クラス378「キャピタルスター」
British Rail Class 378 'Capitalstar'
交直両用対応のクラス378/2。5両編成に増強した際に記念ステッカーが貼られた。
(撮影:ゴスペル・オーク駅、Gospel Oak Station)
●基本データ
デビュー年 | 2009年 |
最高速度 | 120km/h |
製造会社 | ボンバルディア・トランスポテーション(Bombardier Transportation) |
運行会社 | ロンドン・オーバーグラウンド(London Overground, LO) |
運行区間 | ワトフォードDC線(クラス378/2) ●ロンドン・ユーストン(London Euston)〜ワトフォード・ジャンクション(Watford Junction) ウェスト・ロンドン線、ノース・ロンドン線(クラス378/2) ●ストラットフォード(Stratford)〜ウィルズデン・ジャンクション(Willesden Junction)〜リッチモンド(Richmond) ●ストラットフォード〜ウィルズデン・ジャンクション〜クラッパム・ジャンクション(Clapham Junction) イースト・ロンドン線、サウス・ロンドン線(クラス378/1) ●ハイベリー・アンド・イズリングトン(Highbury & Islington)〜ショーディッチ(Shoreditch)〜クラッパム・ジャンクション ●ハイベリー・アンド・イズリングトン〜ニュー・クロス(New Cross) ●ハイベリー・アンド・イズリングトン〜クリスタル・パレス(Crystal Palace) ●ハイベリー・アンド・イズリングトン〜ウェスト・クロイドン(West Croydon) |
編成詳細 |
クラス378/1 5連x20本 |
●ロンドン環状線に改革をもたらした新型電車
クラス378はボンバルディアの交通部門が製造している次世代電車、通称「エレクトロスター」シリーズの一員。エレクトロスターには初代のクラス357の他、ベースとなったクラス376など派生型が存在し、ここ数十年では最も多く製造された車両シリーズでもある。首都のロンドンで運用されている事から「キャピタルスター(Capitalstar)」という愛称が付けられている。寂れた路線の大改革
ロンドンの市街地を環状線で結ぶウェスト、ノースとサウス・ロンドン線はイギリス国鉄の管轄する路線網の中でも特異な路線群だった。都心のターミナル駅から放射状に伸びている幹線からはずれており、見込める乗客も少ないという偏見により国鉄時代からこれらの路線への投資は貧しかった。沿線の治安もお世辞にも良いとは言えず、投資不足とそれが原因の乗客離れの悪循環が1990年代まで続いた。しかし2007年を皮切りにこれらの路線群はロンドン交通局(Transport for London, 通称TfL)の子会社、ロンドン・オーバーグランド(LO)の管轄下に移り、イースト・ロンドン線の地下鉄路線からの転換・再開業を始めとするこれらの路線を改修するプロジェクトが立ち上がる。その一環として当時主流だったクラス313をクラス378で置き換える事が決定した。
クラス376を元に開発され、同じ通勤型として幅が広いスライド式のドアを採用。併結運転は想定していないので、先頭車には非常用の貫通扉のみ設置されている。しかし他のエレクトロスター、そして今までのイギリスで運行されている車両と異なる点は車内がオールロングシートだということ。地下鉄では頻繁に見られたが、イギリスの鉄道本線を走る車両では始めてとなった。
3両編成での導入
2009年に直流第三軌条750Vと架線式交流25kVの両電源対応のクラス378/0が3連x24本ボンバルディアのダービー工場で製造され、同年にのノース・ロンドン線とそれと直通するウェスト・ロンドン線に投入。リッチモンド、そしてクラッパム・ジャンクションからアクトン・セントラル駅間は直流だが同駅で切り替えを行い終点のストラットフォードまでは交流電化区間を走行する。同年には直流のみ対応のクラス378/1も4連x20本が製造され、元地下鉄路線を改修した直流電化のイースト・ロンドン線に導入。
新型車両は乗客に人気を博し、2010年末には輸送力増強のためにクラス378/2が4連x13本とクラス378/0を4連に延長するための中間車24両が発注された(増結後クラス378/0は378/2に改称)。
更なる編成の延長
新型車両の導入と路線の駅舎の大改装のおかげで利用客数は現在でも増加中。需要に応えるため全57編成に再び一両増結し、5連にする計画2013年2月に承認された。2014年11月から徐々に編成に組み込まれていき、2015年内には全編成が5連に伸ばされた。
将来的にはワトフォードDC線にボンバルディアから新規発注されたクラス710が2018年に導入されるため、同線に所属しているクラス378は環状線のほうに移り輸送力を増強する予定だ。
(解説・撮影:秩父路号、2016年4月更新)
●ギャラリー
第三軌条区間を走行するクラス378/2。
(撮影:クラッパム・ジャンクション駅、Clapham Junction Station)
クラス378/1は直流のみ対応で第三軌条区間のサウス・ロンドン線とイースト・ロンドン線を担当する。写真はまだ4両編成の時。
(撮影:アナリー駅、Anerley Station)
4両編成時代のクラス378/2。
(撮影:インペリアル・ワーフ駅、Imperial Wharf Station)
(撮影:ウェスト・ハムステッド駅、West Hampstead Station)
イギリスでは地下鉄車両を除く始めてのオールロングシート車両。
デッキ付近の車内。戸袋の部分には簡易腰掛けが設置してある。
中間車の様子。イギリスの鉄道車両では比較的珍しいスライド式ドアを採用している。
(撮影:インペリアル・ワーフ駅、Imperial Wharf Station)
5連に延伸された時に組み込まれた車のうちは5両は記念ラッピング仕様だった。
(撮影:クラッパム・ジャンクション駅、Clapham Junction Station)
5連に増強する際、最後の57両目に製造された車両を組み込んだ編成には「57th and Final 5 Car Train(最後の57本目の5両編成)」という特別ステッカーが貼られた。
(撮影:クラッパム・ジャンクション駅、Clapham Junction Station)
●参考文献・ウェブページ
・「Traction Recognition, Third Edition」 (Ian Allan Publishing) ISBN 978-0-7110-3792-2・Kent Rail: Class 378 Capitalstar
・Class 378 Augmentation to 5 Cars
・Wikipedia: British Rail Class 378