterloo Station) |
旧サウス・ウェスト・トレインズのクラス442の普通席。座席に刺さっている札は予約表。 |
旧サウス・ウェスト・トレインズのクラス442の一等席。コンパートメント式となっていた。 |
現在は撤去されたビュッフェ。 |
●参考文献・ウェブページ
・「Traction Recognition, Third Edition」 (Ian Allan Publishing) ISBN 978-0-7110-3792-2・Southern E-Group: Class 442