クラス375 
British Rail Class 375 'Electrostar'
紺と水色のツートンカラーのクラス375の新塗装。全編成が順次更新中で2017年には完了予定。写真はクラス375/6。
（撮影：クラッパム・ハイ・ストリート駅、Clapham High Street Station）
●基本データ
| デビュー年 | 2001年 |
| 最高速度 | 160km/h |
| 製造会社 | 旧アドトランツ（ADtranz） 現ボンバルディア・トランスポテーション（Bombardier Transportation） |
| 運行会社 | サウスイースタン（Southeastern, SE） |
| 運行区間 | 都市間快速運用 ●ロンドン・チャリング・クロス(London Charing Cross)、ロンドン・キャノン・ストリート(London Canon Street)〜タンブリッジ・ウェルズ(Tunbridge Wells)〜ヘイスティングズ(Hastings) ●ロンドン・チャリング・クロス、ロンドン・キャノン・ストリート〜カンタベリー・イースト(Canterbury East)〜ドーバー・プライオリー(Dover Priory) ●ロンドン・チャリング・クロス、ロンドン・キャノン・ストリート〜ラムズゲート(Ramsgate)〜カンタベリー・ウェスト(Canterbury West) ●ロンドン・ヴィクトリア(London Victoria)〜チャタム(Chatam)〜ラムズゲート〜ドーバー・プライオリー 近郊列車運用(クラス465/9と共通) ●ロンドン・チャリング・クロス、ロンドン・キャノン・ストリート〜タンブリッジ・ウェルズ ●ロンドン・ヴィクトリア〜メイドストーン・イースト(Maidstone East)〜アッシュフォード・インターナショナル(Ashford International) ●ロンドン・ヴィクトリア〜スワンリー(Swanley)〜ジリンガム(Gillingham) ●ロンドン・ヴィクトリア〜ファヴァーシャム(Faversham)〜カンタベリー・イースト(Canterbury East) メドウェイ・ヴァリー線(主にクラス375/3) ●ストルード(Strood)〜メイドストーン・ウェスト(Maidstone West)〜タンブリッジ(Tonbridge) |
| 編成詳細 |
375/3 3連x10本 |
●イギリス南東の広域を走るエレクトロスター
ボンバルディアの交通部門が製造している次世代電車、通称「エレクトロスター」シリーズの一員。エレクトロスターには初代のクラス357から始まり様々な派生型が存在し、ここ数十年では最も多く製造された車両シリーズでもある。イギリス南東地方の様々な列車の運用に入り、快速列車から近郊列車、そして通勤列車もこなす汎用性の高い車両。イギリス南東の近代化を支えた新車
1994年4月のイギリス国鉄民営化時にはイギリス南東とロンドン南東近郊ではクラス411などの旧型多扉式電車が数多く使用されていた。国鉄時代にクラス465や365などのネットワーカー車両が導入されたものの車齢40年を迎える旧型車の補完をするだけ置き換えまでは至らなかった。民営化後イギリス南東の路線網のフランチャイズを運行していたコネックス・サウス・イースタン(Connex South Eastern)は新型車両製造の契約を発表し、1997年7月にアドトランツにこれを授与。
始めにクラス375/6と呼ばれるが4連ｘ30本が製造され、これらは様々な派生型の中で唯一改造工事なしで第三軌条直流750Vと架線式交流25kVから集電できる構造となっていて、パンタグラフが設置されている。1998年9月には3連ｘ38本のクラス375/3が発注され、内訳は10編成がコネックス・サウス・イースタン、そして28編成が隣接するイギリス南部のフランチャイズを運行していたサウス・セントラル(South Central)に配属された。サウス・セントラルのクラス375/3は密着連結器からデルナー式の物に改変され、クラス377/3と改名された。2002年には更に追加発注されたクラス375/7が登場し、4連ｘ15本が導入された。
更に増え新規デザインを採用した派生型
しかしながら2003年5月に英運輸省がコネックス・サウス・イースタンの財務経営を問題視し、フランチャイズを剥奪。政府直属の「サウス・イースタン・トレインズ(South Eastern Trains)」がイギリス南東の路線を運行するようになり、同時にクラス375も全て転属。それからもクラス375の発注は続き、2003年にはクラス375/8が4連ｘ30本導入。既存の車両とは違なる箇所が幾つかあり、この派生型を境目に車両の前面デザインがヘッドライトとテールライトが一つにまとまったエレクトロスター・ターボスター中期のものになった。
最後に2004年に登場したのがクラス375/9（4連ｘ27本）で、これらの編成は今までの中距離向けの内装ではなく、通勤・近郊仕様となった。普通席の座席配置を2+2列から2+3列にする事で普通席の定員が一編成218人から250人へと増加した。2006年4月からは再び列車の運行が民営会社に託され、ゴヴィア社の傘下にあるサウスイースタン(SE)が担当することになった。現在クラス375の全編成を同社が運用している。
大規模リニューアル
2015年5月からクラス375の大幅なリニューアルが始まり、今までの塗装とは異なりクラス395と似た青を基調とした塗装に変更されている。車内ではカーペットやテーブル、吊り手の取り換え、そして座席の入念な掃除などが予定されている。クラス375/3から改装が始まり、375/6、7と順番に改装を受け、全編成のリニューアルは2017年度に完了予定。最初の50編成の改装はボンバルディアのダービー工場で行われるが、それ以降は同社のイルフォード工場に受け渡される。2016年4月現在の状況では375/3のリニューアルは全て終わり、375/6もほぼ全ての編成の改装が終了した。
クラス375の仕様
クラス375/3は2M1T構成(Mc-T-Mc)で他の4両編成の派生型は3M1T（Mc-T-M-Mc）。制御機器はIGBT-VVVFを搭載。コネックス・サウス・イースタンの発注したクラス375/3、6、7は密着型自動連結器が製造時に装備されており後にデルナー式に交換された。375/8と9は新造時からデルナー式連結器が装備されていた。イギリス南東部ではホーム長が短い駅が幾つかあるため、ラッシュ時に12連で運転する時などの対処法としてGPSを使った自動ドアカットシステムを搭載している。
（解説・撮影：秩父路号、2016年4月更新）
●ギャラリー
一等席は黄色い枠、車イス用スペースにはブドウ色の枠で示してある。
（撮影：スワンリー駅付近、Swanley Station）
サウスイースタン(SE)旧塗装のクラス375/7。リニューアル前は一等席は運転台後部に設置されていた。
（撮影：スワンリー駅付近、Swanley Station）
SE旧塗装のクラス375/8。この派生型からライト回りが統合されたエレクトロスター中期のデザインとなった。写真の塗装は灰色の帯がアクセントとなっている。
（撮影：クラッパム・ハイ・ストリート駅、Clapham High Street Station）
リニューアル前の一等席。2+2列配置。
リニューアル前の普通席。手すりなどがオレンジで統一されている。座席配置は2+2列でテーブル席が多い。
SE旧塗装のクラス375/9。
（撮影：スワンリー駅付近、Swanley Station）
近郊・通勤型仕様のクラス375/9の普通席。着席数を増やすため2+3列配置となっている。
クラス375/3。他の編成と併結しているため見えにくいが、3両編成である。
（撮影：ショートランズ駅付近、Shortlands Station）
旧サウス・イースタン・トレインズのクラス375/6。この塗装は元はコネックス・サウス・イースタンのものだったが、サウス・イースタン・トレインズに転属した時に受け継がれた。
（撮影：ドーバー・プライオリー〜フォークストン・セントラル駅間、Dover Priory - Folkstone Central Station）
 SE旧塗装のクラス375/6。旧サウス・イースタン・トレインズの車両と比べて灰色の帯がないのが特徴。 （撮影：ロンドン・ヴィクトリア駅、London Victoria Station） |
 クラス373（ユーロスター）と離合するクラス375/7。現在ユーロスターは専用の高速新線を走行するためこの光景はもう見れない。 （撮影：ブロムリー・サウス駅付近、Bromley South Station） |
試験的に展開されたSEの新塗装。結局これが採用される事はなく、数編成が塗り替えられるだけに留まった。写真はクラス375/6。
（撮影：タンブリッジ駅、Tonbridge Station）
旧サウス・イースタン・トレインズのクラス375/9。
（撮影：キャットフォード駅、Catford Station）
●参考文献・ウェブページ
・「Traction Recognition, Third Edition」 （Ian Allan Publishing） ISBN 978-0-7110-3792-2・Kent Rail: Class 375 Electrostar
・Southern E-Group: Class 375 "Electrostar"
・Wikipedia: British Rail Class 375
